この時期話題になる“春闘”が、トレセンでも行われました
2016.4.6
経営者側と労働組合が、賃金や労働条件などについて交渉を行う“春闘”が、少し前に話題になっていましたね。これは、我々JRAの厩務員組合とJRA、調教師会との間でも行われるんです。
この春闘は、春のクラシックシーズンが行われるこの時期ということで、より注目を集めると言われています。今回はそれだけでなく、我々の賃金体系そのものについてもお話をさせていただきたいと思います。
我々、厩務員及び調教助手の賃金体系は、勤続年数によって基本給が決まっています。その体系は変わっていないんですが、実は数年前にそれまでの金額の20%カット、さらには勤続手当の支給廃止という変更があったんですよ。
例えば、それまでは勤続10年での基本給が25万円だったとしたとき、その年以降厩務員及び調教助手になった人間は、勤続10年目に20万円しかもらえなくなってしまったんです。しかも、勤続していただける手当がなくなってしまいました。
さらに、以前は20馬房の厩舎だったら基本的に10名の厩務員と3名の助手という人員で管理するというのが厩舎の形でした。それが持ち乗り助手を増やすことで、1名減って12名態勢になったんです。
ですから、1名減った分仕事は増えるわけです。
給料の金額そのものや、ペースアップ、あるいは労働条件なども大事じゃないとは言いませんが、それよりも大きな問題は、12人態勢になった上で、新しい方たちの20%カットという政策ですよ。
まず12人態勢となり、効率上からこれまでの1人2頭という担当馬制を堅持するのは、実際なかなか難しいというのが現実なんです。
これは預託料を減額するためだとされています。それに応えようということで、それまで働いてきている我々の給料はそのままで、それ以降に入ってくる新しい人たちの基本給の20%カットとなったわけです。
誤解しないで欲しいですが、1人減ったことで仕事量が増えたことが問題だと言っているのではありません。
新人の方たちの多くは、確かに経験はないかもしれません。でも、同じ時間、同じ仕事をして頑張っているのに、ある年以降に就業したということで同じ年数を働いたとしても20%少ない。それを組合側が受け入れたということに異論があるんです。
世間ではそうだ、甘いなどという意見もあるかもしれませんが、でも僕はこの問題は見逃せないと思っています。なぜ、自分たちはそのままで若い人たちを減額させたのか。
これまでは競馬人気もあって、このサークルを目指す人たちが多いと言われてきましたが、現在は人手不足になっているのが現実なんですよ。
牧場などではかなり以前から人手不足が深刻化していますが、それこそが競馬という産業の根幹を揺るがす大きな問題であるはずなんです。
確かに、この仕事は他の業種に比べて大きな“やり甲斐”を持つことができると僕自身も確信しています。
馬が好きで、やり甲斐を感じるということももちろんありますが、しかしそれだけではなく、やはりそこには仕事の対価である給与も大きいと思うんです。頑張ればそれだけ稼げることで、朝早くから夜遅くまで、365日、雨の日も風の日も頑張れる部分もあると思います。
この世界は、牧場での大変な苦労を乗り越えて入ってくる方がほとんどです。その世界が夢も希望もない世界で良いんだろうか、ということなんです。
今はそれでも目指すという人がいてくれるからまだ良いですが、さらに人手不足が深刻化してしまえば、本当に産業の疲弊となってしまいます。
何度も言っていますが、1つのレースのために10万人以上が集まる、そんなエンターテイメントはありません。大袈裟からもしれませんが、その火を消すようなことをしてしまって本当に良いのか、と思うんですよ。
今回、なぜこういう話をしたかと言いますと、今話題を集めている
藤田菜七子騎手の教育係であり、助手組合の役員を努めている
木藤さんと対談させていただいて、その話題も出たからなんです。
このような事情を知らない方々もいらっしゃると思ったので、お話させていただきました。
対談は来週からお送りします。ぜひお楽しみに。
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