美浦のウッドチップコースの“回り”を簡単に変えられない理由とは
2015.8.11
少し前に、
“美浦のウッドチップコースで試験的に左回りを導入した”という報道をご覧になった方もいらっしゃると思います。
確かに、実際に何度か行われたようですが、その後は左回りでは行われていません。
そして、僕自身も騎乗していません。なぜかというと、追い切りを行う馬がほとんどいない火曜日のみ、ウッドチップコースを左回りとして、騎手と調教師、あとは馬場委員、通称白帽といわれる調教助手に限られるというルールだったからなんです。
乗った人たちとも話をしましたが、いろいろな意見があるようです。
「普通キャンターならば大丈夫」という人もいました。
ただ、そういう人たちも
「追い切りとなると……」と言っていました。やはり、いわゆる“速いところ”は危ないというのは、乗っていない僕自身も感じますよ。
なぜそう思うかというと、コース形態です。平坦な栗東に対して、美浦のウッドチップコースは、右回りで進むと向正面で一旦下って、4コーナーを回って直線では登り坂になっています。
これで逆に回るとなると、向正面で登って、4コーナーを回って直線で下り坂を迎えることになってしまいます。
もちろん対応する馬もいるでしょう。ただ、追い切りでは直線で加速していくわけですから、下り坂だと必要以上に加速することとなり、馬自身がバランスを崩してしまう可能性が高くなります。そうなると、危険度が増すことになります。
また、個人的には左回り、右回りについては、練習したからといって劇的に上手になるということはないと考えます。
確かに、バランス面で言えば、例えば右回りを10回したら左回りも10回、ということは大切です。特に新馬などは、デビューを目指す“回り”で追い切りを行うことはとても大切ですよ。
ただ、馬にも人間で言うところの“利き腕”があって、“回り”に対して得意、不得意があります。もちろん練習することは大切ですし、練習して対応はできるようにはなっても、得意になるかと言えば、僕自身はそうではないという感覚があります。
それと、“回り”でひとくくりにできない面もあり、同じ距離でも競馬場によって形態が違います。関東で左回りといえば東京競馬場ですが、東京のマイルはワンターンのコースです。
それに対して右回り、特に中山のマイルはおむすび型のようになっていて、最初のコーナーまで距離が短いなど、独特の特徴があります。
このふたつのコースは同じマイルでも全くレースの流れが違いますし、求められる能力というか、適性の違いがあるということなんですよ。
適性について判断するとき、単純に“回り”だけではなく、そういう部分の影響が出てくる可能性もあると思います。
東京と同じようなワンターンのマイルは、京都や阪神などがあります。これらは右回りですが、ひょっとしたら東京のマイルに適性がある馬が、それらの舞台に行けば対応できてしまう可能性もあるということです。
ウッドチップコースの話に戻りますが、確かに栗東は平坦で、左右それぞれの回りで調教を行うことができています。東西で同じにするためには、やはり美浦も平坦であるべきだと思います。先ほども言いましたが、今のままで美浦を左回りにしても、追い切りで直線が下り坂だと危険度が高くなりますから。
今後はJRAとの話し合いで方向性が決まっていくということですが、まずは安全面を重んじていただければと、個人的には思います。
※西塚助手への質問、「指令」も募集中。競馬に関する質問、素朴な疑問をお送り下さい! 「こんな人と対談してほしい」などのリクエストも歓迎です!
|