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スプリンターズSの“連覇”も十分、現実味を帯びてきた!?
文/石田敏徳、写真/川井博


こういう結果になったから書くわけではないのだが、ヴィクトリアマイル「リピーターの活躍が目立つレース」とよくいわれる。2006年の創設以降、2年連続で連対した馬は08年②着→09年①着のウオッカ、10年①着→11年②着のブエナビスタ、12年①着→13年②着のホエールキャプチャ、そして13年①着→14年①着のヴィルシーナと実に4頭。こんなG1も珍しいが、その背景にはどんな理由が考えられるだろうか。

先の4頭はいずれも桜花賞の連対馬で、オークスあるいはダービーでも③着以内に好走した実績の持ち主だった。つまりマイル適性の高さのみならず、東京・芝2400mのG1でも上位に食い込めるだけの底力をすでに示していたわけだ。

来年以降に向けた備忘録も兼ねて書いておくと、見落とされやすいオークス上位馬の好走例は06年②&③着のエアメサイア、ディアデラノビア、07年②着のアサヒライジング、11年①着のアパパネ、14年②着のメイショウマンボなど、他にも多数。タフなレースになりやすい府中のマイル戦だけに、クラシック・ディスタンスにも対応できる底力がモノをいうとの見方がひとつ成り立つ。

さらにもうひとつ見逃せないのが、Bコース替わりの“開幕週”にあたるというファクターだ。現在のようにNHKマイルCの週まではAコースを使用し、ヴィクトリアマイルの週からBコースに替わるというローテーション(?)になったのは09年以降のことで、リピーターの活躍が目立ち始めた時期と重なる。

芝の成長期でもある5月、コース替わりの開幕週は高速決着になりやすく、実際に09年以降の優勝馬はいずれも1分32秒4以内の勝ちタイムを記録。水準以上に速いタイムで決着するマイル戦──ある意味、「特殊な適性」が求められることも、リピーターの活躍が目立つ一因なのだろう。

そこまで分かっていながらストレイトガールを買えなかったのは、内めの枠を引いた昨年(3枠5番)とは違って外めの枠(7枠13番)を引いたからで、ミナレットがぶんぶん飛ばした昨年のような速いペース(前半1000mの通過は56秒9)にはなるまいと読んだためでもある。

スマートレイアーぐらいしか逃げ候補が見当たらず、ゆったりとした流れになるのは必至と思えただけに、今年は馬群の外々でなし崩しに脚を使ってしまう危険性が高いと考えたわけだ。

しかし蓋を開けてみればブリンカーを着用してきたレッドリヴェールスマートレイアーのハナを叩いて先手を主張し、ブリンカーが“効きすぎた”印象のカフェブリリアントが途中からこれに競りこんだことで、レースは予想外のハイペース(前半1000mの通過が57秒2)で進行。そしてレース史上2頭目の連覇、JRA史上では初となる「7歳牝馬のG1制覇」が達成されたというわけだった。

改めて振り返ると、バラけ気味の隊列になったことでスムーズに内めへ入り込めたストレイトガール戸崎圭太騎手は上々の手応えで中団を追走。4コーナーは内から2頭目のポジションで回り、直線に向いた途端、さあどうぞと言わんばかりに進路のスペースが開いた。

「枠順が決まってから、ジョッキーと入念にシミュレーションを話し合った形のひとつではあったけれど、まさかあそこまで綺麗に進路が開くとは」藤原英昭調教師が振り返った場面である。

すかさず、ゴーサインを送った鞍上に応えてストレイトガールも鋭く加速し、たちまち先頭に躍り出る。「馬なりでビューンと行かれてしまったからね。ウチの馬はマイラーではないし、あれではどうしようもなかった」と白旗を掲げたのはミッキークイーン(②着)の池江泰寿調教師で、同馬の主戦・浜中俊騎手、また、スタートが決まらなかったうえに4コーナーで狙った進路をミッキークイーンに奪われ、外を回らされる形になってしまったショウナンパンドラ(③着)の池添謙一騎手高野友和調教師も同様のコメントをしていた。

②③着の両馬もさすがの地力は示したものの、昨年を0秒4上回るレースレコード(1分31秒5)の決着で、マイル適性、あるいはスピード能力の差が勝負の明暗を分けた格好だ。

さて、当初は昨年限りで競走生活を引退し、今年から繁殖入りすることになっていたストレイトガールだが、廣崎利洋オーナーの強い要望で今年も現役を続行することになった経緯がある。ちなみに、藤原調教師はオーナーから現役続行の打診を受けたとき、「少し考えさせてください」と即答はせず、馬の気配を慎重に見極めてから同意したそう。

「正直、(7歳の牝馬を一線級で勝負させるのは)難しいと思いましたが、馬体には張りも光沢もあったからね。香港帰りで万全の状態にはなかった前走(阪神牝馬S⑨着)をひと叩きして、ここまで仕上げてくれたスタッフと、現役続行を決めてくださったオーナーに感謝したいです」

オーナーには当初から「ヴィクトリアマイルが最大の目標になる」と伝えていただけに、今後の予定は「何も考えていない」とのこと。ただ、さすがに上積みまでは見込めないとしても、年齢的な衰えなんか露ほども感じさせなかったこの日の走りからすれば、スプリンターズS“連覇”も十分、現実味を帯びてきたといえそうだ。