馬にも厩舎にも勢いがあった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
中山芝は今週から
Bコースに替わり、内ラチ沿いの馬場が良いかと思いきや、土日ともに
雨の影響を受けてしまい、内の先行馬が伸び切れないケースが散見された。
ダービー卿CTも逃げた
キャンベルジュニアが直線で馬場の中央に進路を採り、
内が空いた。その空いた内を
マジックタイムが伸びて優勝した。
ペースが緩かったし、良馬場発表とはいえ、
直線の内側を空けるほどの馬場だったので、決着時計は平凡かと思われたが、
1分32秒8という好時計だった。
「
きれいな馬場」と「
好時計」は頭の中でリンクしやすいけれど、「
内側を空ける馬場」と「
好時計」というのは、どうにも結び付けづらい。先週の
高松宮記念も「
内側を空ける馬場」で「
好時計」が出たが、勝った
ビッグアーサーは外を回っていた。今回の
マジックタイムは内から差し切ったわけで、なんだかよく分からない。
もちろん馬個別で馬場の適性は違うのだろうし、
マジックタイムは重馬場だった前走の
京都牝馬Sで②着まで差し込んでいて、
荒れた馬場は苦にしないタイプなのだろう。
それでも、以前にサラブレ本誌で
マイケル・キネーン元騎手が日本の芝レースを見て、
「どうしてこんなに外を走る(内を空ける)のだ?」と疑問を呈したことを思い出してしまう。
今回の
ダービー卿CTで内を伸びて上位入線したのは
マジックタイムと
サトノアラジンだった。鞍上が
シュタルケ騎手と
ルメール騎手という
外国人ジョッキーだったことは、まったく無関係とは思えない……。
マジックタイムは重賞未勝利馬ながら重賞での②着が2度あり、2走前に勝ち鞍も挙げている5歳馬で、過去の
ダービー卿CTの勝ち馬とタイプは似ていた。それでも
右回りで勝ち鞍がなかったために評価を下げてしまったわけだが、昨秋以降はテンションが上がり過ぎることがなくなり、精神的に
成長していたようだ。
ハーツクライ産駒は成長力に富む馬がいるが、それは男馬に多いように思い、
牝馬の
マジックタイムにはその傾向を当てはめなかった。本格化した
ハーツクライ産駒には、性別関係なく乗るべきだったんですね……。これは反省材料でしかない。
今年の
マジックタイムもそうだし、昨年の勝ち馬
モーリスや3年前の優勝馬
トウケイヘイローも該当するが、
ダービー卿CTは近走で準OPを勝ち上がってきたようなタイプがよく優勝する。春先のハンデ重賞ということで
勢いが重要なのだろうし、近走で準OPを勝ち上がってきたような馬は斤量面で有利に働く面もあるのだろう。
今回のレースを見て、
勢いというのは
馬だけではなく、
厩舎にも該当するんだなあと思わせられた。
マジックタイムを管理する
中川厩舎は2005年に開業し、初のJRA重賞勝利が昨秋の
アルゼンチン共和国杯(
ゴールドアクター)だった。その後、
ゴールドアクターは
有馬記念も勝ち、今年の
日経賞も制覇。そして、この
ダービー卿CTも
マジックタイムで制してみせた。
ゴールドアクターは
春の天皇賞を目標に調整されていて、
マジックタイムは5月15日の
ヴィクトリアマイルに照準を合わせられるという。
中川厩舎の勢いには、この後も注目すべきなのだろう。
そういえば、
キネーン元騎手はこんなことも言っていたことを思い出す。
「どんな馬にもBad Dayはある」。
東京新聞杯で内ラチに接触して競走中止となってしまった
ダッシングブレイズは、今回はスタート直後に躓いて後方追走となり、追い込み届かなかった(⑥着)。
予想をしたり、馬券を買っていると、
「どんな馬にも、どんな人にもBad Dayはある」ということを痛感させられるので、
ダッシングブレイズに対してもここ2走にめげずに頑張ってほしいなと思います。