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【対談・橋本広喜助手④(最終回)】31歳という若さでムチを置いたきっかけ
2015.7.29
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橋本広喜調教助手・元騎手…以下[橋]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]話をお聞きしていて、藤沢先生は馬の気持ちを見ているんじゃないかと思うんですよ。

[橋]よく「馬は生きているんだ。機械じゃないんだ」と言われましたね。

[西]当たり前のことなんですが、最近(横山)ノリさんとかと一緒に仕事をさせていただいて、再確認させられるのは、馬も人間と同じ個性があって、本当にいろいろな性格の奴がいるということなんですよ。プロの人に言う話ではないんですけどね。

[橋]ありますよね。でも、それは当たり前のことなんですが、意外と忘れられてしまったりするんですよね。

[西]失礼な言い方かもしれませんが、藤沢先生って馬の匂いがプンプンしてますよね。

[橋]本当に馬が好きなんだと感じます。とにかく馬の傍にいる人ですよ。よく「呼ばれる会合の8割、いや9割はそれほど意味ないものだ」という話をされました。そんな時間があれば馬の傍にいるのが自分の仕事だということなのでしょうが、僕自身はその言葉のお陰で、いま楽しい家庭生活を送らせていただいております(笑)。

[西]いやぁ、名言ですね。そういう意味では、藤沢先生と橋本さんは素敵な師弟関係のように思えます。今なかなかないですよ。

[橋]まあ、僕の場合は技術にそこまで信頼がありませんでした。何かあれば、岡部さん。前座は乗るけど、G1は岡部さんでしたからね。

[西]前座ですか(笑)。そんなときに、岡部さんを追い抜いてやろうとか、引っ繰り返してやろうという思いはなかったんですか。

[橋]もちろん思いはありました。でも、それが当たり前という洗脳もありましたからね。

[二人](爆笑)

[橋]周囲から言われて、「あっ、そうか」と思ったりしましたよね。でも、若手でG1を勝つような奴は良い意味で自分があって、我が強かったりするんですよ。いまになって、そういう部分がなかったと思います。

[西]ある意味優等生だったんですね。

[橋]いや、洗脳ですよ(笑)。

[西]そんな(笑)。そういえば、橋本さんは藤沢厩舎の馬でも勝っていますが、関西馬に乗っているイメージも強いんですよね。

[橋]藤沢先生が凄いのはそこにもあって、実は僕、小倉デビューなんですよ。同期は全員本場デビューなのに、僕だけ小倉でした。

[西]冬の小倉ですか。

[橋]厩舎の馬が遠征していくのに帯同する形で行ったんですが、「関西に顔を売ってこい」と送り出してくださったんです。

[西]なかなかないケースですよね。普通は本場開催が多いですから。ところで、橋本さんの重賞勝ちを見ていて、ワイルドブラスターも知っているんですが、ヤングエブロスは知りませんでした。

[橋]いまヤングエブロスの子供(タイキマーシャ)がうちの厩舎にいるんですよ。長い間競馬場にいると面白いですね。

[西]それは凄いですよ。何かいいですね。似ていたりするんですか?

[橋]そっくりなんですよ。性格も似ています。ただ、お母さんもスタートからトップスピードに乗っていく馬だったんですが、子供はお母さんよりは少し非力ですかね。

[西]それは助手の醍醐味じゃないですか?

[橋]これも縁ですよね。だから、何とか力になれればと思いますよ。

[西]いやぁ、面白いですよ、藤沢和雄論。本人がいないところでやることに意味がありますよね(笑)。

[橋]僕にとっては神ですから。でも、本当に楽しいです。馬乗りの話って良いですよね。藤沢和雄論ということで言えば、例えばネックストラップを常に持って行く。そうすれば、突然馬が何か驚いて暴れたとしても、ハミが当たらないですし、ひっくり返ることもないわけです。あとは、ステッキのお尻に差さずに持つ。それから、馬が何かに驚いたとき、人間に余裕がないと駄目なんですよね。よく「馬は上や、傍の人間に委ねているのだから、怒ってはいけない」という話もされました。

[西]当たり前に聞こえるけど、これがなかなか簡単にできていなかったりするんですよ。

[橋]走るのは馬ですし、頑張るのは馬なんですよ。それを忘れてはいけないですよね。

[西]最後にひとつお聞きしたいんですが、橋本さんは最高55勝していますよね。あれは関東で何位だったんですか?

[橋]7位でした。

[西]何年目ですか?

[橋]6年目(96年)でした。

[西]凄いですよね。そこから僅か数年後にはステッキを置かれています。急転直下となっていったわけですけど、こんなはずじゃないとか、そういう気持ちがあったんじゃないかと思うんですよ。そういうなかで辞められたわけです。しかも、決して乗る馬がいなくて、とかいう状況ではないかったわけですよ。

[橋]凄いところを聞いてくるね。

[西]すみません。

[橋]いや、いや。そうだね、ジョッキーがステッキを置くというのは、他の奴もそうみたいだけど、やはりあの勝った瞬間の快感が忘れられないんですよ。それは未勝利だろうが、重賞だろうが、変わらないものなんですよね。でも、僕はちょっと違っていて、最後の1勝のときに不甲斐ない勝ち方で勝ったからだったんです。ゲンパチミラクルという馬で、1200mだったんですが、詰まって、詰まって。馬を導いて勝たなければいなけないのに、馬に導かれて勝ったんですよ。そのとき、減量も確かに苦しかったんですが、なんて駄目なんだろうと思いましたし、「絶対負けない」という思いだけで追っていた以前の自分じゃないことに気がついてしまったんですよね。これでは迷惑をかけるし、悔しさがこみ上げてきたんです。僕自身、万馬券を演出するのが好きだったんですが、これでは無理だと思いました。

[西]いろいろな辞める騎手の人たちの姿を見てきましたし、お話もお聞きしました。でも、みなさん最後まで悩まれていますよ。

[橋]それは『自分は騎手だ』という思いというか、プライドだったりするんだと思います。僕の場合は、そういう気持ちではなくて、「絶対ハナ差では負けない」という思いだったんですけど、最後の騎乗はその姿とはかけ離れ過ぎていて、嫁さんに「俺ってダサいわ」と言ってステッキを置くことを決めました。

[西]お話を聞いていて、本当にそうだったんだぁと思いました。でも、55勝をしていた人が、僅か数年後にステッキを置くことって、それほど簡単じゃないと思うんですよ。数年前には輝いていたわけです。

[橋]そういう意味では、(柴田)大知は凄いと思います。耐えて、耐えて、耐えて、そしてG1を勝ったわけですよ。アイツが勝ったときには、もらい泣きしちゃいましたけど、そういう意味ではアイツほど僕は根性無かったんでしょうね。減量して、体をつくって乗っていましたけど、中身が無いというか、自分自身が持っているイメージのように乗れなくて、スカスカな感じだったんです。

[西]いやぁ、本当に貴重なお話をありがとうございました。もっとお聞きしたいんですが、明日も早いのですので、そろそろこのへんで。ありがとうございました。

[橋]こちらこそ楽しい時間をありがとうございました。

[西]必ず2回目、お願いします。



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