3連覇を達成し、“阪神”という牙城を守り切った
文/編集部(T)、写真/川井博
ゴールドシップが前走の
アメリカJCCで1番人気⑦着に敗れた直後、友人から
「ゴールドシップは分からん! もう買わん!」とメールが届いた。
彼に言われるまでもなく、
自分もよく分からない(笑)。前走は3歳時に
皐月賞、
有馬記念を制し、近2年の
有馬記念でも③③着と安定していた
中山で初めての大敗。最近は強さを見せる時はとことん強いが、負ける時は不可解なくらいアッサリ負けるレースが多くなっている。
それでいて
ダービー以降、国内では2番人気以下に落ちないのだから難しい。
「力は認めるけど、アテにしづらい……」と考える方が多いのではないだろうか。
そして、
ゴールドシップは昨年、一昨年と連覇を飾っている
阪神大賞典に、3連覇を目指して出走してきた。
阪神はこれまで6戦してすべて連対、3歳以降は5連勝。もっとも得意とするコースと思われた。
アメリカJCCで
“急坂コースで崩れない神話”が崩壊した今、
阪神は残された牙城。ファンの間では
「ここで勝てなければ……」という、ある種の悲壮感みたいなものがあったように感じていた。
レースはスタート直後に
スズカデヴィアスと
メイショウカドマツが
「何が何でも」という感じで競り合い、一気に後続を引き離して先頭と2番手。このまま2頭が大逃げを打つかと思わせたが、
スズカデヴィアスの
藤岡佑騎手、
メイショウカドマツの
武豊騎手もさすがで、このまま行っては共倒れと見たのだろう。そこから一気にペースを落とし、また馬群が一団となった。
そんな中、
ゴールドシップはレース前半で中団に控えてペースを守り、ペースが落ち着いた2周目の向正面で一気に進出。
岩田騎手は前の
スズカデヴィアス、
メイショウカドマツが下がってくると見たのだろう、その外からスムーズに交わして早めに先頭に立ち、そのまま押し切った。
レース後、
ゴールドシップを管理する
須貝師は
「声が枯れました」とコメントしたという。
「ここで勝てなければ……」という思いは、ファン以上のものがあったことは想像に難くない。そんな関係者の思いに応え、
ゴールドシップは
“最後の牙城”を死守した。
前述したように、古馬になってからの
ゴールドシップは
好走と凡走の差が激しい。昨年も軽く触れたが、
ゴールドシップが好走した時の共通点をいくつか探してみた。列挙すると以下のようになる。
[1]4角である程度前につけた時4角5番手以内だと[9.2.2.2]で掲示板外がない。前走の
アメリカJCCは4角11番手からの競馬となり、展開とコースが不向きだったのだろう。中山芝2200mは外回りコースで、マクりづらいコースともいわれている。
[2]上がりがかかる展開古馬になってからは中央で
レース上がり3Fが35秒0以上だと[5.1.1.1](掲示板外なし)なのに対し、
34秒9以内だと[0.0.1.4]。今回は上がりが35秒9で、これは
[1]にも通じると思うが、上がりのかかるコースや展開にならないと厳しいということなのだろう。
古馬になってからは平坦コースで⑤⑤⑦②着でもある。
[3]少頭数12頭立て以下だと8戦8勝。連覇している
宝塚記念も13年11頭立て、14年12頭立てだった。一方、
古馬になってからは13頭立て以上だと[0.1.2.6]と勝ち切れていない。[1]で示したように、勝負所である程度前に行けることが好走の条件だとしたら、少頭数を得意としていることも頷ける。
天皇賞・春は過去6年連続で
18頭立てとなっており、
平坦コースでもあるので
ゴールドシップに向く舞台とは言いづらい。ただ、
菊花賞を勝っているだけに、まったくダメでもないだろう。三度目の正直となるか、二度あることは三度あるとなるか、注目したい。
これだけ得意と不得意がはっきりした馬は、予想する際に
“今回は条件的に合うのか?”と考えるだけでも面白い。友人は
アメリカJCC後に
「もう買わない」と言ったが、自分は今日も
ゴールドシップを買ったはずだと睨んでいる(笑)。もしかしたら、今年の
宝塚記念が多頭数になったらどうするか、今から考えているかも?