一発目で「中山のセオリー」をさせた鞍上とそれに応えた馬
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
1000m通過が
61秒1で、雨中での稍重馬場であっても、
トウケイヘイローのこれまでを考えれば、
流れは遅かったと言えるだろう。しかし、自分のペースを築くまでに脚を使わされ、その影響を最後の直線で露呈しまった。
トウケイヘイロー&
武豊騎手にとっては、
悪夢のスタートになってしまった。
全馬がゲートに入り、準備が調うと、ゲート上部に付けられた
赤ランプが点灯する。ゲートは、そのランプが点灯した後に開かれるわけだが、今回の
トウケイヘイローはこのランプが点灯すると同時に
前扉に突進してしまった。当然、扉は開かず、反動で後ろに戻ったところで、ゲートが開いた。前にしろ後ろにしろ、あと数秒でもゲートの開くタイミングがズレていたら、ここまで出遅れることはなかっただろう。
ただ、タラレバを言っても仕方がない。
トウケイヘイローの2014年初戦は、思わぬ形で掲示板外に敗れる結果となった。
一方、
トウケイヘイローに続く支持を集めた
ジャスタウェイと
ロゴタイプの2014年初戦は悪くないものとなった。特に
ジャスタウェイは前走の
天皇賞・秋(4馬身差)に続いて後続を突き放すレースを見せ(3馬身半差)、昨夏までの惜敗続きが嘘のような充実ぶりを示した。
ジャスタウェイは過去の3勝を
福永騎手とのコンビで挙げていたが、同騎手は先週の騎乗停止処分のため、乗り替わりとなった。鞍上はテン乗りの
横山典騎手となり、
横山典騎手ならこれまでの
ジャスタウェイとは、また違った面を引き出すだろう、と予想する人もいたが、私は、
一発目で本当にそんなことができるのか?と疑問に思っていた。
確かに
横山典騎手は、それまで追い込み一辺倒だった馬を先行させたりして、
変幻自在なレースを見せることが多々ある。最近では
デスペラードが良い例だが、同馬に関しても中団に付けて快勝したのは
騎乗2戦目の
ステイヤーズSで、逃げ切り勝ちを収めた先日の
京都記念では、レース後に
「4回目の騎乗で上手くコンタクトが取れた」とコメントしていた。やはり何度か騎乗をしないと、脚質をガラリと変えることなんて不可能なのではないか、と思っていたのだ。
ところが、どうだ。今回の
ジャスタウェイはスタートすると
横山典騎手がいくらか押して促し、
好位のインを取りに行った。そのまま距離ロスなく立ち回り、直線でも内ラチ沿いを伸びて快勝した。なんだか、
フジキセキ産駒のようなレースぶりだった(
ジャスタウェイは
ハーツクライ産駒)。
レース後、
横山典騎手は
「中山のセオリー通り」と話したが、そのセオリーに合うようなレースをほとんどしてこなかった馬にそれをさせてしまうのだから、恐れ入った。
横山典騎手の
好騎乗と言えるのだろうし、それにきちんと応えた
ジャスタウェイも立派だった。
昨年の
皐月賞馬・
ロゴタイプは、
ジャスタウェイに突き放され、最後に
アルキメデスに交わされて③着に敗れたが、半年ぶりで12kg増(500kg)だったことを考えれば、内容は悪くなかっただろう。
皐月賞(1分58秒0)と
ベゴニア賞(1分33秒6)で2度の
レコード勝ちを記録している馬で、近2走(
札幌記念⑤着、
中山記念③着)は
道悪馬場でもあるから、これで適性もはっきりしてきた印象だ。このまま順調にいけば、今後
は「皐月賞はいちばん速い馬が勝つ」という言葉を体現する活躍をするのではないか。
京都記念の
ジェンティルドンナや
フェブラリーSの
ホッコータルマエ&
ベルシャザールと、ドバイ遠征を控える馬がことごとく敗れて不穏な雰囲気になっていたが、今回の
ジャスタウェイはそれを振り払う快勝を見せた。
トウケイヘイローも今回の敗因ははっきりしているから、悲観をする必要はないはずだ。
トウケイヘイローは
香港Cで僅差の②着となっていて、世界の舞台でも好戦できることは実証済みだ。
ジャスタウェイは初の海外遠征となるが、
国内のG1を圧勝できる実力馬は
海外G1でも通用する、というモノサシがあるから、今の充実ぶりならクリアできていいだろう。無事にゲートインをして、自分のレースができれば、結果もついてくるのではないだろうか。