これまでにない強さを見せたダコールの今後に注目
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
出馬表を見た瞬間に、なにかものすごい違和感を覚えて、考えること数秒ほど。
「ハンデ差が小さい、そして『.5』がいない!」。今年の
新潟大賞典、特別登録の段階では52キロや53キロの馬もいたが、いずれも
除外や
回避で、ゲート入りした各馬のハンデは54~57キロ。それも54キロは
マイネルディーン1頭だけで、16頭中15頭は2キロ差以内に収まっていた。東京10Rの
ブリリアントSが53~58キロに分散していたのとは対照的だ。
これだけなら、似たような実績馬が集まった混戦という話。ならば0.5キロで微妙な差がついても良さそうなのに、特別登録の段階ですら「.5」の馬はなし。条件戦や、オープンでも京都メインの
鞍馬S(最高56キロ)のように重ハンデ不在ならともかく、こちらは57キロまでいてのものである。
ちなみに、「.5」の馬は良く来ると言われることもあるが、10年以降のハンデ重賞で「.5」の好走確率が上下の「.0」より明らかに高いのは、55.5キロ
[2.1.2.5]くらいである(10頭すべて牝馬)。
ともかく、別定戦かなにかと勘違いしてしまいそうな、ハンデ差が小さく「.5」なしのこの一戦。混戦なんだか、はっきりしているんだか、
ハンデからはレースの全体像がイマイチ掴みづらい印象だった。
そんな中で上位人気を占めたのは、一応は軽量組になるハンデ55キロ勢。1番人気の7歳
デウスウルトは長期休養があった馬で、昨秋に
1600万を勝ち上がり、4~2走前の重賞はハンデ54~55キロで
②③②着。2番人気の
マテンロウボス、3番人気の
ラングレーは前々走で
1600万を勝った4歳馬と、ハンデ重賞路線では
「新顔」と言える馬たちだ。
これに続いたのは、一昨年のこのレースで
①③着だった
パッションダンスに
ダコール。そして11年の2歳王者
アルフレードといった、56~57キロを背負う6~7歳のベテラン勢である。
ゲートが開くと、各馬出方をうかがいつつの先行で、最初の1ハロンは13秒1と遅い入り。200mほどで
アーデントがハナに立って3~4馬身差に開いていったものの、1000m通過は61秒5、1200mは73秒9のスローペース。離れた後続はさらに遅く、ただでさえ混戦のハンデ戦でこの流れとなれば、直線は
大接戦の追い比べが予想された。
そのまま
アーデント先頭で直線に向くと、各馬とも馬場の内めを避け、3分どころから大外に広がっての追い比べ。そして、残り200mでまず
アーデントを捕らえたのは、日本では13年ぶりの騎乗になる
リサ・オールプレス(旧姓マンビー)騎手の
ナカヤマナイトだった。
ナカヤマナイト自身は13年の
中山記念を制した次走、1番人気に推されたこのレースで⑤着に敗れてから馬券圏外が続いており、
連敗がスタートしたレースで久々の重賞制覇かと思われた。
しかし、その内から鋭い脚を繰り出してきたのは、これまたびっくり
ダコールである。いや、ここ2戦
③②着で「びっくり」と言うのも失礼だが、なにせ10年の
東京スポーツ杯2歳S⑤着以来、重賞では14戦中10戦が②~⑤着で勝利のない馬。スローで普段より前に位置していたとはいえ、これまで後方待機でも出なかった、自己最速となる上がり32秒9の脚を繰り出し、見事に
重賞初制覇を飾ったのだった。
そして②着には大いに見せ場を作った
ナカヤマナイトがそのまま粘り込み、終わってみれば①着
ダコール、②着
ナカヤマナイトとも57キロの7歳馬。上位人気を占めた55キロ勢は
ラングレーの⑤着が最高と、
トップハンデのベテラン勢に軍配が上がる結果になった。
しかし、勝った
ダコールが②着と1馬身1/4差、そしてしんがりの
マテンロウボスは⑮着から1馬身半差だったが、②~⑭着は最大でも半馬身差で、この間のタイム差は0秒6。①着からしんがりでも1秒差と、ハンデの上下差が小さくても、きっちりハンデ戦らしい結果をもたらすのだから、
ハンデキャッパーもさすが、といったところだろうか。
また、そんなレースで②着以下を突き放した
ダコールは、
これまでにない強さを見せたと言えるだろう。これだけ重賞で上位に顔を見せながら、G2は過去3戦(
オールカマー⑨着、
日経新春杯⑩⑤着)のみ、そしてG1は
未経験の
ダコール。大ベテランがこの勝利をきっかけに、もうひとつ上の舞台で輝くことになるのかどうか、今後の走りに注目だ。