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上がり勝負となれば、サングレアルは浮上しておかしくない存在だった
文/編集部(T)、写真/川井博


逃げると予想されたのはマイネグレヴィルで、これを目標にどの馬が抜け出してくるか、上がり勝負となる。レース前の展開予想はこんな感じだった。

というのも、過去10年のフローラSのうち、05年以降は9回連続でメンバー中3位以内の上がりを使った馬が勝っていたから。その理由としては、もちろん直線の長いコース形態ということもあるだろうし、芝2000mより短い距離を使ってきた馬が多いこともあるかもしれない。

ということで、馬券を検討する際には「じゃあ、速い上がりを使えそうなのはどの馬だ?」ということになる。以下、自分の脳内会議の様子。

「人気のイサベルは前走のデビュー戦で上がり最速だが、35秒2。ここでは34秒台前半が求められそうだが?」

「前走でミモザ賞を勝っているハピネスダンサーは上がりが35秒3でさほど速くない。しかも前走が中山の荒れ馬場だったのに対し、今回は良馬場。プロクリスはメンバー最速で34秒3の上がりだが長期休養明け」

「ではブランネージュは? 前走の君子蘭賞は上がり最速で、34秒4の上がりも申し分ないが、初の芝2000mに対応できるか?」

「もう前走のクイーンCが上がり34秒1のマジックタイムでいいんじゃないの?」

脳内会議の結果、マジックタイムが③着を外すことはなさそう」という結論に。この結論ならいろいろ考えるまでもなく、最初に出せそうな気もするが(笑)。結果的にレースを制したサングレアルはといえばあまり深く考えることもなく、「前走の福寿草特別(④着)で少し期待外れの競馬をしたし、ここでは……」という程度だった。

改めて言うまでもないが、サングレアルの母はビワハイジ。兄姉にはブエナビスタをはじめ、アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラ、トーセンレーヴ、ジョワドヴィーヴルと5頭の重賞勝ち馬がいる。

それが、前走が未勝利勝ちのイサベル(この馬も近親がフサイチコンコルドアンライバルドで、かなりの良血馬だが)が2番人気だったのに対し、こちらは前走の敗戦が嫌われたか、4番人気にとどまっていた。

優れた血統背景を持つ、いわゆる良血馬は人気になりやすいが、一度や二度の敗戦でガタッと評価が落ちることになりがち。そういったこともあって、自分の中でも“なんとなく”「馬券圏内に食い込むのは厳しそう」という印象を持っていた。

ところが、だ。サングレアルの成績をよく見直してみれば、前走の福寿草特別で敗れはしたが、上がりは33秒8。前走の上がりタイムを比較すると、今回の出走メンバー18頭中最速で、唯一の33秒台。結果的に敗れていて、さらにメンバー2位だったために印象は薄めだったかもしれないが、上がり勝負となれば浮上しておかしくない存在だった

血統の力、と言えば簡単だが、血統に裏打ちされたこれまでのレースぶりが、今回の勝利に結びついたということなのだろう。ということは、今回⑦着に敗れはしたが、イサベルメンバー2位の上がりで伸びてはいた。今回の結果を受けて、評価を下げないようにしなければいけませんね。

勝ちタイムの2分フラットは、90年以降のフローラS(前身の4歳牝馬特別も含む)で最速。2番目に速かったのは10年の2分0秒2で、このタイムを記録したのは次走にオークスを制したサンテミリオンだから価値が高い。この時計は素直に評価しなければならないのではないか

サングレアルは今回の馬体重が414kgで非常に小柄だが、大きなフットワークで、直線が長いコースがベターな印象も受ける。本番ではハープスターが絶対視されそうだが、おそらく全馬にとって初の芝2400mという距離で、何が起こっても驚けないだろう。