新たな“怪物”と認定してもいいのでは
文/編集部(M)、写真/森鷹史
ノンコノユメは
不思議な馬だ。
ジャパンダートダービーまで8戦して掲示板外はなく、唯一の馬券圏外となった
伏竜S(⑤着)の時も含めて、JRAのレースでは
上がり3Fのタイムが2位以下になったことがない。
ジャパンダートダービーでの上がり3Fもおそらく2位以下ではないだろうから、
8戦すべてでメンバー中最速の上がりを計時しているはずだ。
誰もがその
素晴らしい末脚を知っているし、
強さを認めている。それなのに、なぜか
一度も1番人気に推されたことがない。不思議なものだ。
みんな口々に
「凄い末脚だ」と賞賛するものの、いざレース前になると、
今度は届かないんじゃないかと不安を感じてしまう。それでも、
きっちり届く。今回の
武蔵野Sで
重賞3連勝となったが、いずれも
2番人気での差し切り勝ちだった。
芝であれば、
ディープインパクトにしろ、
オルフェーヴルにしろ、差し・追い込みタイプが
1番人気に推され続けることはよくあるが、
ダートでは
ゴールドアリュールや
トランセンド、
エスポワールシチー、
ホッコータルマエ、
コパノリッキーなど
先行型の方が人気を集めやすい。
近年のダート戦線において、差しタイプで上位人気となった強豪としては
ウイングアローがいるが、同馬は古馬になってから
ダートG1(Jpn1)で10戦しているものの
1番人気に推されたことは
一度しかなかった。その間、[2.3.1.4]という成績だったから、ダートでの差しタイプが人気を集めづらいのは
宿命なのだろう。
ユニコーンSでは、ドバイ帰りの
ゴールデンバローズが単勝1.5倍の圧倒的1番人気に推され、
ノンコノユメは中4週の臨戦ながら
2番人気(単勝4.6倍)だった。小雨が降る中、
稍重馬場で行われ、追い込み脚質の馬にとっては脚抜き良い馬場が
不利になるだろうとも思われたか。それでも強烈な末脚で、
2馬身半差で快勝してみせた。
続く
ジャパンダートダービーは、
初距離(大井ダート2000m)に加えて初の
ナイター競馬で、馬場はさらに悪化して
不良馬場だった。
兵庫チャンピオンシップを9馬身差で圧勝した
クロスクリーガーに1番人気を譲ったが、
ノンコノユメはこれまた後方から追い込んで
2馬身半差を付けた。
今回の
武蔵野Sは、初の
休み明け(4ヶ月ぶり)に加えて
斤量58kgを背負っていた。「メインレースの考え方」に記した通り、東京ダートの重賞で斤量58kg以上を背負って優勝した馬は
89年根岸Sの
ダイナレター(58kg)まで遡り、さすがに今回はこたえるかと思ったのだが、最後の最後に
タガノトネールをハナ差だけ交わして優勝した。
東京ダート1600mでのレースは今回が5戦目だったが、その走破時計は
1分40秒3→
1分38秒4→
1分36秒4→
1分35秒9→
1分34秒7で、走る度に更新している。昨秋にデビューした時は減量特典騎手が騎乗して、
斤量52kgで
1分40秒3というタイムだった。それが1年経ち、
58kgを背負って
1分34秒7という芝のような時計で勝つのだから、
末恐ろしい。
ノンコノユメは新たな
“怪物”と認定してもいいのではないだろうか。
ノンコノユメを管理する
加藤征調教師は
「この馬にはいつも驚かされる」とコメントしていて、その思いはファンも同じだろう。決してその実力を見くびっているわけではないのだが、
厳しいと思われる条件が存在してきた。それでも、
ノンコノユメはそれをことごとくクリアしてきた。この馬の
伸びしろは、いったいどこまであるのだろうか。
馬券圏外となった唯一のレース(
伏竜S)が14頭立てでの
大外枠で、③着となったレース(500万)が
7枠だったから、
外枠では結果が出ていない(7~8枠では[0.0.1.1])とは言える。しかし、この脚質で外枠が影響するとも考えづらく、捌きづらくなる
多頭数が影響しやすい面があるのかもしれない。
12月6日の
チャンピオンズCはおそらくフルゲートの16頭立てだろう。中京ダートは意外に
差しが届きにくく、またレース前には厳しいという条件が揃う可能性がある。それでも
ノンコノユメは
大外から鋭く伸びてくるのではないだろうか。
チャンピオンズCでは、古牡馬(57kg)よりも1kg軽い
56kgでの出走になる。
1番人気はまた先行型に譲ることになるかもしれないが、計り知れないその
末脚に賭けてみるのも悪くないように感じられる。