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【対談・木藤助手①】今回は根本厩舎の木藤調教助手をゲストにお迎えしました!
2016.4.13
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木藤隆行調教助手…以下[木]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]今回は根本厩舎で調教助手を務める木藤隆行さんをお迎えさせていただきました。読者の皆さんは、エルプスとのコンビで桜花賞を制した騎手といえばお分かりの方もいらっしゃるかもしれません。木藤さんと競馬場などでよくご一緒させていただくのですが、ぜひ一度飲んでみたいと思っていたんですよ。

[木]自分なんかで良いんですか?



[西]藤田菜七子ちゃんブームも大変でしょうが、時期的に春闘ということで、いろいろお話をお聞きできればと思います。木藤さんは労働組合の助手の役員をやっておられて、この対談も前日の予定だったですが、春闘関連の会議が急遽入ってしまったということで、この日になったという経緯もあったりするんです。そんな忙しいなか、本当にありがとうございます。春闘はどんな感じなんですか?

[木]春闘というのは、このサークルだけでなく、一般的にも多くはベア(ベースアップ)要求なのです。一方、定昇(定期昇給)となると馬主さんの負担となります。こちらは給与ですので、たとえ10円でもあがると、退職金にまで反映されていくことになります。ですから、昔の良かった時代のように交渉すれば理解してもらえるということには、なかなかならないんです。

[西]その部分で言いますと、実際に給与を支払うのが調教師ではないというところもポイントになってきますよね。調教師の先生たちも『お前たちは頑張っているし、できることならば多く払ってあげたいけど、決まっているし、ない袖はふれない』ということになりますから。そういうなかで役員さんは板挟み状態になったりして、大変だったりしませんか?

[木]そういう部分はあります。組合員からは『なぜ上がらないんだ』と言われますし、調教師会は調教師会で馬主会の対応を伝えられて、そこで協議を重ねていく形になりますからね。いまは、出走奨励金は上がり続けていますし、売り上げも4年連続上がっていて、競走事業費、賞金など、すべてが上がっているように、潤っている状態なんです。しかも助手を1人減らして12人態勢にして、その分預託料も減って、馬主さんにとっての条件は良くなっています。ただ、それが全員に行き渡っていないというのが現状のようで、簡単にはいかない感じです。

[西]アベノミクスではないですけど、すべてに行き渡ってはいないということなんですね。

[木]これまでは各組合が協定を組んで一律でということでしたが、いまは新賃金体系ができていて、東西で200人くらいがその適応になっています。いずれは逆転していくのですが、やはり『どうして同じ労働をしているのに、給料の差があるんですか。僅か数ヶ月の違いで、片方はいままで通りの金額で、勤続手当も付くのに、給料が少なくて、しかも勤続手当もないのはおかしくないですか』ということは言われます。

[西]直接交渉をしていただいている方々には、そういう大変な役割を担っていただいていることは感謝していますし、そういうルールになったことにもそうせざるを得ない状況があったのだろうということは想像できます。ただ、どうして新しい、これからの人たちの分だけ2割カットということになったのかということが不思議に思うんです。その人たちの未来の方が、競馬にとっては大事だと思うんですよ。

[木]いま関東労では、持ち乗り者と厩務員さんが、ほぼ半分ずつになっているんですが、当時はまだ厩務員さんの方が多いという状況だったんです。そこまで築いてきた厩務員さんたちの影響力がありましたし、結果的に押し切られる形となってしまいました。例えば自分なんか最高額となっていて、そこからは減額となっていきます。そこで生まれる歩合の分などの差額を若い人たちに回してあげてはどうか、ということを組合として提案したのですが、受け入れられませんでした。

[西]そうだったんですか。

[木]最初は新賃金体系についても拒否という姿勢だったんです。でも、それではこのまま行けば歪みも出てくると思うんです。若い人たちがどんどん入ってくると、年配者たちにとっては働きづらくなることが予想できます。片方は若いから体も利くし、給料は安い。それに対して、年配者といえば体は利かなくなるうえ、給料が高い。そうなると年配者が追いやられてしまいかねません。

[西]なるほど。

[木]そして、若い人を優遇してあげないと、この世界に魅力を感じてもらえなくなってしまいます。ただでさえ、牧場が少なくなって、希望者も減っている状況ですからね。平成31年までに400人を減らすという方針が打ち出されていて、そうなっていくことになります。そうなると、この世界に入りたくて競馬学校を出たのに、牧場で待っている人でもトレセンに入れない人たちが出てきてしまいかねないんです。牧場で待つといっても仕事は大変で、賃金も安いわけで、じゃあ違う世界に、ということになってしまいかねません。そういう意味では、今は若い人にぜんぜん魅力がない状況になっていますよね。

[西]本当にそう思います。競馬という素晴らしい産業が終わってしまいかねないとさえ思うんです。

[木]いまの組合の委員長には相談を受けたりするんです。

[西]木藤さんは年長ですからね。

[木]いつの間にか最年長になってしまいました(苦笑)。いつも話をするのは、これからは若い人に魅力がある世界じゃないと駄目だということです。もっと言えば、役割分担制ということも考えていかなければならないと思います。年配者の給料を減額して、その分を若い人に。その代わりとして、安心して65歳まで働くことができるという世界があって良いと思うんです。

[西]まさにそれですよ。共存共栄できるはずなんです。

[木]これからは、乗り運動は自分たちがやりますから、手入れやヘアなどはお願いしますというような、若手の人とベテランが共に頑張っていける職場を目指していくべきだという思いがあります。

[西]そういう意味でも、個人的に何となくこれからの人たちが2割カットというのは釈然としませんでした。

[木]まあ、今回で組合が合併するので、最後のご奉公と思って、今回の定昇について旧賃金体系が1000円を要求するというから、それならば新賃金体系は2000円にしてくれ、と提案しました。要求が通るかどうかはわかりませんが、“若い人たちに魅力的な世界”になっていかなければならないということなんです。そういう方向を受け入れたことに対して、本当に悔いが残ります。この合併を機会に身を引きたいと思っていますが、何に悔いが残るかと言えば、あのとき受け入れざるを得なかったことですよ。

[西]ただ、それ事態は木藤さんたちが役員だったときですが、その以前からの歴史がありますからね。ルールはおかしいと思いますけど、木藤さんだけに責任があるわけではないですよ。

[木]でも、やはり悔いが残ります。あの前に12人態勢になったことで、預託料の軽減にはなっていたんですけどね。

[西]ブッチャけますけど、その当時のことをベテランの厩務員さんから聞きました。木藤さんたちの話に対してさらなるベテランの方たちが、『お前たちは黙っていろ』という論法で一喝されてしまったというじゃないですか。でも、今のままでは良くないと思います。必ず歪みが来てしまうはずですよ。若い人たちにとって魅力がなくなっていってしまうことが何より心配です。

[木]馬との付き合い方も変わりましたからね。僕たちの時代は、調教師の指示の元で、我々が技術を積み重ねながら、馬を仕上げていくという流れでした。大変ですけど、自分で毎日乗って、いろいろ工夫しながら仕上げていくという部分が、楽しみであり、もっと言えばこの仕事の醍醐味だったりすると思うんです。今度は強く追ってみようと工夫したり、あるいはゲート試験を受けてみたりということも昔は当たり前だったのに、いまではそれさえもさせてもらえなかったりしますから。


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