超ハイペースとなって豊富な経験が活きた
文/編集部(M)、写真/森鷹史
JRAで唯一の
ダート1200m重賞である
カペラSは、毎年
ハイペースになりやすいレースで、今年は快速馬が揃い、
道悪(重馬場)にもなって拍車が掛かった。当然、速く流れるだろうとは想像していたが、まさか
ここまで速くなろうとは……。
シゲルカガと
エーシントップが譲らず、前半3Fは
32秒5という
超ハイペースになった。
今年の
芝1200m戦では前半3Fが32秒台となったことが
10回あり、重賞では
北九州記念(勝ち馬
ベルカント)で記録されている。
北九州記念の前半3Fは
32秒7だった。
北九州記念よりも速く流れたレースは今年だと2回で、8月8日の小倉7R
未勝利戦(
32秒6)と同日の小倉10R
筑紫特別(
32秒5)だ。芝を含めても前半3Fの最速タイムは
32秒5で、今年の
カペラSはそれと同タイムだったのだから、いかに速かったかが分かるだろう。
これだけの
超ハイペースとなり、連対圏に入ったのが
騎手生活27年目の
内田騎手(
キクノストーム)と
同31年目の
柴田善騎手(
カジキ)だったというのは、ある意味で
必然だったんじゃないだろうか。③着は騎手生活13年目の
石橋騎手(
マルカフリート)だったが、こちらは馬(
マルカフリート)が
競走馬生活8年目のベテランだった。
豊富な経験が活きたレースだった。
調べられるだけ調べてみたところ、JRAの
ダートで前半3Fが32秒台となったことは21回あったが(90年以降を対象)、最速タイムは
32秒7だった。第1回の
カペラSを含めて前半3Fが
32秒7となったレースは4回で、いずれも
中山ダート1200mで記録されている。
スタートしてから下りが続く
中山ダート1200mはペースが上がりやすいのだが、今年の
カペラSは従来の記録を
0秒2も上回ったのだから、このコースにおいても
特別だった。もしかしたら、騎手生活27年目の
内田騎手も31年目の
柴田善騎手も、
未体験のペースだったかもしれない。G1レースが行われた
香港や
阪神に行かず、
中山で今年の
カペラSを目撃した人は、
後々まで自慢してもいいと思いますよ(笑)。
前半3Fが
32秒7で流れた第1回の
カペラSは、後方待機の
ビクトリーテツニーが差し切り、②着にも後方から追い込んだ
スリーアベニューが入った。今年も優勝したのは追い込みを決めた
キクノストームだったし、③着まで差した
マルカフリートは
スリーアベニューと同じ
アフリート産駒だったから、競馬ってよく出来ているなあと思いますね。
ハイペースとなれば追い込み馬が台頭するのは普通のことで、それを考えれば
4番手追走からクビ差②着となった
カジキは、
相当に頑張ったと言えるだろう。
カジキは
サクラバクシンオー産駒で、父からスピードを受け継いでいるのだろうが、母(
エターナルハピネス)が父
ブライアンズタイム×母父
サドラーズウェルズという配合で
スタミナが補完されているのだろう。素晴らしい配合ですね。
優勝した
キクノストームも母(
シラー)が父
Fabulous Dancer×母父ミルリーフ系(
Mille Balles)で、
短距離でのスタミナがあるのだろう。そうでなければ、後方に待機していたとはいえ、最後にあれだけの末脚は使えないはずだ。ちなみに、③着の
マルカフリートは母の父が
ダービー馬の
タヤスツヨシ。
カペラSは第1回からずっと
距離短縮馬が優勝していて、今年もそれは継続されたし、②着にも③着にも
前走で1400mを使われていた馬が入った。スピードだけでは押し切れないのが
カペラSで、この傾向は来年以降も続くだろうし、今年④着以下に敗れた馬たちは
良い経験になったのではないだろうか。
1番人気に推された
エイシンヴァラーは1200m戦が前走の
西陣S(①着)だけで、中距離も使われてきた馬だけにスタミナを問われてもある程度は対応できるのではないかと思っていたが、
前走より2秒近くも速いペースになっては
戸惑うなという方が無理があっただろう。
エイシンヴァラーの鞍上は2年目の
石川騎手で、同騎手をはじめとして今回は
鞍上も馬も若い人(馬)が多くいたので、良い経験となるのではないか。前半3Fが
32秒台前半になるダート戦はそうそうは起こらないだろうから、馬も人も今後は少々のハイペースになっても
面食らうことはないだろう。