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騎手とファンの心理が、これまでとは違う荒れ方を呼んだ?
文/編集部(T)、写真/川井博


今年もセレクトセールの時期が近づいてきたが、以前ある馬主さんに話を聞いた時、「セリの値段は水物で、その馬をどうしても欲しい人がふたりいるだけで値段が跳ね上がる」という話を聞いたことがある。

これは「落札価格は馬の評価に直結しない」という趣旨の話だが、競走馬に限らず、セリをご覧になったり、参加したことがある方はこの話に頷けるのではないだろうか。

競馬にも似たようなところがある。“ハナに行きたい”という馬が2頭競り合えば、それだけで道中のペースが上がることになって、差し馬が台頭する可能性が増してくる。

函館は中央全10場の芝コースでもっとも直線距離が短く、それだけに先行有利となる傾向が強い。函館で開催された過去10回の函館スプリントS(05~08、10~15年)を振り返っても、馬券圏内に入った延べ30頭中20頭を4角7番手以内の馬が占めている

一方、4角8番手以下で馬券圏内入りした10頭のうち、5頭がふた桁人気で、ふた桁人気で馬券圏内に入った馬はすべてここに当てはまる

函館が先行有利なコースということは馬券を買う側も周知の事実なので、それだけに差し馬が台頭する流れになれば荒れる、ということに『これまでは』なっていた。

ところが、今年は12番人気のソルヴェイグが4角2番手から押し切り勝ち。4角4番手からハナ差②着のシュウジ(2番人気)を挟み、7番人気③着のレッツゴードンキが4角7番手。これまでのパターンから外れた形で荒れる格好になった。

こういう結果になった理由を考えてみると、伏線は近年の函館スプリントSにあったのではないか、と思う。

昨年を振り返ると、“何が何でもハナに”というタイプのアンバルブライベンのハナを叩いてフギンが馬群を引っ張る形になった。そのため前半600m通過が33秒0というハイペースになり、4角12~14番手の馬が③着までを占める結果になった

一方で1番人気のコパノリチャードは4角4番手から⑭着、それだけでなく、13~14年の1番人気も4角5番手以内の競馬をして掲示板外に敗れている

3回続けば、さすがにファンも鞍上も「おや?」となる。今回は5番人気以内の馬のうち、3頭が4角6番手以下の競馬をしたが、有力馬のジョッキーたちも「前有利とは言い切れないのでは」という心理が働いていたのではないか。

そんな中、ハナを切ったのは大方の予想通りローレルベローチェアクティブミノルシュウジが行く構えを見せなかったことや、もしかしたら先述した心理状態もあってか、ソルヴェイグはすんなりと2番手につけられた

そのままソルヴェイグはスムーズにレースを進め、直線を向いて後退したローレルベローチェに代わって先頭に立つと、一旦はシュウジに出られる場面もあったが、首の上げ下げでハナ差凌いだ。前が速くなる可能性もあることはソルヴェイグの鞍上・丸田騎手も承知していたかもしれないが、大外枠のハンデを最小限にとどめる思い切りのいい好騎乗だったと言えるだろう

走破時計の1分7秒8はレコードタイム。2頭ともに3歳馬で斤量の恩恵はあったが、前半600mを昨年より0秒4遅いだけの33秒4で入り、後半600mを34秒4(昨年は35秒3)でまとめられれば、後続はなすすべなしだろう

時計だけ見ても、近年の函館スプリントSに比べてレベルが高い一戦だったとみることもできそうだ。

ちなみに、ソルヴェイグの近親ソルジャーズソングは09年高松宮記念で15番人気③着に激走しているし、シュウジの半兄は13年北九州記念勝ち馬ツルマルレオン。血統的にも、“持ち味”を発揮した結果ともいえるかもしれない。

なお、函館スプリントSサマースプリントシリーズの第1戦で、ソルヴェイグは当然ながらこの勝利でシリーズトップに立った。

過去の結果を振り返ると、シリーズが6戦となった12年以降、函館スプリントS勝ち馬がシリーズを制したことはまだない。今回と同様に、ソルヴェイグが近年の傾向に逆らう形で先行押し切りを決められるか、シリーズの行方も目が離せない。