経験を積むことで、馬は強くなる
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
土曜日に行われた
日経賞では、前走の
ジャパンCで
⑫着に敗れた
ホッコーブレーヴが
②着に激走したが、この
マーチSでは、前走の
フェブラリーSで
⑫着だった
ソロルが優勝した。芝とダートの違いこそあれ、中山の重賞は土日ともに
前走のG1で大敗を喫した馬が巻き返したわけだ。
マーチSは、ダート重賞での好走歴がない1番人気馬が危険なレースで、何よりも
実績が求められる。今年の1番人気馬・
エーシンゴールドは昨年の
ジャパンダートダービーで②着になった馬で、重賞での好走歴があるタイプだったが、最後に後れを取って④着に敗れてしまった。
これで、
マーチSでの1番人気馬は、09年
エスポワールシチー(①着)を最後に5連敗。いずれもハンデ57kg以下の馬が馬券圏外に敗れている。
マーチSで1番人気に推された馬は、ハンデが57kg以下だと94年の
バンブーゲネシス(①着)を最後に馬券に絡めていない。その間、実に13頭もの馬が④着以下に敗れていて、今年の
エーシンゴールド(ハンデ56.5kg)も該当してしまった。来年以降も、
マーチSでの1番人気馬は、背負う斤量に敏感になって取捨を決めるべきだろう。
今回は1~5番人気を
4歳馬が占め、結果、掲示板内を
4歳馬が独占する格好となったが、その中で優勝した
ソロルは、
他世代とのダートG1を経験していた。今回の
4歳馬でそのような馬は、他に
クリソライト(
JBCクラシックと
JCダートに出走)がいるだけで、経験値の面では上位だったと言える。
今年の
フェブラリーSはスローペースで、それを3番手に追走しながら⑫着に敗れた
ソロルは、前走でどれだけの経験をしたかが図りかねた。
ソロルは3歳時にも
ヒヤシンスSで東京ダート1600mを経験しているが、その時は前半のペースが
34秒0-45秒7で、今年の
フェブラリーS(
35秒5-48秒0)よりも全然速い。とてもじゃないが、
「前走でG1の厳しいペースを経験した」とは言えないから、普通なら、大きな経験値の上積みがあったとは感じられない。ただ、それは、外から人間が見た
浅い解釈なのだろう。
ホッコーブレーヴが経験した昨年の
ジャパンCもスローペースで、流れが厳しかったわけではない。それでもG1の舞台に出てくる馬と一緒に走り、自身の中に
蓄積されたものは小さくなかったのだろう。
ソロルについても同じことが言えそうだ。
経験を積むことで、馬は強くなる。
ソロルは今回が4度目の重賞挑戦だったが、地方交流重賞では3歳春に
兵庫チャンピオンシップ(園田ダート1870m)で③着となっている。ただ、その時は勝ち馬と
2秒5差で、優勝した
コパノリッキーには水を開けられた。同馬には
フェブラリーSでも
0秒9差を付けられたので、今後はこの差をどこまで縮めていくことができるかだろう。
コパノリッキーは
ゴールドアリュール産駒だが、
ソロルはおじが
ゴールドアリュールで、似た血統背景を持っている。誕生日も5日違いで(
コパノリッキーが2010年3月24日生、
ソロルが2010年3月29日生)、ライバル関係になるには十分な要素が揃っている。
名勝負数え唄を作れるような活躍を期待したいものだ。
半馬身差の②着に敗れた
ジェベルムーサは、4歳勢の中ではトップハンデの
57kgを背負っていた。それを考えれば、強いレースを見せたと言える。こちらは今回が今年初戦で、大型馬だけに間隔が開いていた影響もあったのだろう。今後は順調であれば、いくつものタイトルを獲得していきそうな馬だ。
他にも今回の4歳馬には見どころの多いレースをした馬がいるので、今後が楽しみだ。もしかしたら、
フェブラリーSでの
コパノリッキーを見て、
「俺たちもやれる!」と思ったか!? いずれにしても、ダート路線における4歳世代には
良い風が吹いていることは確かだろう。
中央のダートG1は
5歳世代が幅を利かせることが多いのだが、今年は
フェブラリーSを
4歳馬が制して、いつもとは風向きが変わっている。1年後の
ドバイ国際競走が行われている頃、ダート界を牛耳っているのは、果たしてどの世代だろうか?