絶妙のタイミングで仕掛けて、29年連続でのJRA重賞制覇!
文/編集部(M)、写真/森鷹史
レース後のインタビューで、
グァンチャーレは
スクリーンヒーロー産駒で
渋い血統ですね、と振られた
武豊騎手は、
「でも、走りますよ」と笑顔を交えて答えた。
「この馬(
グァンチャーレ)
、走ります」という話は、昨年末に放映された
『武豊TV!Ⅱ』の中でも解説付きで話されていた。
武豊騎手は前走の
東スポ杯2歳Sからコンビを組み、そこでは直線で前が詰まって⑦着に敗れたものの、その走りは想像していた通りだった話していた。その前走の
萩Sでは逃げる形で③着に敗れたものの、
いちょうSでは後方から
上がり33秒5で0秒5差(②着とは0秒2差)まで詰めていた。そこに
光るものを見つけていたのだろう。
ちなみに、その脚を評価していて、
東スポ杯2歳Sでは
グァンチャーレを穴ぐさ💨に指名していた。なので、こちらとしては
東スポ杯2歳Sで突き抜けてもらっても構わなかったのですが(笑)、こうして
重賞ウイナーとなってくれて感無量です。
『武豊TV!Ⅱ』では、
グァンチャーレの次走(東スポ杯2歳Sの次走)が
シンザン記念になりそうなことも話していて、
「乗せてもらえそうです」と語っていた。そこで口にはしていなかったが、話しぶりには
同じ轍は踏まないという意志が感じられた。今回の
シンザン記念は12頭立てと手頃な頭数になったことも良かったのだろう。
グァンチャーレは
ゲートに不安定なところがあり、そこが今回の課題と思われた。それだけに他馬と同じタイミングで出られ、その時点で
好走の半分くらいは約束された感じだったか。あとは
仕掛けのタイミングだったが、これが
絶妙だった。
グァンチャーレ&
武豊騎手は直線に入って内で逃げ粘る
レンイングランドに迫り、これを交わした上で、最後に追い込んできた
ロードフェリーチェと
ナヴィオンの追撃を凌いだ。アタマ+ハナ+クビ+クビ差という大接戦だったので、追い出すタイミングが少しでもズレていたら、
交わせなかったか
交わされていただろう。
昨年までにJRA重賞だけで
294回も先頭でゴールした男は
さすがですね。持っているとか持っていないとかではなく、この実績は
掴み取る力があるからこそのものだろう。
武豊騎手は87年のデビュー以来、これで
29年連続でのJRA重賞制覇となり、これは
岡部幸雄元騎手の28年連続(75~02年)を上回って
歴代単独トップに躍り出た。この記録は来年以降もさらに伸びていくことだろう。
冒頭で記した通り、
グァンチャーレは
スクリーンヒーロー産駒で一般的には
渋い血統との評価なのだろうが、ご存知の通り、
スクリーンヒーローは
父グラスワンダー×
母父サンデーサイレンスという配合で、
ダイナアクトレスの孫に当たるので、この父系をもってして
渋いと表現することには
違和感を覚える。
牝系は古くから日本に続くもので、確かにそちらは
渋いと言えるが、もはや
サンデーサイレンスの血が入っていれば
すべての渋さが吹き飛ぶ印象がある。
グァンチャーレの母父は
ディアブロで、これは
タイキシャトルなどと同じ
デヴィルズバッグの産駒なので、
Haloの系統だ。
スクリーンヒーローは4代父がHail to Reason(ロベルトやHaloの父)で、母父が
サンデーサイレンスだから、
グァンチャーレは
Hail to Reasonの5×5×5というクロスを持ち、
Haloの4×4というクロスを持っている。
Haloはご存知
サンデーサイレンスの父で、今後はこのような
HaloやHail to Reasonのクロスを持つ馬が多く登場、活躍するのだろう。ちなみに、今年の
フェアリーSを逃げ切った
ノットフォーマルは
父ヴァーミリアン×
母父マンハッタンカフェで、
サンデーサイレンスの3×3(Haloの4×4)というクロスを持っている。
スクリーンヒーローは4歳で
ジャパンCを制した馬だが、初重賞制覇はその前走の
アルゼンチン共和国杯で、3歳1~2月はまだ
ダートを走っていた。
芝で初めて③着以内を記録したのは、3歳7月の
ラジオNIKKEI賞(②着)だった。
その祖母
ダイナアクトレスはデビューから3連勝で
函館3歳Sを勝ったが、4歳以降も重賞制覇を重ね、5歳春の
安田記念(88年)で
ニッポーテイオーの②着になっている(4歳時と5歳時に重賞2勝ずつ)。
グァンチャーレは
渋いというよりも、
早い時期から重賞タイトルを獲得して、今後がますます楽しみな血統という表現が合っているんじゃないだろうか。