約40年前とは対照的に、今年はダービーに出られたのに出なかった馬が制した
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
かつて、
ラジオたんぱ賞の頃は
“残念ダービー”なんて呼ばれていたレースだが、いまは
残念でも何でもないのかもしれない。今年の
ラジオNIKKEI賞は、
ダービーに出る権利を持ちながら出走しなかったアンビシャスが3馬身半差で快勝した。
アンビシャスはダービートライアルの
プリンシパルSを1番人気で制した。①着馬に
ダービーへの優先出走権が与えられるレースで、そこを勝利したのだから
“競馬の祭典”へ向かうのかと思われたが、早くに
回避が発表され、このレースに出走してきた。道中で行きたがる面のある馬で、2400mの
ダービーよりも
中距離路線を歩むことが選択されたわけだ。
今回のレースでの「メインレースの考え方」では、
アンビシャスはすべての好走ポイントをクリアして、適性の高さが感じられていた。O型コースが初めてだったが、450~460kg台の小柄なタイプで、
小回りコースもこなすんじゃないかと睨んでいた。
それでも「◎」ではなく、「○」にしたのは、
ハンデ戦となってからの過去傾向を重視したからだった。
ハンデ戦となってからの過去9年では、前走がOPの馬は前走③着以内だと[0.3.1.8]で、1番人気馬は[0.2.2.5]。善戦はするものの勝ち切れてはいなかったから、
何もこの馬から入らなくても……との思いが残った。しかし、これは、このレースが
“残念ダービー”だった馬の成績だったのだろう。
ダービーをはじめとした
春のG1に出走するために力を使い、ある程度の実績を残してきた馬は、この
“残念ダービー”に出走する頃には
余力を残していなかったのだろう。
それに対して今回の
アンビシャスは
ダービーを回避するという、これまでには見られなかった作戦で、
余力を残して出走してきた。いや、
余力を残してたというよりも、間隔を空けて調整され、道中での折り合いも付いて、
さらに成長した姿を披露した。過去の実績馬たちとは
臨戦過程が違っていたことを見抜くべきだったのだろう。
このレースを
1番人気で制したのは、05年の
コンラッド以来10年ぶりで、
ハンデ戦となってからは初めてだ。
3馬身半差というのは、
ハンデ戦となってからはもちろん最大着差で、
ラジオたんぱ賞や
日本短波賞という名称だった頃を含めても、珍しいほどの大きな差だ。
このレースで
3馬身半以上の差を付けて優勝した馬は、82年
アキビンゴ(3馬身半差)、77年
マルゼンスキー(7馬身差)、60年
ビツグヨルカ(3馬身半差)の3頭しかいない(
アンビシャスは4頭目)。
82年と77年は
不良馬場だったので、着差が付きやすい面もあったのだろう。
良馬場だと60年の
ビツグヨルカ以来となり……と普通に書いてますけど、
ビツグヨルカって何?という人も多いことでしょう。あまりに古くてよく分からないとも思うので(笑)、今回は
マルゼンスキー以来の衝撃ということにしておきましょう。
マルゼンスキーは
ダービーに出たくても出られなかったわけだが、
約40年の時を経て、
ダービーに出られたのに出なかった馬がこのレースを制したわけだ。そう考えると、今年は
競馬の在り方が変化してきていることを示す好例の年と言えるのかもしれない。
ハンデ戦となってからのこのレースの優勝馬は、その後に勝ち切れないケースが続いていて、OPクラスのレースをその後に勝利したのは、07年優勝馬の
ロックドゥカンブ(次走に
セントライト記念を勝利)まで遡る。
しかし、今年の
アンビシャスは
トップハンデ&1番人気で大きな差を付けて勝利したのだから、これまでの優勝馬とは
一線を画すべきことに異論はないはずだ。今後に
G1を勝てば、
ラジオNIKKEI賞(
ラジオたんぱ賞)勝ち馬としては
シンコウラブリイ(92年
ラジオたんぱ賞①着、93年
マイルCS①着)以来となる。果たして
アンビシャスはどのような活躍を見せるだろうか。
1番人気馬が強さを見せる一方で、2番人気だった
レアリスタは
最下位(⑯着)に沈み、
レアリスタと同じく2戦2勝だった
キャンベルジュニアは
ブービー(⑮着)となってしまった。O型コースが初めてというのは
アンビシャスと同じだったが、2戦2勝の2頭は
キャリアの浅さを露呈する結果となった。
レアリスタも
キャンベルジュニアも能力が高いことは証明済みで、もちろんこのままで終わってしまうようなことはないだろう。この2頭はともに
堀厩舎なので、厩舎の先輩・
モーリスのように再び輝きを取り戻すかどうか、注目したい。