ヴァンセンヌはロードカナロアに成りえるか!?
文/編集部(M)、写真/川井博
東京競馬場は昼前から
小雨が降り始め、午後には
雨に。15:00過ぎまで
降雨があって、今年の
東京新聞杯は
道悪馬場(稍重)となった。
逃げ馬不在のメンバーだったので、
スローになることが予想され、さらには馬場も渋ったため、推定勝ち時計は
1分34秒8に設定した。良馬場であれば
1分32秒~33秒台の決着だろうから、そこに
1秒0~2秒0ぐらいを足した計算だ。
ところが、結果は
1分35秒7。1分34秒8という推定時計は、
少し大目に盛ったつもりだったが、それでも1秒近く足らなかった……。
前半3Fは
36秒3で、これは9Rの
春菜賞(3歳500万・芝1400m)よりも遅い(
春菜賞は35秒9)。そればかりか、4Rの
未勝利戦(芝1400m)も35秒9で、施行距離が200mほど違うとはいえ、3歳未勝利戦よりも遅いペースだったということだ。
なんだかなあ……と言わざるを得ない。
こんなペースでは
流れに乗れなくなる馬が続出するのも当然で、
ヴァンセンヌは道中で行きたがり、折り合い重視でいつも以上に後方に位置する馬もいた。レースはガタガタした感じだった。
3番手を追走していた
マイネルメリエンダは道悪実績があり(稍重馬場で3戦3勝だった)、スローペースにもなっていつも通りの先行策を採れていたので、鞍上の
柴田大騎手はほくそ笑んでいるのでは?と思ったが、直線に入ると進路を馬場の中央に採った。
そこからは粘ったものの伸びは見られず、結果
⑦着に敗れた。東京競馬場はコース形態が合わないのか、今回の馬場が合わなかったのか、過去最多体重(6kg増の484kg)の影響があったのか……敗因がよく分からず、
不可解な失速に映った。
一方、
マイネルメリエンダが馬場の中央に持ち出されたことで、
ヴァンセンヌの前が
ぽっかりと空いた。そのスペースにスッと入った
ヴァンセンヌは脚を伸ばし、早めに先頭に立って押し切りを図った。
アルフレードが大外から、
フルーキーが最内から、馬場の中央からは
シャイニープリンスや
リルダヴァル、
エキストラエンドらが脚を伸ばしてきたが、いちばんスムーズに立ち回ったのが
ヴァンセンヌで、そのまま押し切るのも当然だった。
ヴァンセンヌはこれで4連勝で、重賞初制覇。前走の
元町Sも前々走の
エクセレントJTも
道悪馬場でのマイル戦で、勝ち時計が
1分35秒7~1分35秒8だった。
芝1600mを
1分35秒台で1000万→準OP→重賞と3連勝できるなんて、今の時代にやろうと思ってもできるものじゃない。
強い引きがあればこそだろう。
こう書くと、
ヴァンセンヌはツイてるだけ、というように思われそうだが、そう言いたいわけではない。運も実力のうちだし、
ヴァンセンヌの場合は、
運以外の実力の部分もまだまだ隠し持っている気がする。
時計面の裏付けがなくて半信半疑だった馬としては、あの
ロードカナロアがいる。3歳時に
京阪杯を制した時にこのコーナーで記したが、当時の
ロードカナロアはハイペースでの出走歴がなく、芝1200mで5戦5勝となっても、
本当に強いのかどうか、判断しかねる存在だった。
ところが、その後の
ロードカナロアの活躍についてはご存知の通り。ペースや勝ち時計は差し馬にはどうにもすることができない部分で、
「勝ち時計が遅い=強くない」という図式は
必ずしも正解ではないのだろう。
ヴァンセンヌは父
ディープインパクト×母
フラワーパークというG1馬同士の配合馬で、血統面からは
時計が速い決着で音を上げるようなタイプには見えない。前走の
元町Sにしても今回の
東京新聞杯にしても、道中でピタリと折り合ったわけではなく勝ち切っているのだから、
速い流れになった方がむしろ良さそうな印象も受ける。
ヴァンセンヌは今年
6歳になるが、キャリアはまだ
11戦。2度の長期休養があって数を多く使われていないのだが、これを見ると母の
フラワーパークを思い出す。
フラワーパークは
3歳秋のデビューで、2戦目での初勝利は
3歳11月だった。管理する
松元省一調教師が馬の成長を待ち、
我慢したお蔭で花開いた、という声が聞かれたものだ。
ヴァンセンヌもその血を引いている。
今後はおそらく
安田記念が目標となり、その前に時計面の課題克服の場面がやってくるのだろう。その時にどんなレースを見せてくれるか。その走り次第によって、4ヶ月後には
主役の座に就いている可能性もありそうだ。
1&2番人気に推された
角居厩舎の2頭(
フルーキー、
エキストラエンド)は、道中で後方の位置取りになり、よく追い込んだものの
連対圏までは届かなかった。今回は馬場やペースなど、合わない部分があったのだろうが、結果的に賞金は加算できず、出直しという形になった。
群雄割拠の
マイル戦線は、
運も重要な要素であるとの印象を強く受けた。