強い競馬で「G3級」から「G2級」へ昇格、次は!?
文/編集部(W)、写真/川井博
出走馬15頭中9頭が重賞勝ち馬で、そのうち、
トーホウジャッカルが1番人気(2.9倍)、
ラキシスが2番人気(3.4倍)、
ラストインパクトが3番人気(4.6倍)で、前走でG1を走っていた3頭が上位人気に推された。
トーホウジャッカル、
ラキシスはG1馬でもあり、過去10年の勝ち馬10頭中6頭はその前後でG1を勝っていて、
格がモノを言いやすい札幌記念らしい売れ方だ。
続いて、4番人気(9.6倍)は
函館記念で重賞初制覇を果たした
ダービーフィズで、鞍上の
岩田騎手が
CBC賞(
ウリウリ)、
函館記念(
ダービーフィズ)、
函館2歳S(
ブランボヌール)、
レパードS(
クロスクリーガー)、
エルムS(
ジェベルムーサ)とJRA重賞で
騎乗機会5連勝中とくればその人気も納得というもの。そして、5番人気(11.1倍)は同じ
小島太厩舎の
ディサイファという並びだった。
ディサイファは今年、
中日新聞杯①着、
エプソムC③着と重賞で好走していたが、G1&G2は昨秋から今年初めにかけて4戦して
④⑫⑮⑤着。
毎日王冠(④着)は
スピルバーグ(③着)とハナ差、
ロゴタイプ(⑥着)には先着していて、G1馬と互角に渡り合っていたから、
「G2級」の実力は感じさせつつも、結果としては表れておらず、
「G3級」というイメージを払拭できずにいた。これが微妙に人気に影響したのかもしれない。
ところが、
ディサイファはレースでまるで本命馬のような立ち回りを見せた。
大方の予想通り、
トウケイヘイローが淀みないペースで逃げ、1000m通過は58秒9。Cコース替わり1週目で、内外で枠順の
有利不利はあったと思うが、遅すぎず速すぎずで、ペース的には紛れは生じにくいように思えた。
そんな中、
ディサイファは眼前に
ラキシス、背後に
トーホウジャッカルと、G1馬2頭に挟まれるポジションでレースを進める。レース後の
四位騎手曰く、
「小島(太)先生からも『積極的に乗ってくれ』と言われていて、トウケイヘイローが行くだろうから2番手くらいからでもと思っていました」とのことで、
陣営としては予定通りだったのだろうだが、
ディサイファの馬券を買っていた人の多くも、このポジションには驚かされたのではないだろうか。
G1馬2頭に挟まれたのは偶然だろう。ただ、鞍上の
四位騎手は特に気にする素振りも見せず、
ディサイファのレースに集中しているようだった。
4コーナーではG1馬2頭を従え、直線入口で
トウケイヘイローを捕まえに行く、これまた積極的な立ち回り。残り1F付近で先頭に立つと、直後から
ダービーフィズ、
ラキシス、
ラストインパクト、
ハギノハイブリッド、
ヤマカツエースが押し寄せる。だが、先頭は譲らない。
ゴール前では、残り100mを切ったあたりから外に持ち出された
ヒットザターゲットが矢のように伸び、内ラチ沿いから
ダービーフィズも迫るが、これらをすべて凌ぎ切って
G2初制覇となるゴールに飛び込んだ。
ディサイファはこれで北海道の洋芝では
3戦3勝。洋芝適性の高さも勝因のひとつと思われるが、それでも今回のレースぶりは、レース後の
四位騎手の
「強かったです」というコメントがすべてを物語るのではないだろうか。
これで
ディサイファは
「G2級」であることを結果で証明してみせた。次なる問題は
「G1級」かどうかだが、遅咲きの
ディープインパクト産駒には重賞初制覇をG1で果たす
スピルバーグがいたり、条件戦から一気に
安田記念クビ差②着まで登り詰めた
ヴァンセンヌがいて、どれだけ強くなっているのか、能力を計り兼ねるケースもある。
だが、そこは
信頼と実績の札幌記念。前記した通り、過去10年の勝ち馬10頭中6頭はその前後でG1を勝っているだから、
「G1級」の器である可能性は決して低くはないだろう。昨年はG1という壁に跳ね返された
ディサイファだが、今年はどうか。秋が楽しみになってきた。
一方、G1馬の
ラキシスは⑤着、
トーホウジャッカルは⑧着と馬券圏外に敗れたが、
ラキシスは0秒2差なら悲観することもなさそう。馬体を絞る予定で、過去最多体重だった
宝塚記念(478kg)から2kg減というのは誤算だったかもしれないが。
8連対は450~460kg台で記録しているので、この後は馬体重をチェックしたい。
トーホウジャッカルも0秒5差で、着順ほどは負けていないが、早々と手応えが怪しくなって勝負圏内から脱落したレースぶりは物足りない。いまにして思えば、
宝塚記念(④着)はスローペースで地力勝負にならなかったことが幸いした面もありそう。もともと使って良くなっていたタイプであり、休養期間が長かっただけに、まだ
菊花賞を制した頃の
デキには戻り切っていないのかもしれない。巻き返しを期待したい。