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【対談・上野翔騎手④(終)】昔と今の馬の違いは、“息の長さ”にある
2015.9.30
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上野翔騎手…以下[上]
西塚信人調教助手…以下[西]

[上]僕の印象なんですが、昔の馬と今の馬の違いは“息の長さ”だと思うんです。今は息の長い活躍をする馬が減ったように感じるんですよね。

[西]それは確かにあるね。

[上]その理由として、よく馬場の高速化について言われます。もちろんそういう部分もあるのでしょうが、2歳時の乗り込み量にもあると思っているんです。

[西]なるほど、なるほど。

[上]プロの野球選手やサッカー選手たちの多くは、幼い頃から鍛えられていることがほとんどです。小学校、中学校、そして高校とやってきた人に対して、高校生くらいから始めた人では、同じ年齢であっても5年後の体力には差があると思うんですよ。

[西]言いたいことはわかる。

[上]一気に走る能力はあるかもしれませんが、続けてそのパフォーマンスをすることができなかったりするんですよ。

[西]そういうことで言うと、昔からのやり方として、角馬場、Aコースでふた回りダクを踏むスタイルがある。実は、それだけでもまあまあの距離になるよね。

[上]なりますね。

[西]今はそういう風景をみかけなくなった。それだけ長めを乗らなくなったということだよね。

[上]僕がデビューした頃は、栗東でもそういう厩舎がありましたよ。

[西]そう、あったんだよね。昔、境勝太郎先生のところは、Aコースを3周か、もしくは直接Dコースに出てダクを半周踏んで、そして1周半か2周乗る。かなりの距離ですよ。

[上]栗東でも松田博資先生は、美浦の大外くらいあるDコースで1周してから、2周目に追い切りをしたりしていました。心臓には相当負担がかかっているはずですよ。

[西]あ、引退された白井先生も追い切りはマイルでやったりしていたよね。

[上]そうでしたね。

[西]長めを乗って、それを乗り越えられるというのは、ひとつの目安になるというか、大事なことだと思うんだよね。

[上]基礎体力をつけるということにおいては、とても大事だと僕も思います。

[西]インターバルトレーニングの効果ももちろんありますし、僕自身も良いと思っている。ただ、そこには人間の欲目という部分もあると思う。今は坂路からウッドという流れがあるけど、それには両方の効果を得たいという感覚が強かったりもすると思うんだよ。そういう意味では、先程言っていた栗東の逍遥馬道を歩くことで、長めを乗るのと同じような効果がプラスされているのかもしれないね。

[上]それはあると思います。だから、坂路1本でも走ることができるんでしょうね。

[西]あ、そういえば古馬でも、初めて栗東に行って逍遥馬道に行ったら歩けなかった馬がいたと聞いたことがある。

[上]それはあり得る話ですよ。本当に凄いですし、そのくらい違いますから。逍遥馬道に入るのを嫌がる馬がいるんですから。

[西]ははは。そうなんだ。美浦ではコースの入り口でいるけどね。坂路はよく言われるけど、逍遥馬道はそこまで言われていないよ。なるほどね。

[上]逍遥馬道の効果はかなり大きいと思います。

[西]そういうことで言えば、強弱はもちろん、それぞれ1頭1頭に合わせてコースを変えたりと、それぞれの特別メニューで調教が行われるのが理想なんだよ。現実的には、なかなか難しいけど。

[上]あと、馬は元々暑さに弱いわけですから、暑い時期は1時間も運動しなくても良いと思ったりもするんですよね。

[西]人間の“まだ足りないんじゃないか”という心理かもしれないよね。

[上]それと時期というか、段階もあるように思います。適切かどうかは別として、昔は2歳時にソエが出たら、あえて焼くことで刺激を与えたり、調教を継続することで痛みを鈍化させるなどの対処法が取られました。でも、いまはより刺激がないチップやポリで調教をするようになって、結局は3歳や古馬になってからソエが出たりしてしまうんでしょうね。人間でもそうですが、刺激を与えて強くすることは必要でしょうし、あとは人間がその限界というか、“ここまでなら大丈夫”ということを見極めるかではないでしょうか。馬は口を利けないわけですから、そここそ携わる人間に求められている部分でしょう。

[西]そうだよ。平地でもそういう部分を騎手の人たちが気にして乗っているけど、障害だと余計にそういう部分が求められるよね。

[上]よく障害をやると馬が大人しくなるというような言い方をされます。それは障害を飛ぶことによって馬が自然と大人しくなるのではなくて、障害騎手たちが週に2日、必死にいろいろなことを教え込んでいくからなんです。確かに、障害を飛越しなければなりませんので、馬の意識が平地よりは人間に向くということもあるのですが、これをしては駄目、それはこうするんだよ、と、教え込んでいるからこそであって、自然とはできるようになりません。

[西](横山)義行さんをはじめ、蓑島とか宗像さんなど、障害騎手の人たちと一緒に仕事をさせていただいてきていますが、本当にそうだと思うよ。みんな、それぞれに馬に対しての考えがあって、それがまた無茶苦茶ではなかったりするんですよね。

[上]そういうところはありますね(笑)。

[西]また、障害騎手の人たちは、そうやって馬を教えて、我々の言い方をすれば“つくっていく”のが好きな人が多い。

[上]“馬を良くしたい”“何とかしたい”という思いを持っている人たちばかりですよ。口では「何ともならない」とかいいながら、馬場に出ると、まさに精魂込めている感じで、夢中になっていたりするんです。

[西]ブッチゃけてしまうけど、年に1頭か2頭、障害馬に乗るだけの厩舎であっても、毎日その厩舎の攻め馬に乗っていたりするわけですよ。普通ならば腐ってしまっても不思議じゃないのに、それぞれの馬について一生懸命に考えて乗ってくださるんです。そこは本当に凄いと思うし、教えられる部分だったりするんだよね。

[上]馬に乗ったら真面目なんですよね。そういうことで言っても、僕たちは恵まれていると思うんですよ。

[西]どういうこと?

[上]先ほど義行さんの名前が出ましたが、その義行さんと一緒に同じ馬場で乗ることができるんです。確かに馬は違いますが、技術や馬との接し方、そしてそれ以前にトップだった人たちから受け継がれてきている部分を肌で感じて、見ることができるというのは何事にも代え難い財産なんですよ。いろいろ聞いたりもできますし、そういう環境は尊いものです。

[西]職人の深みというか、凄さってあると僕自身痛感させられている1人ですけど、そこを忘れてはいけないと思うんですよ。いやぁ、上野、頑張ってよ。

[上]もちろんです。

[西]やはり、中山グランドジャンプが目標かな。

[上]中山グランドジャンプと大障害の両方です。

[西]あっ、そうだ。取ってみたいんだね。

[上]取ってみたい。乗っている以上チャンスは0ではないですし、あとは取れる馬に乗せてもらったときに、取れるように自分自身の技術を磨いておかなければならないです。

[西]そうそう。あと韓国はどうだったの? なんか切っかけがあったの?

[上]父が以前育成牧場をやっていまして、その頃に知り合った韓国の調教師さんから声をかけていただいたのが最初です。日本で成績を残せていなかったので、切っかけになればと言っていただいたんです。

[西]あっ、そうだったんだね。期間は3ヵ月だったけど、もっと乗っていようとは思わなかったの?

[上]正直、思いませんでした。

[西]言葉の問題だったりしたのかな?

[上]ブッチャけ食事です。どうしても馴染めなかったですね。

[西]そうだったんだね。レベルとしてはどんな感じなの?

[上]僕個人の感覚としては、初期馴致ができていない感じですね。ですから、それを最初から教えていかなければならないわけですよ。ただ、先程ありましたが、言葉が通じないということで、僕自身の考えが伝わりづらく、相手の考えもわかりづらかったりもしました。そこは僕自身の語学の勉強不足で、僕がいけないところなんですけどね。でも、それよりは食事が駄目でしたね。

[西]それは余程だったんだね(笑)。

[上]自分で料理をしたりもしていたんですが、毎朝調教が終わった後はそこで食べていると、すべてが同じ味に感じてきてしまったんです。

[西]えっ、同じような料理なの?

[上]違いますよ。いろいろな物を出してくださったんですが、味が同じように感じてしまったんです。1ヶ月半くらいが過ぎたときに、これは厳しいと思いました。ファストフードは日本が美味し過ぎます(笑)。

[西]たかが食べ物だけど、されど食べ物だよね。あっ、こんな時間だよ。

[上]明日も早いですからね。

[西]いやぁ、今回は本当にありがとうございました。中山グランドジャンプと大障害、勝ってくれることを願っています。またぜひ話を聞かせてください。ありがとうございました。

[上]ありがとうございました。



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