トップハンデでも1番人気でもなかったがG3では力が一枚上だった
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
台風の接近が見込まれる中、果たして無事に開催できるかどうかと危惧もされた今週の
小倉競馬。仮に無事開催できたとしても、日曜メインの
小倉記念で道悪を味方につけられるのはどの馬か、という話も多く聞かれた。
しかし、土曜になってみれば、
台風の九州直撃は免れ、終日曇りの稍重馬場(ダートは重馬場)。
小倉記念と同じ芝2000mで行われた土曜のメイン・
九州スポーツ杯では、
サトノアラジンが1分58秒9の時計で快勝を収めており、このまま馬場の心配はしなくて済むかと思われた。
ところが、明けて日曜は午前から小雨。気象衛星からの画像や雨雲レーダーを見ていると、素人考えではとても信じられない雨である。さらに、特別レースのころには風雨とも強まり、実はこれから
台風がやってくる、と言われれば騙されてしまいそうな雰囲気の中で
小倉記念のレースを迎えた。
もっとも、道悪になったからといって、実はあまり変わらないのではないか、というのが今年のメンバーではあった。1番人気の
ラストインパクト、3番人気の
サトノノブレスは、道悪不得手と先入観を持ってしまいがちな
ディープインパクト産駒ながら、不良馬場で行われた昨年の
菊花賞④&②着馬。間の2番人気・
メイショウナルトは、昨年のこのレースが
レコード勝ちとはいえ、一応は稍重馬場である。
そんな悪化傾向にある馬場でハナを奪ったのは、その昨年の覇者・
メイショウナルトだった。昨年は53キロで5番手からのロングスパート、前走の
七夕賞は56キロでの逃げ切り勝ちで、今回は果たして57.5キロの逃げがどう出るか。ここから4~5馬身の間隔を置いて、3番手集団の一角に
ラストインパクト、さらに2馬身差でこれを見るように
サトノノブレスという上位人気の位置取りになった。
ペースは前半800m通過が47秒5、1000mが60秒0。同じ稍重馬場だった昨年は
メイショウナルトではなく、
メイショウサミットが46秒2-58秒0のハイペースで飛ばし、
メイショウナルトは3~4コーナー中間でこれを交わしていった競馬だった。
一方、今年は自身が逃げる形とはいえ昨年より流れは遅く、3コーナーからペースを上げていけば昨年同様の競馬に……とはならないのがハンデ戦ということか、それとも
稍重発表以上に重い印象もあった馬場のせいか、あるいはその両方か。
4角手前までリードこそキープしていたものの、そこから差を開きにかかった昨年とは違い、逆に
ラストインパクトや
サトノノブレスに差を詰められて4コーナーを通過することになってしまった。
こうなると、後から来た馬が有利な展開に……、なったと思いきや、この3頭から真っ先に脱落したのが、なんと1番人気の
ラストインパクト。前との差を詰める段階からどうにも手応えが怪しく、人気3頭の中では馬場悪化の影響をもっとも受けてしまっただろうか。
対して、一見苦しい展開に見受けられた
メイショウナルトは、ラチ沿いに進路を取って渋太い粘りを見せていた。そして、馬場の外からは
サトノノブレスが脚を伸ばし、さらに外にはこれをマークして動いた
マーティンボロ。直線はこの3頭で内外大きく開いた追い比べが演じられた。
しかし、ゴール前はまだ状態の良い馬場の外を突いた2頭が優勢に。最後は
サトノノブレスが
メイショウナルトを差し切り、
マーティンボロの追撃も抑えて勝利を収めたのだった。
G1の
菊花賞で②着、そしてG2の
日経新春杯を制しながら、トップハンデでも1番人気でもなかった
サトノノブレス。しかしここは、急激に悪化しつつあった馬場も無難にこなし、
G3では一枚上の力を見せつけた。
これで、これまで経験も多くはなかった
小回りコース初勝利。また、もう少し長めの距離で結果を出してきた馬だけに、
有馬記念あたりでちょっとこの競馬を思い出すと、もしかしたら
良いことがあるかもしれない。
②着の
マーティンボロは、前走の
中日新聞杯が10番人気・ハンデ54キロでの勝利だったが、今回は56キロになって②着に好走。こちらは全6勝中5勝が2000m、左回りの中京で重賞初制覇を挙げており、
秋の天皇賞が視野に入ってくる。
そして、連覇こそ逃したものの、
メイショウナルトもよく粘って③着。これまでの好走は5~9月に集中しているため、今後は
好調期間をどれだけ伸ばしていけるかがカギになりそうだ。