ハイペースで逃げ切ったスピードは、1200mでも通用するはず
文/編集部(T)、写真/森鷹史
1番人気に推されたのは
ダノンシャーク、2番人気は
コパノリチャード、3番人気は
ガルボで、いずれも
過去にマイル重賞を制した馬。このレースの①着馬は
高松宮記念への優先出走権が与えられることから分かるように、
スプリント路線も睨んだ番組編成となっているが、今回は長めの距離で実績を残した馬が人気を集めることになった。
そんな中、芝1200mへの出走経験がない
コパノリチャードが素晴らしいダッシュを決め、ハナに立つ形となった。
目を見張ったのは前半600mの通過タイム。参考タイムで
前半600mは33秒7と表示された。実際のところ
前半600mの通過は33秒8だったわけだが、いずれにしてもこれは速い。
そして、阪神が改装された06年12月以降、阪神芝1400mの1000万以上で前半600mが33秒8より速かったのは10レースあるが、その10レースで
4角先頭の馬は[0.0.0.10]。ただ1頭も馬券圏内に入っていなかった。
改装前と同じ内回りの芝1400mでの開催ではあったが、近年の傾向としてはこのコースにおいてハイペースで逃げた馬は、
ただ1頭の例外もなく直線で失速していたことになる。
それが、
コパノリチャードは4角で差を詰めてきた
ガルボ、
ダノンシャークの追撃を尻目に、直線に入って再加速。あれよあれよという間に後続との差を拡げ、
4馬身差をつけて圧勝を飾った。
最後の1ハロンは12秒8とかかったが、雨模様で湿り気味だった馬場(稍重から良に替わったのは12時前)を考えれば、
勝ち時計の1分20秒7は出色だ。今回の阪急杯は、
コパノリチャードの強さが際立った一戦だったと思う。
ところで、昨年の
阪急杯は、すでにスプリント王としての揺るぎない地位を確立していた
ロードカナロアが、その時点で勝ち鞍がなかった芝1400mで勝利を収め、後の
安田記念制覇に繋げていった。
今年の
阪急杯を制した
コパノリチャードのこれまでの成績を見ると、前述のように芝1200mへの出走経験はなく、芝1600mで2勝を挙げるなど、昨年の
ロードカナロアとは少し違った戦績を辿って
阪急杯に出走してきていた。
阪急杯が芝1400mとなった06年以降の勝ち馬を見ると、以下のようにそうそうたるメンバーが並ぶ。これだけでも
コパノリチャードの強さを語るに十分だが、さらにそれまでの戦績を振り返ると、
コパノリチャードの勝利の価値がさらに上がってくる。
年 |
勝ち馬 |
A |
B |
06 |
ブルーショットガン |
1400m |
― |
07 |
エイシンドーバー |
2000m |
安田記念③着 |
07 |
プリサイスマシーン |
1800m |
高松宮記念③着 |
08 |
ローレルゲレイロ |
1600m |
高松宮記念①着など |
09 |
ビービーガルダン |
1200m |
高松宮記念②着など |
10 |
エーシンフォワード |
1600m |
マイルCS①着 |
11 |
サンカルロ |
1600m |
高松宮記念②着2回 |
12 |
マジンプロスパー |
1400m |
― |
13 |
ロードカナロア |
1200m |
香港スプリント①着など |
14 |
コパノリチャード |
1600m |
? |
※07年は同着Aは
阪急杯以前に芝で勝ったレースの最長距離、Bは
阪急杯後にG1で好走した実績を示したもの。
阪急杯を制した馬はその後も活躍している馬が多いが、Aで1600m以上、要は
長めの距離でも実績を残していた馬は、すべて後にG1で好走している。
前述のように、これだけのハイペースで飛ばした
コパノリチャードが最後まで先頭を譲らなかったのは、
やや長めの距離で実績を残していた馬だからこそできた芸当のような印象もある。
次走は
高松宮記念となることがレース後の陣営から示唆されている。では、初の芝1200mに
コパノリチャードは対応できるのだろうか。
ひとつの指標として、今回
コパノリチャードが記録した
1200mの通過タイムは1分7秒9だった。
そして、昨年
ロードカナロアが昨年の
高松宮記念で記録した
レコードタイムは1分8秒1。左回りやコース形態の違いなど、単純な比較はできないが、
スピードは十分に通用していいはずだ。