この後、どれだけの「杞憂」を積み重ねていくのだろうか
文/編集部(W)、写真/森鷹史
確か大学生の時だったと思うが、土曜日の
チューリップ賞、日曜の
弥生賞をライブ観戦したことがある。
テイエムオーシャンが
チューリップ賞で4馬身差の圧勝、翌日は
アグネスタキオンが
弥生賞で5馬身差の圧勝を飾った。
その時の
チューリップ賞の②着馬はのちに
ゴールドシップを送り出すことになる
ポイントフラッグ。
弥生賞の②~⑤着は
ボーンキング、
ミスキャスト、
マンハッタンカフェ、
ダイイチダンヒルで、サンデーサイレンス産駒が掲示板を独占するという結果に驚いた。
「良いもん見れた2001年」だったが、
チューリップ賞がG3に格上げされたのはそれよりさらに前の1994年で、そのちょうど前年、1993年の
チューリップ賞を制したのが
ハープスターの祖母
ベガだった。21年後、
ベガ(こと座の一等星)の別名という
ハープスターと名付けられたその孫が
チューリップ賞を制するなんて、誰が予想できただろうか。
しかも、
圧巻のパフォーマンスのおまけつき。後方からの競馬はいままで通りで、外から差して突き抜けるというのも多くの
ファンがイメージしていたレースぶりだったと思うが、直線はなんとノーステッキで、出走馬中で唯一となる33秒台の上がり(33秒7)を繰り出して他馬をゴボウ抜きにした。
川田騎手はレース後のインタビューで
「直線は終始遊びながらでフワフワしていた」とも話していたから恐ろしい。単勝1.1倍の大本命馬らしい、そして
競馬ファンの想像を上回る勝ちっぷりだったのではないだろうか。
13頭立てながら
リラヴァティが平均ペースで引っ張ったこともあり、走破時計
1分34秒3は2007年
ウオッカの
1分33秒7、1996年
エアグルーヴの
1分34秒2に次ぐ3位。
また、1994年以降、単勝1倍台に推されて勝利したのは2001年
テイエムオーシャン(1.7倍)、2004年
スイープトウショウ(1.8倍)、2007年
ウオッカ(1.4倍)、2009年
ブエナビスタ(1.1倍)、2011年
レーヴディソール(1.1倍)に続くもの。
ハープスターは記録的にはもはや
「名牝の領域」に到達している感じ。
「このまま無事にクラシックに向かってほしい」という
川田騎手の願いにも同感である。
まず、第一冠となる
桜花賞と言えば、2011年
マルセリーナ、2012年
ジェンティルドンナ、2013年
アユサンと、末脚の切れる
ディープインパクト産駒が
3連覇中と圧倒的な強さを見せている。
チューリップ賞→
桜花賞と連勝した馬は1994年以降だと2001年
テイエムオーシャン、2009年
ブエナビスタの2頭だけと少ないが、今回の勝ちっぷりを見れば、阪神芝外1600mは
ハープスターにとって走りやすい舞台設定のはず。
阪神JFでは
レッドリヴェールにハナ差で屈したが、雪辱を果たしても不思議ないだろう。
それにしても、父
ディープインパクトの時は
「本当に差し届くのか!?」とレースの度に不安になる気持ちもあったが、
05年有馬記念(②着)と
06年凱旋門賞(3位入線、失格)以外は突き抜けていたわけで、14戦中12戦は
「杞憂」に終わったもの。
ハープスターもいつも後方からで、エンジン点火に少々時間を要するタイプでもあるようで、レース前にはやっぱり同じような気持ちになるのだが、
娘もいまのところ4戦中3戦は
「杞憂」に終わっている。
単に
心配性なだけという話もあるが、この後、
ハープスターとはどれだけの
「杞憂」を積み重ねていくのだろうか。想像するだけでなんだかちょっと楽しくなるのは、
春の陽気で浮かれているせいではない。だってまだ
寒いから。いろんな意味で春が待ち遠しい。