開花した京都適性が、無欲の差し切り勝ちを生んだ!?
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
毎年少頭数となる傾向が強い
京都大賞典だが、今年は
13頭立てと、このレースとしてはそこそこの頭数が揃った。それもあってか、今年の
勝ちタイムは2分22秒9と、京都芝2400mで開催された
京都大賞典としては、
メジロマックイーンが93年に記録した
2分22秒7以来となる2分22秒台の
高速決着となった。
ヴィルシーナが逃げ、
ニューダイナスティ、
トレイルブレイザーが2、3番手で追走する形で、レースの
前半1000m通過が61秒4。最近の
京都大賞典は少頭数でもペースが流れる年が多かったが、今年はスローといえるペースでレースが進んだ。
勝った
ヒットザターゲットは道中で最内を進み、4コーナーで外から仕掛ける他馬を横目にジッとして、直線で前を行く
ゴールドシップと
トーセンラーの競り合いを捌いて外に持ち出し、一気の伸びで差し切った。
ちなみに、この日の京都芝は5レース開催されたが、勝ち馬の3コーナーと4コーナーの位置取りは以下のようなものだった。
1R(芝1600m)[7][7]
3R(芝1400m)[5][5]
5R(芝1800m)[4][4]
9R(芝1400m)[7][7]
11R(芝2400m)[9][8]
開幕週にもかかわらず、見事なまでに
差しが決まっている。余談になるが、この傾向は来週以降も続くのか、
要注目といえそうだ。
この
京都大賞典でも、前にいた馬が軒並み失速気味になったのに対し、
ヒットザターゲットは道中の位置取りが[6][6][9][8]だから、
3コーナーでワンテンポ仕掛けを遅らせたのが勝因のひとつといえるだろう。
北村友騎手の好騎乗が光る内容だった。
また、前述の
メジロマックイーンの年は
メジロパーマーが逃げたこともあり、
前半1000m通過が58秒2で、今年と比べると
3秒2速かった。馬場の違いはあるにせよ、
今年のタイムの価値もかなり高いと言っていいだろう。
ちなみに、
ヒットザターゲットは京都芝の重賞は今回が初出走だったわけだが、母父
タマモクロスは京都芝の重賞が2戦2勝、父
キングカメハメハは京都芝の重賞は不出走だったが、京都芝は1戦1勝という成績を残している。血統的にも、
秘められていた京都適性が開眼したのかもしれない?
今回の
ヒットザターゲットは人気薄だったので、
「展開がハマった」という見方もできるかもしれないが、時計的には
十分ハイレベルなレースだった。今後の
ヒットザターゲットも、(特に京都では)注意すべき存在といえるだろう。
一方で単勝1.2倍、圧倒的1番人気に推された
ゴールドシップは
“いつものように”出負け気味のスタートを切り、スタート直後に
内田騎手の手綱が激しく動くのも前走の
宝塚記念と同じだった。
ゴールドシップが1コーナー手前で好位の外に取りついたときは
「あれだけ仕掛けられたのに折り合いをつけるのはさすがだなあ、このままゴールドシップが勝つだろうし、どんな内容の原稿にしようか」とさえ思っていたほど。
しかし、坂を下るあたりで再び
内田騎手の手綱が激しく動いたときは、
「同じ京都の外回りでも、菊花賞のときは坂下から持ったままで上がっていったのに、これは⑤着に負けた今年の天皇賞と同じじゃないか」となり、その手応えのまま
ゴールドシップは直線でも伸び切れなかった。
レース後、
内田騎手は
「外枠から最初に脚を使った分、馬の負担になって最後の伸びを欠いたかもしれない」と、
トーセンラー(2番人気③着)騎乗の
幸騎手も、
「3~4コーナーでゴールドシップを追いかけた分、最後に甘くなったのかも」という趣旨のコメントをそれぞれ残した。
それに対し、
北村友騎手のコメントは
「勝てると思っていなかった」という内容のものだった。
ゴールドシップも
トーセンラーも、条件や相手が変われば次回以降の巻き返しは必至だろう。しかし今回については、人気を背負っている分、前で勝ちに行かなければいけない馬を、無欲で乗った人気薄の馬が差し切った。これぞ
競馬の面白さ&難しさ、という内容のレースだったといえるのではないだろうか。