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“手前を替える”ことは、思っている以上に大事なんです
2013.9.12
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中谷雄太騎手…以下[中]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]雄太とこういう話になると、まずは歩様、体の使い方、背、腰の感触という話になってくるんだけど、精神状態についてはそこまで深くは話をしていないんだよ。こちらが話を出さないということもあるんだけどね。

[中]基本的にトレセンでテンションが上がってしまう、いわゆるテンパってしまっている馬では、競馬場で良いパフォーマンスを演じることはできないと思いますよ。

[西]そりゃ、競馬場の方が強い負荷、刺激があるわけだから、ハードルが高いということになるよね。

[中]テンションということで言うと、気性的にうるさくて飛んだり跳ねたりするタイプは別に良いんですよ。そうではなく、精神的に苦しくて、一杯一杯になってしまっている馬というのがいます。

[西]言いたいことはわかる。そこは違うからね。

[中]問題は精神的に苦しくて、一杯一杯になってしまっている馬ですよ。苦しさしかないわけだから、さあ競馬、という気持ちになんかなれませんよ。

[西]人間でも同じだよね。

[中]そこでもう苦しいわけだから、状況によっては馬場に出る必要もないし、運動だけという日があっても良いし、馬に合わせた臨機応変さというのがあって良いはずなんです。必ずしも馬場で乗る必要もないし、逆に馬場へ行けば落ち着く馬もいます。それぞれに合わせて調整しても良いと思うんですよ。

[西]言いたいことはわかる。

[中]坂路を主体にしている厩舎だったら、坂路の方に向かった途端に止まったり、後ずさりしたりする馬がいます。

[西]坂路の入り口とかもね。

[中]そうだなぁ。あ、北のセンター通り沿いの厩舎で言えば、厩舎回りは左回り通行が決められているよね。そこから坂路へ向かうときはセンター道路を横断しなければならず、そこで後ずさりするわけですけど、そういう馬はそこのコーナー(下写真)で入れこむものなんですよ。


[西]はい、はい。厩舎の周りで運動していて、そのコーナーのところで入れこむということですよね。ウチの場合は、隣の厩舎のところの馬道なんだけど、坂路に向かうときに真っ直ぐ進むコーナーのところでみせる。

[中]それぞれ場所は違っているけど、やる馬はやるよね。まずはそこで落ち着かせるというか、調教は苦しいものではないと理解させるようにしなければならないし、そこからやっていかないと駄目だと思うんですよ。何も自分の厩舎周辺だけで運動する必要もないし、落ち着いて運動できる、しっかりと体を使って歩けるように、場所を変えながらやるべきだと思うわけですよ。

[西]わかる。

[中]細かいと言われるかもしれないけど、そういう部分のリアクションがどうしても少なくなってしまうんだよ。そういうところで反応できている人ってそれほど多くないと思う。

[西]例えば、厩舎のハナ前でも良いと思う。

[中]しっかりと体を使って歩かせられるのならば良いとは思う。ただ、あのスペースでなかなかそれは難しいよ。そもそも、厩舎の周囲、引く人間は左に立つんですけど、右回りに歩かせたり、右で引くこともやった方が良いと思うんです。厩舎回りはルールで決められているけど、馬がいないところで右回りを歩かせたり、右に立って引いたりということをしても良いというか、するべきだと思うんですよ。それがバランスなんです。

[西]聞いている人のなかに、何を言っているんだと思われる方々もいらっしゃると思いますが、回すという行為がすべての面において矯正につながるというところがあるんですよ。

[中]そうですね。人間は回るということではありませんが、ゴルフでも右でスイングしたら、同じだけ左でもスイングをした方が良いとされています。

[西]左手前の馬が多いように思う。実際、坂路だと順手前は左手前になるという影響もあるのかと思ったりする。

[中]ただ、ウッドチップ、あとAコースとかDコースも平日は右手前だったりするから、右手前が多いように思う。右手前で左手前に変えない馬が多いように思いながら乗っています。尾関厩舎は坂路主体だからということもあるんじゃないのかな。

[西]あっ、なるほどね。

[中]厩舎の特徴というのはあるよね。

[西]尾関厩舎で働くようになって、そういうことを知った(笑)。

[中]角馬場で片方の回りだけ6、7周ダクやハッキングをするならば、右手前、左手前でそれぞれ3、4周ずつができる環境があるべきだと思うんですよ。結局はバランスだったりするわけですよね。

[西]バランスね。大事ですよ。

[中]あと、手前(※走る時にどちらの脚を先に出すか。たとえば、右手前なら右前肢が先に出る)を変えない馬はやはり走れない。

[西]なるほどね。

[中]1周すべてどちらかの手前で走ってくる馬というのがいます。1200mとかだったら、中には力があって、そのまま押し切ってしまう馬もいますが、1800mとかはまず勝てないですよ。

[西]聞きたいんですけど、中山の1200mでゲートから右手前で入っていって、直線最後は左手前に変えてゴールイン、という理屈があったりする。騎手は、ゲートでみんな右手前で出すように狙っていくわけですか?

[中]意識的に出したいなぁと思うケースはありますよ。中山の1200mだったら左手前が出た方が良い。

[西]えっ、なぜ?

[中]左手前でいくと、3コーナーで右手前に変わるわけですよ。3コーナーは絶対に左手前のままで回れないですから、右に変わる。そして直線でまた左手前に変えればもう1回伸びるわけですよ。

[西]コーナーまでは左手前で入っていき、コーナーで右手前、直線で左手前の方が良いのか。

[中]オープン馬で向正面まで行って手前を変えない馬はまずいません。ほとんどオートマティックに手前を変える。

[西]1200mのダート戦で右手前でゲートを出てしまった時はどうなの?

[中]そんなことは気にしない。もう出てしまったら、その馬のリズムがそれというわけだから、それを崩さないように乗る。

[西]ゲートを出る瞬間に手前の操作はできるものなの?

[中]基本的には右を向いたなら左手前が出やすくなりますよね。そういう程度の意識です。というのは、それでも出さない馬は出さないからですよ。どうしても得意な方が先に出てしまいますからね。

[西]向正面で手前を変えるかぁ。

[中]普通は変えるよ。でも、たまに変えないで走る馬がいるわけですよ。そういう馬はたいがいモタれますけどね。

[西]手前を変えられなくて苦しいからモタれるということだよね。

[中]そう。余力がなくなると、手前を変えることができないんですよ。手前を変えるときにも踏ん張らなければなりません。例えば、左手前で走っているところから、まずは右トモで踏ん張って、そこから大きく飛んでから右手前に変えるわけですよ。そこで跳ぶ力が残っていないと手前が変えられません。強引に変えるときにはバランスを崩さなければならないですしね。

[西]そうなるとロスになるよね。

[中]変えるけど、ちょっとやそっとじゃ変わらないものなんですよ。

[西]手前を変えるということについては、当然調教で練習するよね。

[中]もちろんです。そういうところが出来ていることが、乗りやすさとなるわけですよね。

[西]だから雄太さんが乗っている馬は乗りやすいと言われるのでしょう。角馬場では念入りにですか。

[中]速いところではなく、もう普通キャンターからこちらがバランスを少し変えただけで手前を変えるように調教しています。右の手綱を軽く引いただけで、左が出るように調教してあります。

[西]勉強になりますよ。教えたことを馬は覚えているでしょう。

[中]そう思いますよ。

[西]そこには馬の素質というか資質という部分もありますからね。

(来週に続く)

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