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巧みなレース運びで初の親子制覇達成
文/安福良直、写真/川井博


今年の3歳マイル重賞戦線は、レースのたびに勝ち馬がコロコロ変わり、しかも穴馬ばっかりで「これは強い!」と思わせる馬がなかなか出ていない。2歳チャンピオンは牡牝ともに休養中だし、ここからダービーを目指そうかという大物も不在。実はダービー目標の馬がいるときの方が印象に残るレースになるものだけどね。

そんな状況で迎えた今年のNHKマイルC。注目すべきポイントがあるとすれば、同レース初の親子制覇がなるかどうか、といったところだったが、それは見事達成された。14年前の覇者クロフネの産駒のクラリティスカイが勝利。どちらかと言えば、11年前の覇者キングカメハメハ産駒による親子制覇の方に注目が集まっていたような気もするが、ここは先輩種牡馬の貫禄を見せた格好だ。

種牡馬対決という側面で見ると、クロフネVSキングカメハメハはどちらも好調で、見応えはあった。キングカメハメハは、桜花賞皐月賞と産駒が制覇し、リーディングサイアーの座をディープインパクトから奪うほどの勢い。一方のクロフネ産駒も、今年は中央のダート重賞(マーチSマイネルクロップ)初勝利に続いて、アップトゥデイト中山グランドジャンプを制覇。芸域(?)を広げたところで今日を迎えた。

キングカメハメハクロフネともに2頭出しながらも、レンイングランドが先行してペースを作ったチーム・クロフネに対し、ミュゼスルタンヤマカツエースとも待機策で受け身に回ったチーム・キングカメハメハチーム・クロフネの作戦勝ちだった、というところでしょうかね。

ただ、G1としては道中のペースは緩く、親子制覇以外の点で見応えがあったか、と言われると難しい。桜花賞ほど遅くはならなかったが、前半4ハロンは47秒2。後半が46秒3だったので1秒近く遅く、マイルの重賞としては超スローの部類。折り合いを欠いた馬や、待機策に賭けた馬にとっては力を出し切れない展開になってしまった。

そんな展開を味方につけたのが、勝ったクラリティスカイだ。同じチーム・クロフネレンイングランドにうまく先導してもらい、アルビアーノの直後につけたのが最大の勝因だろう。しかし、道中の走りを見ると、実は行きたがるのをなだめるのに精一杯。横山典騎手としても、ここは苦労したのではないかと思われるが、馬がマイル戦で豊富なキャリアを持っていたのが活きたようで、なんとかなだめきった。

そうなると直線は、前を行くアルビアーノを目標に追い出せばいいだけ。いちょうSを勝ったときの上がり3ハロンタイムより0秒1速い、33秒9の末脚で会心の勝利。思えば確かに、いちょうSと同じようなレースではあった。今日はいろいろなことがうまくかみ合った勝利とも言えるが、レース運びのうまさはこの世代でもトップクラスなので、今後もたびたびG1で上位争いをしてくれるだろう。クロフネ産駒の牡馬としては、フサイチリシャールアップトゥデイトに続く3頭目のG1馬で、なんとか後継種牡馬になってほしいところでもある。

②着のアルビアーノも、負けたとはいえ満足のいく競馬はできたと思う。ここまですべて逃げ切りで3戦3勝だが、特にこれといった強い相手に勝ってきたわけでもない。圧勝もあれば惨敗もあるかなと思っていたが、逃げずに2番手からの競馬で、直線も最後までしっかりと伸びていた。クラリティスカイには目標にされた分だけ負けた感じだが、戦法の幅も広げることができたし、収穫は大きいはず。桜花賞を見てもわかるように、この世代の牝馬に強い先行馬がいないので、無事に秋華賞を迎えればチャンス大だろう。

一方、ミュゼスルタンはペースも向かず、チーム・キングカメハメハのアシストも得られず、厳しい展開になってしまったが、それでも③着に来て意地は見せた。左回りではいい末脚を使えるので、新潟の関屋記念や東京の富士Sなど、3歳のうちに古馬のマイル重賞に挑戦してみるのもいいように思える。古馬重賞なら、もう少し速いペースになるのでレースがしやすくなるはずだ。

④着以下の馬は、あまり見せ場を作ることができず、消化不良に終わった馬が多かったようだ。このあたりはスローペース競馬の残念なところ。昨年のミッキーアイルとまではいかなくても、先行タイプの強いマイラーがいないとこの路線は盛り上がらない。この3歳世代、はたして今後こういう馬が現れるだろうか。現れないと「谷間の世代」と呼ばれてしまうのは確実かも。