最軽量馬が過酷な馬場を克服して力走、今後に繋がる雰囲気に!?
文/浅田知広、写真/川井博
先週、
エルムSの
速攻インプレでも少し触れたが、96年まで夏の北海道は札幌ではじまり、夏後半は函館開催という順で行われていた。8月以降の函館はどうしても雨が多く、年によっては道悪競馬のオンパレード。
函館3歳S(当時)は、毎年のように重・不良で行われていた時期もあった記憶がある。
函館の連続開催となった今年もそんな
不順な天候からは逃れられず、ただでさえ連続開催で使い込まれているところに、終盤は雨で道悪ばかり。
先々週、重馬場で行われた
札幌記念はラスト2ハロンが
13秒0-
14秒0もかかっていた。ただこれは、逃げ切った
トウケイヘイローがそういうペースを作ったから、という面も大きかったのだと実感したのが今週の開催。これまでの道悪などまだまだだったと痛感させられる、
消耗戦の連続である。
まるで
陸上の1万メートルでも見ているかのように、道中から脱落していく馬が続出。いや、まだ1万メートル競走は最後の1周を信じられないスピードで走り切る選手が見られるが、今週の函館は各馬ヘロヘロ、たすきをつないだ直後に倒れ込む
箱根駅伝のようである。
そして今年の
札幌2歳Sで、もうひとつ注目したいのは、09年や昨年に続いて夏の終わりに行われたことだ。08年以前や10、11年は9月末から10月初旬に行われており、ここからすぐ表開催の秋競馬にも繋がる印象があった。
しかし今年は夏の締めくくり。そんな時期、そして特殊な馬場状態から、今年のレースは将来性どうこうというよりは目の前のこの一戦、という印象が強かった。
実際、この日に行われていた他の中距離戦同様に厳しい競馬となり、3コーナー手前で脚が残っていた馬と、バテて後退してゆく馬にはっきりと色分けされた。
その
「脚が残っていた馬」の中で、特に勢い良く前へ進出していったのが、
マイネルフロストと
ピオネロだ。札幌4Rの芝2000m、そして札幌8Rの芝1800mともに、ほぼ3コーナーの通過順通りに決着しており、このレースも前を行く
マイネグレヴィルも含め、
3頭の勝負になるのではないかと思われた。
ところが。雨が降り続き、札幌8R終了後に不良まで悪化した馬場は、さらに
過酷な状態に。本来の「勝負どころ」での勢いすらアテにならなくなっていた。
3~4コーナー中間では
マイネルフロストと
ピオネロも、前の
マイネグレヴィルに並びかけるところまではいったが、そこから逆に手応えが怪しくなってずるずる後退。結局④着に敗れた
ピオネロは上がり
43秒9、そして1番人気で⑤着の
マイネルフロストに至っては
45秒0である。
こうなると
「行ったもの勝ち」で
マイネグレヴィルが勝利を手にするかと思いきや、その後ろからバテた2頭の間を割って伸びてきたのが
レッドリヴェールだった。
向正面では
マイネルフロストと
ピオネロを前に見つつ、この2頭からワンテンポ遅れての追撃開始。この馬場で「展開がはまった」とは言い難いものの、結果としては
マイネグレヴィルの逃げ切りを許さず、そして自身も完全に止まるには至らないという、
完璧なタイミングでの仕掛けになった。
そして
レッドリヴェール自身、出走馬中最軽量の
426キロと、パワーを要する馬場に
不安もあった中で、そんな手綱さばきに見事に応える
力強い走りでの2連勝だ。
レッドリヴェールの
デビュー戦は、阪神芝1600mで上がり
33秒3の差し切り勝ち。血統面などはさておき、そのレースだけを見ればこの馬場での力走は想像し難いものだった。
しかし、すでに切れる脚を見せているこの馬が勝利を収めたことで、
「この馬場では後々には繋がらないかも」という一戦が、一転して
「やっぱり繋がるのかも?」という雰囲気にもなってきた。
前週の
新潟2歳Sを上がり
32秒5で制した
ハープスターと、ここを上がり
41秒3で制した
レッドリヴェールは、果たしてどこで激突するのか。
過酷な競馬の後のケアなど難しい部分もあるだろうが、ぜひとも
万全の態勢で
暮れの大一番を迎えてほしい。また、その舞台まで少々間隔のある「一昨年までよりひと月早い」
札幌2歳Sが、この馬の今後にはプラスに働く可能性もありそうだ。