ストレイトガールは歴代の優勝馬の域に達する可能性も!?
文/浅田知広、写真/川井博
今年で区切りの10回目を迎えた
ヴィクトリアマイル。秋の
エリザベス女王杯は、今年が古馬混合になって20回目となるが、前後に牝馬も活躍する牡馬相手のレースがあり、女王決定戦というにはやや物足りないメンバー構成になる年も見受けられる。対して春は、3200mの
天皇賞へとはなりづらく、この
ヴィクトリアマイルに出走する実力馬が多い。
ただ今年は、昨年の
桜花賞馬ハープスターが
故障のため引退、繁殖入り(早々に
キングカメハメハと交配されたというニュースも)。そして、
エリザベス女王杯を制した
ラキシスは、昨年のこのレースで⑮着大敗を喫したこともあってか、
大阪杯から
宝塚記念直行で、
回避ということになってしまった。
その結果、上位人気を占めたのは、昨年の
エリザベス女王杯の②&③着馬
ヌーヴォレコルトに
ディアデラマドレ。そして、昨年の
桜花賞②着後は今ひとつに終わっている、2歳女王
レッドリヴェールという面々になった。もちろん、
オークス馬ヌーヴォレコルトの実績は一昨年当時の
ヴィルシーナ(G1で②着4回)を上回るが、全体としては厚みに欠ける印象もあったのは確かだ。
その
ヴィルシーナは一昨年の優勝後、
6戦連続⑦着以下から一変して連覇を達成。また12年の覇者
ホエールキャプチャは、その後
5戦連続ふた桁着順の大敗から、13年②着と変わり身を見せている。そんな流れから今年は、昨年②着の
メイショウマンボ(
5戦連続ふた桁着順)あたり…と思ったら、あまり人気を落とさず8番人気の24.5倍。まあ
ヌーヴォレコルトはいいとしても、
その他はなにが来てもおかしくない一戦となった。
そんなレースでハナを奪ったのは、「なにが来ても」という中にも入れなかった、しんがり人気・単勝300倍近い
ミナレット。このレースの前まで、芝コース5レースの勝ち馬はすべて上がり33秒台と、開催4週目を迎えても
良好な馬場状態を保つ東京コース。
「先行馬も怖いんだよなあ」とか、
「よりによって(穴騎手の)江田かよ!」とか思いながらながめていると、3コーナーで
ミナレットのリードは5馬身、6馬身と開いていった。
画面に表示された600m通過の参考タイム34秒3は、ここ3年よりやや速い程度。しかし、
ミナレットはここからもペースを落とさず11秒台前半を連発し、800mは45秒5、そして1000mは56秒9。その結果、マイル戦とは思えないほど先行勢がバラバラに分断された展開となり、
ミナレットが大きくリードを開いて4コーナーを通過した。
そして直線、
ミナレットを追ってじわじわと2番手から差を詰めたのは、これまた人気薄・12番人気の
ケイアイエレガント。なんかこれ見たことあるよ(03年の
NHKマイルCで、前がばらけた2番手から抜け出した
ウインクリューガー)という坂下で、人気の
ヌーヴォレコルトや
レッドリヴェールは好位で伸びひと息。出遅れを喫した
ディアデラマドレは鋭い脚を繰り出したものの、こちらは前半の差が大きすぎた。
大逃げを打った
ミナレットと、追う
ケイアイエレガントの差は、残り200mで2馬身ほど。いくらハイペースとはいえ後続との差は4~5馬身あり、これで前2頭の勝負かと思われた。しかし、ここに後続から一気に差を詰めたのが、昨年の③着馬
ストレイトガール(5番人気)である。ラスト1ハロンの時計は12秒2。前2頭が大バテしたわけではないにも関わらず、
ストレイトガールは1完歩ごとに差を詰め、最後は
ケイアイエレガントをアタマ差捕らえての差し切り勝ちとなった。
ストレイトガールは昨年、坂上の団子状態の中で前が詰まり気味になり、やや脚を余し気味での③着敗退。しかし今年は一転、前はバラバラ、遮るものなし。直線坂下では、前とあれほどの差がありながら仕掛けのタイミングを待つような場面もあり、初騎乗の
戸崎騎手が、まさに
「はかったような」差し切り勝ちを演じたと言えるだろう。
これで
ストレイトガールは、海外も含めG1で
[1.1.3.1]。冒頭で今年は「厚みに欠ける」などと書いてしまったが、この馬はスプリンターの印象が強かっただけで、歴代の優勝馬と並べても引けを取らないだけの実績を残しつつある。なにせ複数のG1を制した馬が多いだけに「並んだ」とまでは言えないが、
6歳のこの1年でそんな域に達する可能性もありそうだ。
そして、レースを大いに盛り上げ、
G1史上最高配当(3連単2070万5810円)も演出した②着
ケイアイエレガントと、③着
ミナレット。
ケイアイエレガントは
京都牝馬S優勝時に
「昨年(⑥着)以上も」と書いたが、そんな予想を大きく上回る、ほぼ勝利を手中にしたかという大健闘だった。
ミナレットは
江田照男騎手、参りました。いや、重賞で大激走するたびに
降参するのではなく、いつかはその
恩恵にあずかりたい。