「ほかより重いヤツ」対決を制して大舞台へ着実に前進
文/浅田知広、写真/森鷹史
最近、老眼なのか、それとも単に目が悪くなっただけなのか(後者だと思いたい!)、どうも56キロと58キロの見分けがつきづらい。56キロと58キロでは大違いなのでこれは非常に困るのだが、
「重いからダメだろう」などと考えるとダメなレースも多々。
ハンデ戦でも別定戦でも、斤量を背負っていたほうが好走確率が高い、なんてこともある。
アンタレスS場合は、基本重量がその56キロで、1年以上前にG1を勝っていたり、1年以内にG2勝ちがあると58キロになる。1年以内のG3勝ちなら57キロだ。
過去10年の結果を調べると、牡・セン馬で56キロだった馬は
連対率10.2%、なんらかの実績で加増された57キロ以上の馬は連対率
19.6%。58キロ……だけではないが、とにかく
「ほかより重いヤツ」を買ったほうがいいレースだ。特に、57キロ以上で1番人気に推された馬は
[2.3.2.0]と非常に安定している。
そんな視点で見てみると、今年の上位人気は多くが57キロ以上で、1番人気に推された
アウォーディーも57キロ。55キロで重賞を連勝してきて、
今回57キロというのは嫌だなあ、などと思ってはいけないのである。その他もろもろ含め、大波乱はなさそうな印象を受ける、今年のメンバー構成だ。
レース序盤の展開も波乱はなく、出遅れた
サージェントバッジは追い込み型。先行すると予想された
ショウナンアポロンや
アスカノロマンが8枠を引いてどうなるかと思ったが、なんのことはない、この2頭が先頭、2番手。そして7枠の
トウショウフリークも3番手で1コーナーに突入していった。
注目の
アウォーディーは後方のやや前で外めの追走。3コーナーあたりからじわじわと前との差を詰めたものの、さほど大きな距離損をすることなく4コーナーを回っており、ここまではまず
「勝っただろう」という展開だ。
その
アウォーディーを少々手こずらせたのは、もう1キロ重い58キロの
アスカノロマンだった。2番手から
アウォーディーが来るより少し前に抜け出し、まだまだ脚も残っているという絶妙なタイミングだ。
ただ、残り100mにかかると脚色の差は明らか。実際は「少々手こずらせた」ほどでもなく、一瞬「おっ」というシーンがあった程度で、結局は
アウォーディーが余裕をもって差し切り
重賞3連勝、ダート戦無傷の4連勝を飾った。
昨秋、
シリウスSを制したときにはもっと早くG1の舞台に登場するかとも思われたが、5ヵ月半の休養を挟んで復帰戦は前走の
名古屋大賞典。この休んでいる間に、半妹アムールブリエは
名古屋グランプリ、
エンプレス杯を勝ち、Jpn1の
川崎記念では③着に好走した。そして
名古屋大賞典から今回までの間には、半弟ラニが
UAEダービー制覇を果たしている。
単純にみんな勝ちまくってるだけ、と言ってしまえばそれまでだが、お前が勝つなら俺も勝つ、いやいや私が僕が、と競い合っているようにも見えなくもない。ただ、妹、弟がG2やJpn2を制している中で、
アウォーディーはまだJpn3・G3の3連勝である。
ともあれ、この勝利で
帝王賞をはじめとしたG1・Jpn1制覇へ前進したのは確か。そして、そのあたりを勝つには弟、妹にもうひとつ勢いをつけてもらいたいようにも思えてくる。ラニが挑戦を予定している
ケンタッキーダービーは5月7日。そしてアムールブリエが予定しており、
アウォーディーの目標にもなりそうな
帝王賞は6月29日。さて、
この兄弟の勢いはどこまで続いていくのだろうか。
一方、
「ほかより重いヤツ」同士の争いで敗れてしまった
アスカノロマン。ただ、昨年のこのレースは、
ダイオライト記念③着後に出走して
⑭着。続く
平安Sも
⑮着とどうも重賞で安定感を欠いていたのだが、今年はこれで
①③②着。58キロを背負っても③着には3馬身差をつけており、この路線での安定株になっていきそうな気配もある。前走・
フェブラリーSは少々距離不足で先行策を採れない中での③着だけに、こちらも適距離なら大いにチャンスがありそうだ。