今年もG1に繋がるのかどうか、上位2頭の今後の走りに注目
文/浅田知広、写真/川井博
今年で30回目を迎えた3歳牝馬の重賞・
フラワーC。実は、
当方が本格的に競馬を見始めてから今年の秋で30年ということで、なんとなく親しみを感じるような、しかし馬券はあまり当たらないのでそうでもないような、そんなレースだったりする。
この30年、創設からしばらくはあまりG1に繋がらなかったが、10年と少し前、02年のスマイルトゥモロー(
オークス①着)あたりから関連が強まり、04年ダンスインザムード(
桜花賞①着)、05年シーザリオ(
オークス①着)、06年キストゥヘヴン(
桜花賞①着)、08年ブラックエンブレム(
秋華賞①着)と、
後のG1馬が優勝馬に名を連ねている。
そして、ここ2年はバウンスシャッセが
オークス③着、アルビアーノが
NHKマイルC②着。勝てはせずとも馬券には絡み、まずまずのレベルだった。
ところが今年。まず登録の段階で、前走で500万を勝っていたのが
ゲッカコウ1頭だけで、重賞③着以内は皆無。一応、
コスモス賞③着以来のシャクンタラー、500万③着のコルコバード、パールコードあたりは、ここを勝てばG1の有力候補っぽくなる成績だったが、この前走③着組がまとめて
除外されてしまったのだ。
新馬~
未勝利③②①着の
エンジェルフェイスが抽選を通過して1番人気、そして前記
ゲッカコウが2番人気には推されたものの、
とにかく大混戦、といった印象だ。
先手を奪ったのはその1番人気の
エンジェルフェイス。1~2コーナーで2馬身ほど抜け出し、馬群は少しばかり縦長気味。折り合いを欠く馬はほとんどなく、一見すると平均ペース以上かと見受けられた。しかし、画面に表示された1000m通過の参考タイムは61秒4でスロー(実際は61秒5)。
エンジェルフェイスにとっては
絶好の展開だ。
一方、2番人気の
ゲッカコウ。外枠だったここ2走は向正面で動いて好走していたが、内枠の今回は、先行勢を前に見て中団で脚を溜める形。こちらも手応えよく前を射程圏に入れてはいたが、勝ち負けに絡むにはなにせペースが遅かった。
エンジェルフェイスは後続を引きつけ、馬ナリのまま4コーナーを通過。その手応えのわりには、追い出されてからの伸びはひと息だったが、追撃する各馬も同じような脚色だった。ゴール前で内からようやく
ゲッカコウが脚を伸ばし、中から
ギモーヴ、外からは
ウインクルサルーテと
ハービンジャー産駒2頭も迫ったものの、この追撃を余裕をもって抑えて2連勝で重賞タイトルを獲得した。
前走に続く逃げ切りで連勝を飾った
エンジェルフェイス。阪神外回り1800mで勝利を挙げた前走は、直線入口からの200mで11秒2の脚を使い、後続を一気に突き放した。そして今回はあまり目立たなかったが、馬ナリで回ってきた4コーナーから直線前半で、やはり11秒3の脚を繰り出している。
最後にもうひと押しが欲しい感もあるものの、前々から反応良く速い脚を使える持ち味を活かせれば、G1の舞台でも見せ場を作ったり、あるいは展開ひとつでそれ以上の結果も期待できそうだ。
ちなみに全姉は、同コースの
中山牝馬Sを12年に制したレディアルバローザで、半姉キャトルフィーユは12年の
フラワーCこそ⑤着だったが、14年の
中山牝馬Sで②着。レースこそ違えど、
中山芝1800mと縁のある血統と言っていいだろう。
ただ、G1となると、レディアルバローザが11年の
ヴィクトリアマイル③着。そしてキャトルフィーユは14年の
ヴィクトリアマイルと
エリザベス女王杯で⑤着。どちらも多くの重賞で上位を争った馬だが、
ビッグタイトルとは無縁だった。しかし、
エンジェルフェイスは姉たちよりも早く3歳春にして重賞初制覇。その点からも、もうひとつ上が狙えそうな印象だ。
そして②着の
ゲッカコウは、今回は内枠もあって普通の競馬。レースを見ている分には派手な展開を作ってくれた方が楽しめるが、こういった形のほうが安定感はある。勝ち馬とは動き出す場所こそ違えど、ゴーサインを出せば一気に行けるタイプだ。こちらは祖母チューニーが、03年当時中山芝1800mのオープン特別だった
ターコイズSの優勝馬。そして03年の
オークスでは、スティルインラブの②着に食い込んでいる。
この2頭、姉と祖母を比較すると
ゲッカコウの方が目先のG1には近い感もあるが、ともあれ人気馬が人気通りに①②着を確保。その結果、レース前の印象に比べれば
G1に繋がる可能性も見えてきた。
ここ2年は勝ち馬がG1で好走したが、サクラプレジールが勝った3年前は、②着のエバーブロッサムが
オークスでも②着。そして③着のリラコサージュが
秋華賞で③着と、敗れた馬でもG1好走のチャンスはある。さて、
今年も「G1に繋がる」フラワーCとなるのかどうか。勝ち馬ともども、近年どうも「好走しても②③着」っぽいのは気になるが、それを覆せるかも含めて、2頭の今後の走りに注目したい。