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【対談・重岡課長①】中京競馬場の設計は“渾身のデキ”だった
2015.3.18
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重岡真司・JRA美浦TC馬場造園課課長…以下[重]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]本日は美浦トレーニングセンター馬場造園課の重岡真司課長をお迎えして対談をお送りさせていただきます。よろしくお願いいたします。

[重]よろしくお願いいたします。



[西]重岡課長とは、大先輩にあたる大久保洋吉厩舎の鈴木正雄助手との席でご一緒させていただいたことが切っかけとなり、お世話になるようになりました。

[重]確か、新年会だったと思います。

[西]あ、そうです。いつも粗相ばかりですみません。

[重]そんなことはありませんよ。

[西]それ以来、馬場のことについて、いろいろお話をさせていただくようになりました。そして実は、昨年よりこの対談に登場していただけるように、オファーを出させていただいておりまして、今回晴れて実現することとなったわけです。本当にありがとうございます。

[重]よろしくお願いいたします。

[西]読者の方々のなかで、馬場造園課という名前は聞いたことがある方はいらっしゃるかもしれませんが、その仕事については知らない方が多いでしょう。そこで、仕事の内容から教えていただけますでしょうか。ちなみに専門職だったりするんですか?

[重]専門職です。大学で工学部土木課とか、土木工学という分野があるのですが、そこでは道路やトンネルを設計、建設する学問を学びます。僕自身もそこを出ています。あとは、農学部に農業土木という分野があって、そこの出身者がほとんどです。競馬場の馬場について教えてくれる学校はありません。馬場を道路の派生と考えるということでしょうか。機能的に、ダートなどはより近いと言えると思います。それに対して芝コースは、当然ですが芝を生やします。そこは芝の畑であって、しかも馬が走るための走路ということになって、アプローチが二つの分野ということになります。ですから、2つの出身者が多いということなのです。

[西]建築ではなく、道路をつくるイメージなんですね。

[重]そうですね。建築出身の職員もいますが、大雑把な言い方をすれば、屋根が付いているところは建築で、空の下は馬場という感じです。

[西]なるほど。あ、そうですよ。地下馬道に跨がる橋とかも、そうだと聞いたことがありますよ。

[重]橋を作ったことがあるんですよ。2010年に阪神競馬場の改修が行われたとき、外回りコースができましたが、元々一部に水路がありました。その水路を跨ぐ形で外回りコースが作られていて、その水路を跨いでいる橋2ヵ所を作りました。

[西]参考書(番組表)を持ってきました(笑)。

[重]助かります(笑)。当初は水路を移動させるという案もありましたが、膨大な時間と労力が必要となります。だからと言って、水路を使っている人たちがいますので、埋めてしまうわけにはいきません。それで橋を掛けることで対応することになりました。

[西]あ、そうだったんですね。水路を橋で跨いでコースが通っているんですか。それは知らなかったぁ。

[重]見えないですよね。

[西]見えないですよ。

[重]でも、まさしく橋なんですよ。

[西]4コーナーは橋の上なんですね。

[重]そうです。向正面で一度橋を渡って、4コーナーを回ってから再び橋を渡るという形になります。

[西]それは知りませんでした。橋と言えば地下馬道で、競馬場、トレセンではいまや地下馬道は基本だったりしますよね。

[重]そうなっていますよね。

[西]中山や東京は地下馬道が長くて、ずっとトンネルになっていますからね。

[重]いまはトレセンも含めて、地下馬道がないところはないですね。

[西]函館、札幌はなくなったんじゃないですか?

[重]調教で使用する地下馬道があります。

[西]あっ、そうでした。地下馬道も馬場造園課の担当ということなんですか。

[重]そうです。

[西]でも、建設するのは業者ですよね。

[重]そうなんですが、知識がないと駄目なんです。我々JRAは会計検査院といって、役所の無駄使いをチェックする機関があって、そこの検査を受けなければなりません。

[西]ああ、そうなんですね。

[重]工事であれば、他の公共工事と同じように、積算について過大はないかというような検査を受けることが義務付けられています。橋で言えば、妥当と思われる強度に対して、その橋が過大設計をしていれば指摘を受けます。それらの質問に対して、説明できる程度の知識は最低限必要となってきます。

[西]凄いですね。そんなことまでやっていらっしゃるんですか。ということは、競馬場の改修もですよね。

[重]もちろんです。個人的には、中京の改修が渾身のプラスだったんです。……あっ、すみません。そんな話ではないですよね?

[西]いや、そういう話も伺いたいんですよ。中京も携わっていたんですか? コースの図を見ると、3コーナーから4コーナーの部分って、元は駐車場かなにかでしたよね。

[重]駐車場です。

[西]それとファンの人たちにはわかりづらいのですが、中京は厩舎地区が低くなっていたんですよね。

[重]特に美浦の馬が入る外厩は低かったですね。

[西]極端な言い方をすれば、丘の上に競馬場があって、その下に厩舎地区がある感じでした。

[重]関東馬が入る馬房はそうでしたね。

[西]そういう部分がコースになって、結果的には直線の坂が出てきたということなのですが、こういうプランは上層部から降りてくる感じなんですか?

[重]当時、僕は本部勤務だったんですが、上司から「何とか1600mを取ることができるコース形態を考えるように」という指示を受けました。

[西]1600mというのは、4つコーナーを回るのではなく、2ターンの1600mということですよね。

[重]そうです。1600mを考えるときに、前のコースの外側にコースを増設するということでは対応できませんでした。だから駐車場を取り込まないとならないとは思っていて、いまの3~4コーナーの壁の外は崖になっているんですが、そこが敷地一杯なんです。それに対してゴール板の位置はほぼそのまま、という状況でした。

[西]確かに敷地一杯一杯ですよね。駐車場を潰しただけで大丈夫だったんですか。敷地は広げていないですよね。

[重]敷地は全く同じですよ。仰る通り、駐車場を潰しても若干1600mには足りませんでした。そこで幅員を目一杯使うことにしたんです。

[西]どういうことですか?

[重]まずはスタートから向正面を外に敷地目一杯に振ります。ですから、以前は直線と向正面のコースが平行でしたが、いまは3コーナーに向かって外に膨らんでいます。

[西]なるほど。

[重]そして、スタンド前に水路のような部分がありました。

[西]そんなところがありましたか。

[重]あったんです。これは私自身も伝聞でしか聞いていないのですが、昔子供がレースに侵入してしまったことがあったそうなんです。いまの時代はそういうこともなくなっていますので、そこを潰すことで目一杯外に出してスタンド側に近づけたんです。

※次回に続く

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