世代最初の中距離重賞2勝馬になった事実は、高く評価すべき
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
今年の
弥生賞は11頭立てと少頭数ながら、そのうち
重賞勝ち馬が7頭集結し、ハイレベルな争いとなった。
「今年のクラシック戦線は牡牝ともに混戦」といわれている。その理由として、
先週まで重賞2勝馬が1頭もいなかったこともあるのではないだろうか。
そして、この週の土曜に開催された
チューリップ賞で
ココロノアイが重賞2勝馬となり、牡馬戦線はどうか、という形でこのレースを迎えた。
個人的にも、このレースはいろいろな意味で注目していた。それは
皐月賞のトライアルということだけでなく、前述したようにメンバーの中に重賞勝ち馬が多かったので、このレースで
重賞2勝馬が誕生する可能性は高そうに思えたから。
近年の傾向を見ると、
“世代最初の中距離重賞2勝馬になる”ことには意味がある。以下は過去10年で、世代最初に芝1800m以上の重賞を2勝した馬と、その後の戦績を表にしたものになる(「年」はその年のクラシックを戦った世代のこと)。
年 |
馬名 |
その後のおもな戦績 |
14年 |
イスラボニータ |
皐月賞 |
13年 |
コディーノ |
皐月賞③着 |
12年 |
グランデッツァ |
マイルCS③着 |
11年 |
サダムパテック |
マイルCS、皐月賞②着 |
10年 |
ヴィクトワールピサ |
皐月賞、ドバイWCなど |
09年 |
ロジユニヴァース |
ダービー |
08年 |
マイネルチャールズ |
皐月賞③着 |
07年 |
フサイチホウオー |
皐月賞③着 |
06年 |
アドマイヤムーン |
ドバイDF、ジャパンCなど |
05年 |
ストーミーカフェ |
特になし |
10頭中2頭が皐月賞を勝ち、残る8頭中6頭は
皐月賞で好走しているか、後にG1勝ち馬となっている。
そして、今年最初の中距離重賞2勝馬は、今回勝利した
サトノクラウンとなった。前述の傾向を見ると、この事実だけでも高く評価すべきだろう。
レースぶりも優秀で、先行集団を前に見る位置で進めた
サトノクラウンは、直線入口で早くも先頭へ。後方待機組が②着以下を占める展開となったが、これを全く寄せ付けず②着の
ブライトエンブレムに1馬身半差をつけた。展開を考えると、
この勝利の価値は高いだろう。
さらに、
サトノクラウンは今回が3戦目で、3戦目での弥生賞制覇は90年以降で
アグネスタキオン、
ディープインパクトのみ、無敗での優勝はこの2頭に
フジキセキ、
ロジユニヴァースを加えた4頭のみとなる。
いずれもG1勝ち馬で、錚々たる名前が並ぶ。過去の傾向からは、
サトノクラウンの前途は洋々だと思える。
面白いのは、
サトノクラウンは今回の単勝オッズが6.3倍で、1.9倍で1番人気の
シャイニングレイからは離れた2番人気。前走の
東京スポーツ杯2歳Sが4番人気、デビュー戦が2番人気で、これまで
一度も1番人気になったことがない。
そして、この3レースで1番人気になっていたのはいずれも
ディープインパクト産駒だった。典型的な
“人気はあちら、お金はこちら”というタイプだ。
それはなぜだろうか。
サトノクラウンの血統を見ると、「
父Marju、
母ジョコンダ2」とある。現在の芝中距離路線は
ディープインパクト産駒や
ハーツクライ産駒の独壇場となっていて、
「何だかよく分からない血統の馬の単勝は買いづらい」という方も多いのではないだろうか。自分はそんなところがあります(苦笑)。
ただ、血統の字面は分かりづらいが、
サトノクラウン自身はかなり良血と言える血統背景を持っている。
Marju自身の現役時代はG1を1勝(91年
セントジェームズパレスS)、
英ダービーで日本に輸入された
ジェネラスの②着に入った程度(ちなみに同世代の
日本ダービー馬は
トウカイテイオー!)だが、産駒には
インディジェナス、
ヴィヴァパタカといった香港G1勝ち馬がいて、
サトノクラウンの全姉には英G1勝ち馬
ライトニングパールがいる。古馬になってから強くなった
インディジェナス、
ヴィヴァパタカを見る限り、成長力も豊富にありそう。
リアルスティールをはじめ、今年の
皐月賞も
ディープインパクト産駒が多数出走してくると思われるが、
皐月賞は
ディープインパクト産駒がまだ勝っていない。前述したように世代最初の中距離重賞2勝馬は
皐月賞で好走しやすい傾向があるだけに、本番でも十分チャンスがあるはずだ。