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リオンディーズは2歳王者と呼ぶにふさわしい存在
文/山本武志(スポーツ報知)、写真/森鷹史


今年の2歳王者決定戦は例年と雰囲気が違っていた。すべてはエアスピネルに騎乗する武豊騎手JRA平地G1完全制覇がかかった一戦であったということに尽きる。前週の香港Cエイシンヒカリで制し、大記録達成への機運はどんどん高まっていった。栗東では本来、2歳G1で行われない共同記者会見もエアスピネル1頭だけ、特例として行われたほどだった。

JRA平地G1完全制覇。ひと言で言えば、とんでもない記録である。

一昨年のマイルCS(トーセンラー)でG1・100勝を達成するなど、競馬界の記録を次々と塗り替えてきた第一人者は例年、クラシック戦線でも有力馬に騎乗しているが、なぜか朝日杯FSには縁がなかった。

実は1番人気馬に騎乗するのはブレイクランアウトの08年以来、2度目。当時は故障からの復帰明けで「異常人気」となった印象も強い。12年にサダムパテックマイルCSを勝ち、最後のピースを残してから、実に3年の月日が経った今年、単勝1.5倍と圧倒的な支持を受けたエアスピネルで記録達成へ臨むことになった。

武豊エアスピネルは道中、中団からしっかりと折り合っての追走。直線では追い出しをできるだけ我慢して、ようやくラスト2ハロン手前から追い出した。武豊のアクションに俊敏な反応で加速すると、後続との差は一気に広がっていく。

しかし、だ。大外から1頭だけ、すごい勢いで飛んでくる。1戦1勝での参戦だったリオンディーズ。出遅れ気味のスタートで最後方の追走だったが、ラスト1ハロンからは完全に一騎打ち。2頭で後続を4馬身離したが、最後は追うものの強み、追われるものの弱みが出たか。ゴール前で測ったようにリオンディーズエアスピネルを差し切り、2歳王者の座に輝いた。

母に日米オークス馬シーザリオ、兄にジャパンC菊花賞を制したエピファネイアを持つ角居厩舎ゆかりの血統馬。デビューから29日目でのG1制覇スティンガー98阪神3歳牝馬S(当時)と並ぶ最速タイ記録だ。

「すごい馬。本当にいい馬。パワーがある」と笑顔のM.デムーロは今年のJRA重賞10勝目となった。その中でG1・4勝と大一番で手綱さばきがさえ渡る名手の横で、角居調教師が満足そうな表情を浮かべている。角居厩舎もこれまでJRA重賞67勝中、実にG1・23勝と大舞台での存在感は際立つ。

この二人でサンビスタチャンピオンズCフルーキーチャレンジCに続き、3週連続での重賞制覇。まるでこの2週のVTRを見ているようなレース後の光景。かつてはドバイワールドCヴィクトワールピサで制した名コンビよる激走は必然と思える要素が十分に詰まっていた。

今年の2歳牡馬はハイレベル―。その言葉を何度も聞いてきたが、新馬勝ち直後の馬が2歳王者決定戦を制してしまった。意外にレベルは高くないのか。そんな疑問が一瞬、頭をよぎった。

ただ、冷静に考えると、この時点で結論づけるのは余りに早計だ。昨年から牡馬に関してはこのレースとともに、ホープフルSが暮れの大一番として位置づけられるようになった。実際にアドマイヤエイカンブラックスピネル、関東で素質馬と評判のハートレーなどがスタンバイしている。

今回はフルゲート割れだった上、常にクラシック戦線を席巻するディープインパクト産駒が1頭もいなかった。まだ、今回出走しなかった大物候補はたくさんいると考えていいだろう。個人的には松田国厩舎スマートオーディン藤原英厩舎シルバーステートが激突する共同通信杯は注目の一戦だと思っている。

ただ、完璧な立ち回りを見せたエアスピネルを素質だけでねじ伏せたリオンディーズ2歳王者と呼ぶにふさわしい存在。そして、何よりまだまだ大きな「伸びしろ」を秘めている。来春、3歳牡馬はどんな勢力分布図になっているのか。今後も注目して、見守っていきたい。非常に興味深い世代だと思っている。