8歳でのレースレコード樹立も、この両親の仔なら……
文/編集部(M)、写真/川井博
北海道の
ノーザンホースパークで、
「ノーザンホースパークマラソン」が行われていることをご存知だろうか? 今年はこの週末(5月17日、18日)に行われた。
ハーフマラソン(約21.1km)、
トレイルラン(約7km)、
ペアラン(約2.5km)があり、
トレイルランでは競走馬用のウッドチップコースなども走るという。そして、この
トレイルランの先導役は、あの
デルタブルースが務めている(動画がノーザンホースパークのfacebookなどに上がってます)。
長距離を走る人(競馬ファン)にとっては、
デルタブルースと一緒に走れるなんて、夢のような話でしょう。だって、あの
メルボルンCの優勝馬ですよ! 動画を見る限り、一般の人が
デルタブルースのスピードについていくのは、なかなかしんどそうではありますが……。
短距離が得意な人にとって、
夢のような先導役というのは何になるんだろう?
カルストンライトオ?
ローレルゲレイロ? 現役馬なら
ハクサンムーン? 今回の
京王杯SCを先行して押し切った
レッドスパーダも、十分に魅力的な存在だろう。
レッドスパーダは前走の
高松宮記念が18番人気⑰着という惨敗だった。そのレースを制した
コパノリチャードが今回の1番人気だったが、
コースと
馬場状態が変われば、結果もこれだけ違うものになるという。競馬の恐ろしさを見せつけられるレースになった。
レッドスパーダの父は
タイキシャトルで、ご存知の通り、同馬はG1・5勝馬。
ジャックルマロワ賞や連覇を成し遂げた
マイルCSなど、印象深いレースが多いが、どしゃ降りの
不良馬場の中で行われた
安田記念を強く記憶している人も多いことだろう。
タイキシャトルは
道悪芝が2戦2勝(ともにG1)で、ダートが3戦3勝だった。力の要る馬場を苦にしなかったので、その産駒にも同じ
道悪巧者の血が流れている……と思いがちだが、そうではない馬もいる。
レッドスパーダが典型的で、
レッドスパーダはダートが1戦(
フェブラリーS)して⑫着で、
道悪芝は⑫⑬⑰着だ。
昨年の
京王杯SCにも出走していて⑫着に敗れたが、その時は
稍重馬場だった。あれから1年が経過して、
8歳という年齢になっても、
良馬場の芝に替われば軽やかに一変するのだから立派なものだ。
1分19秒7というタイムは従来のレースレコード(10年
サンクスノート・
1分19秒8)を上回り、コースレコード(
ミトラ・
1分19秒6)に0秒1差に迫る速さだった。
競走馬の中には
好走と
凡走の差が激しいタイプがいて、
レッドスパーダもそのタイプと言える。これまでに26戦して[7.3.2.14]という成績で、掲示板外は7度あるが、そのうち6度は
⑫着以下だ。⑥~⑪着は一度しかない。この辺りの波の大きさは、
母父ストームキャットの影響だろう。
ただ、
母からは高齢まで活力が衰えない血も受け継いだようで、
レッドスパーダには
ブレイブファイトという兄がいて、同馬は7歳春に準OP(
オーストラリアT)を勝っている。その時は
1分32秒9(京都芝1600m)という好タイムだった。
タイキシャトルの産駒には、8歳で
朱鷺Sを制した
マイケルバローズや、同じく8歳で1000万特別を勝った
リキアイダンディや
ホシシャトルなどもいて(この3頭はいずれも12~14番人気での勝利!)、高齢でもスピード豊かな産駒が目に付く。この両親の仔であれば、今回の
快走も十分に頷けるはずだ。
今回の勝利によって、
レッドスパーダは
安田記念への優先出走権を得た。東京芝1600mは[3.1.0.4]という成績で、3歳時には
NHKマイルCで②着に好走している。距離が延びてもこなせるタイプで、
斤量58kgでも勝ち鞍があるから、その点も問題ないはず。
今年の
安田記念は
6月8日の施行で、梅雨時だけに気になるのは
空模様かもしれない。父が優勝した98年の時とは真逆の天候で行われるなら、面白い存在になってきそうだ。
一方、逃げを打ったものの直線で失速した
コパノリチャードは、これで東京芝が⑧⑦着となった。同じ左回りの中京で勝っているのだから、そのことが敗因ではないはず。よほど
東京競馬場のコース形状が合わないのだろうか……。
コパノリチャードは良馬場の芝でも重賞2勝を挙げているが、
道悪芝は2戦2勝で、いずれも0秒3差以上の快勝をしている。こちらは次走が
安田記念であるなら、雨乞いしたいところかもしれない。
ちなみに、
安田記念が6月に施行されるようになった96年以降の18回を振り返ると、そのうち16回が
良馬場での施行で、
道悪馬場は2回だけ(98年不良、04年稍重)。
レッドスパーダに追い風が吹く可能性もありそうだ。
2010年以前は
1分32秒1(03年
アグネスデジタル)という勝ち時計が最速だったが、近4年は
1分31秒7(10年
ショウワモダン)、
1分32秒0(11年
リアルインパクト)、
1分31秒3(12年
ストロングリターン)、
1分31秒5(13年
ロードカナロア)と高速決着が続いている。
マイル戦では
1分32秒1という持ち時計の
レッドスパーダが、今回に続いてまたも持ち時計を更新できるのか。今回のレースで泣いた人も笑った人も、
8歳という年齢はあまり考えずに検討するべきだろう。