今後の糧にできることがふたつあった
文/編集部(M)、写真/川井博
1番人気に推された
サトノフラムの単勝オッズは
1.4倍で、
「ここまで被るのか……」というのがレース前の正直な印象だった。
サトノフラムは阪神芝外1600mでのデビュー戦で、持ったままで先頭に立ち、最後までほとんど追うところがなく
2馬身差を付けた。その上がり3Fは
33秒9で、
かなり衝撃的な内容だったと言える。
多くの人が
「追ったらどこまで伸びるのか!?」と感じたのだろう。だからこそ、単勝人気がここまで被ったのだろうが、今回は直線に入っても
まったく伸びが見られなかった(⑩着)。
「メインレースの考え方」では、
サトノフラムと
クラリティスカイを評価する形で、どちらを「◎」にするか悩んだ。
坂をこなした実績は両馬同じで、すでに
左回りで実績があったのは
クラリティスカイの方だった。ただ、前走のレースぶりがあまりに鮮やかすぎて、
サトノフラムを「◎」にしてしまった。最後の詰めが甘すぎました……(苦笑)。
昨秋の東京での2歳重賞では、
単勝オッズ1倍台の1戦1勝馬が2戦続けて馬券圏外に飛んだので、
「またか」という思いを禁じ得ない。昨年の
京王杯2歳Sでは
モーリスが単勝1.5倍ながら⑥着に沈み、
東スポ杯2歳Sでは
サトノアラジンが単勝1.8倍で⑤着に敗れた。「2度あることは3度ある」となってしまった。
JRAの芝重賞で
単勝オッズが1倍台だった馬を調べてみると、90年以降、先週までで612頭がいて、その
勝率を見ると面白いことが分かった。年齢別での勝率は、
3歳馬が51.7%、
4歳馬が53.4%、
5歳馬が48.4%、
6歳以上の馬が34.2%で、
2歳馬は39.2%だ。2歳馬は6歳以上の馬に比べれば勝率が高いものの、
4割に届かない数値。つまり単勝1倍台の馬でも、半分以上が負けていることになる。
さらに調べてみると、驚くべきデータがあった。単勝1倍台に推された2歳馬の
キャリア別の勝率で、
キャリア3戦の馬が30.0%([6.8.1.5])、
2戦の馬が60.0%([18.3.3.6])で、
1戦の馬は25.0%([5.4.2.9])なのだ(4戦以上の馬は[0.3.0.1])。圧倒的人気を集める馬の中で、
いちばん危険と言えるのが
「1戦1勝の2歳馬」で、今回もこれにハマッてしまったわけだ。
確かに、冷静になって考えてみれば、たった1戦のキャリアを過剰に評価するのは
危険だったのだろう。昨秋から数えて3回もハズし続けてようやく理解したので、今後はこれを糧にして、
冷静な判断を下したいと思います。
優勝した
クラリティスカイは、デビュー戦(
中京芝1400m)こそ距離不足だったか差し届かなかった(④着)が、2戦目(
中京芝1600m)で距離が延びて②着まで差し込み、3戦目の前走(
阪神芝外1800m)で鋭い末脚を見せて快勝した。
距離延長に加えて、左回り→右回りという条件変更にも対応し、
キャリアを重ねて強くなっていたのだろう。今回は好スタートを決めた後に
好位のインを追走し、直線に入ると早めに前が開けた広い所に持ち出されて差し切った。
クラリティスカイは
クロフネ産駒で、
クロフネ牡セン馬が
東京の芝重賞であまり成績が良くなかったので評価を少し下げたが、よくよく考えてみると、
クラリティスカイ以前に勝利したのは
東スポ杯2歳Sの
フサイチリシャールで、その他に馬券に絡んだのも
3歳6月までのものだった。
クロフネ牡セン馬は
芝重賞だとワンパンチが利きづらい印象を持っていたが、それは
古馬のイメージが強すぎるのだろう。2歳や3歳春までであれば、同産駒の芝重賞での成績は悪くない(
牝馬は古馬戦でも活躍する馬が多い)。
年齢面を考慮することを忘れていた。
これも忘れてしまいがちなので、あえて先に記しておくが、
クロフネ牝馬は
ファンタジーSでの成績が良い([2.2.2.3]・複勝率66.7%)。
クロフネ産駒は
完成度が早く、
芝のスピード勝負にも対応できるために、このような成績が残されているのだろう。今後も
早い時期の芝重賞で活躍する馬が出てくるだろうから、これも今後の糧にしていこうと思います。
今後の
クラリティスカイは、今年から阪神競馬場で施行される
朝日杯FS(阪神芝外1600m)か、年末の
ホープフルS(中山芝2000m)を目標に調整されるようだ。
阪神芝はすでに1800mで経験があり、対応は十分に可能だろう。また、母の父が
スペシャルウィークということを考えれば、距離が2000mに延びてもこなせそうな印象がある。
センスの良い走りを見せているので、
今後の可能性は大きく広がった印象があるが、その
血統を見ると、
ダートもイケるのでは!?との思いも膨らむ。
祖母の
タイキダイヤは芝重賞勝ち馬だが、父
オジジアン×母父
ミスワキという配合で初勝利は
ダートで挙げている。母の父である
スペシャルウィークの産駒には
ローマンレジェンドや
ゴルトブリッツといった
ダート重賞勝ち馬もいるし、何より父が
クロフネなのだから、
ダートが合わないとも思えない。
ローマンレジェンドは父
スペシャルウィーク×母父
Awesome Again(その父デピュティミニスター)で、
クラリティスカイの父と母父をひっくり返したような配合でもある。
クラリティスカイは
クラリティシチーの半弟で、近親には
NHKマイルC勝ち馬の
タイキフォーチュンもいるので、早い時期に芝で活躍するのは当然の路線だろう。しかし、
それだけでは収まらない可能性も感じられる。再来年頃には
芝と
ダートの二刀流で活躍していても驚けないのではないだろうか。