ハギノハイブリッドは展開ひとつでチャンスをモノにする可能性も!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
日本ダービーのステップレースといえば、有力なのはG1の
皐月賞と
NHKマイルCだという話はさておき。トライアルに指定されているのは先週の
青葉賞と、今週の
プリンシパルS。そして、トライアルではないものの、
青葉賞とともにG2に格付けされているのが、この
京都新聞杯ということになる。
このうち、先週の
青葉賞は
ダービーと同コース・同距離。そして本番までの間隔もゆったりしており、94年の重賞昇格後に9頭の
ダービー③着以内馬を送り出している。ただ、
青葉賞組にはダービー馬不在。
一方、
京都新聞杯は00年にこの時期に移動して以来、
ダービー③着以内馬こそ5頭にとどまるものの、
ダービー馬を2頭(00年アグネスフライト、13年キズナ)輩出していることが「売り」になる。
その
京都新聞杯に、
ダービー出走を賭けて出走してきた馬は18頭。上位馬に
優先出走権が付与されるわけではないため、勝たなければ出走チャンスがついえる馬もあれば、②着賞金加算でも可能性が生まれそうな馬もあり、といった面々だ。
そんな中で1番人気に推されたのは
シャドウダンサーだった。おじの
エアダブリンは
青葉賞を、
ダンスインザダークは
プリンシパルSを制した馬。もしこの馬が優勝すれば、一族で
ダービーのステップレース完全制覇(?)だ。
その戦績は
3戦2勝。昨秋に唯一敗れたのが後の
皐月賞②着馬・
トゥザワールドで、実績的にもおじの後を追うような結果も十分に期待された。
続く2番人気は、芝ダート問わずマイル~中距離で活躍した
システィーナの孫・
ミヤビジャスパー。こちらは前々走の
若駒Sで
トゥザワールドに敗れ、
皐月賞出走を逃したクチである。そして3番人気は、祖母
サイレントハピネスが
4歳牝馬特別(現フローラS)を制している
ハギノハイブリッド。前々走の
大寒桜賞で
ワールドインパクト(先週の
青葉賞②着)に敗れた馬だ。
こうしてみると、
ダービーでも上位人気、穴人気になりそうな
トゥザワールドや
ワールドインパクトには敵わなかったものの、その次位に位置する馬たちが主力を形勢した一戦だった。
レースを引っ張ったのは、これまで11戦とキャリア豊富な
オールステイで、前半の1000m通過はなんと
57秒7。確固たる逃げ馬不在だった
皐月賞が
60秒2、先週の
青葉賞が
61秒4、そしてこのレースの直後に行われた
プリンシパルSが
60秒9という中で、この
京都新聞杯だけが異質とも言える
57秒7である。
もちろん前はバラバラで縦長の展開となり、主力の位置する後方集団はそこまで速くはなかったとはいえ、
ダービーを予想する上でひとつカギを握るレースになりそうなのは確かだ。
そんな展開、そして主な人気どころが後方に位置したこともあり、やはり上位を占めたのは差し馬ばかり。そんなレースを差し切ったのは、3番人気の
ハギノハイブリッドだった。
道中は中団の外めで、いかにも馬任せのマイペースといった追走ぶり。3コーナーあたりから徐々に前との差を詰めると、直線は外に持ち出し、しっかり末脚を伸ばしてきた。
ちょうどテニスの世界では
錦織選手の
トップ10入りが話題になっているが、この馬も特に道中の飄々とした雰囲気は(
秋山騎手の手綱さばきもあろうが)、
錦織選手が知名度をグンと上げてきたころに感じたものと近い印象もあるようにも思える。
さて、次は順調なら
日本ダービー。父の
タニノギムレットは、同じ
松田国英厩舎に所属して
NHKマイルC③着から、
ダービーの栄冠を手中にした。その息子、
ハギノハイブリッドは、やはり
「王道」からは外れる
京都新聞杯からの
ダービー制覇となるのだろうか。
東京では極めて上がりが速かった(レース上がり33秒4)
共同通信杯で⑥着に敗退したが、レース上がりが
36秒2だった前走の
新緑賞は3馬身差をつける大楽勝。そして京都の今回は、同じく上がりが
36秒2かかった中での重賞初制覇である。
皐月賞や他のステップとは明らかに違う展開で連勝を飾ったこの馬。過去の対戦成績とは関係なく、展開ひとつでこのチャンスをモノにする可能性もありそうだ。