今年はafterまでしっかりと意識したい
文/編集部(W)、写真/森鷹史
福島牝馬Sが新設されたのは04年で、過去11年を振り返ると、
前走・中山牝馬S組は1年当たり3~9頭出走していて、
06年以外の10年で馬券圏内入り、
06&07年以外の9年で勝利している。同じようなメンバーで、小回り&右回りの芝1800mという似た条件で戦うからか、当初から
繋がりの強さを見せていた。予想する上で、このグループを無視することはセオリーに反すると言っても過言ではないだろう。
今年も例に漏れず、上位2頭(①着
バウンスシャッセ、②着
アイスフォーリス)は
不在ながら、③着
パワースポット、④着
ケイティバローズ、⑥着
グレイスフラワー、⑧着
オメガハートロック、⑨着
マイネグレヴィル、⑩着
ブランネージュ、⑪着ミナ
レットと、出走馬の半数近くに当たる7頭が
前走・中山牝馬S組。
そのうち、
パワースポット(1番人気)、
ブランネージュ(2番人気)、
ケイティバローズ(4番人気)、
グレイスフラワー(5番人気)が上位人気に支持され、今年も
前走・中山牝馬S組の馬券圏内入りは確定的だと感じた
ファンも多かったのではないだろうか。
ところが…
前走・中山牝馬S組は
マイネグレヴィルの④着が最高で、①着は3番人気
スイートサルサ(前走は
愛知杯③着)、②着は9番人気
リラヴァティ(前走は
四国新聞杯①着)、③着は13番人気
メイショウスザンナ(前走は
京都牝馬S⑨着)と、別路線組が馬券圏内を占めるという
いろんな意味で“波乱”の決着となった。
そんなレアケースの
福島牝馬Sにおいて、8回目の挑戦で待望の重賞初制覇を果たした
スイートサルサは、
中山牝馬Sを右肩跛行で取り消した
“幻の前走・中山牝馬S組”だった。
スイートサルサに関しては、「左回りのマイルでキレキレの
デュランダル産駒」というキャラクターが自分の頭にインプットされていて、実際、
福島牝馬S以前の③着以内はすべて左回りで、4勝中3勝は芝1600mで挙げていた(残り1勝は芝1800m)。
ところが、
前走・愛知杯では大外一気で③着、
福島牝馬Sでは小回り仕様のマクリ差しで①着と、それまで好走歴のなかった芝2000mや右回り&小回りコースで立て続けに好結果を出したのである。
好走エリア拡大=地力強化という方程式はあながち間違いではないだろう。鉄砲実績があるとはいえ、今回は取消明けで4ヵ月ぶりでもあったから、それで勝ち切った点も高評価に値する。
父デュランダルは4歳秋から5歳秋にかけて、G1で
①①②②①着と5戦連続連対を果たしていたが、娘
スイートサルサもこれで昨秋(4歳秋)から
①③①着と連続好走中。
充実期を迎えたいま、得意にしている左回りのマイルならG1でも…と期待が高まるというもの。
ヴィクトリアマイルでは、同年の
福島牝馬S組は
[0.1.1.36]と大苦戦していて、正直、
「福島牝馬Sの勝ち馬にヴィクトリアマイルの優先出走権を与えてもなあ…」とレース前は思っていたが、
スイートサルサなら納得。
ヴィクトリアマイルの勝ち時計は良馬場だとだいたい1分32秒台で、もっとも速かった11年(①着
アパパネ)でも1分31秒9。
スイートサルサは
13年長岡S(準OP、新潟芝外1600m)を1分31秒7で制していて、昨年の
ユートピアS(準OP、東京芝1600m)勝利時は1分32秒1だった。時計的には十分好走圏内にいる1頭だろう。
ちなみに、今回の勝ち時計1分46秒0は福島での
福島牝馬Sとしては、12年(①着
オールザットジャズ)の1分46秒1を抜いて最速タイムだった。
ペイシャフェリスが平均ペースで逃げたことが大きいが、
マイネグレヴィルが勝負所でスパートし、
リラヴァティが4角で先頭に押し上げるなど、各馬が早め早めの競馬をしたことも
好タイムを生み出した格好だろう。
昨年は4角3番手以内の3頭(①着
ケイアイエレガント、②着
キャトルフィーユ、③着
フィロパトール)が馬券圏内を占めるスローペースの前残り決着だったが、今年は気の抜けない場面の連続で、レースとしても見応え十分だった。あとは疎遠な関係にある
ヴィクトリアマイルで好走馬を送り出せるかどうか。関連性という点では、例年、
福島牝馬Sはafter(
ヴィクトリアマイル)よりもbefore(
中山牝馬S)のほうを意識しがちだが、
今年はafterまでしっかりと意識したいと思う。