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“上手い騎手”は、引き出しを多く持っている
文/編集部(T)、写真/川井博


今年の札幌記念稍重となり、札幌で施行された札幌記念としては96年(稍重、勝ち馬マーベラスサンデー。当時はハンデG3でした)以来となる、道悪での決戦となった。

札幌記念別定G2となったのは、その翌年の97年のこと。そして、定量戦となったのが06年。G1を除くと、定量戦で施行される古馬重賞は阪神C札幌記念だけで、それだけに札幌記念「G1.5」「G1に近いG2」と言われることが多い。

そんな札幌記念に、昨年マイルG1を4勝して年度代表馬となったモーリスが矛先を向けてきた。芝2000mという距離に一抹の不安はあったものの、同馬以外に牡牝混合G1勝ち馬がいないというメンバー構成だったこともあって、単勝オッズは1.6倍という圧倒的な人気を集めることになった。

定量戦はG1馬も他馬と同じ斤量条件で走れる。それだけにG1馬が勝ちまくっている……かというと、実はそうでもない

実際、06年以降の札幌記念の勝ち馬のうち、すでにG1勝ちがあったのは07年フサイチパンドラと、14年ハープスターの牝馬G1勝ち馬2頭だけ。03年以降、昨年までの札幌記念で単勝1倍台の馬は②②②②着と勝ち切れていない。06年はG1馬が不出走だったが、07年以降は毎年芝G1馬が参戦しているのにもかかわらず、だ。

そして今年も、その流れは止まらなかった。レースはこれまで一度も4角先頭の競馬をしたことがなかったネオリアリズムが、ルメール騎手に導かれてスムーズにハナへ。3ハロン目以降はすべて12秒台のラップでまとめ、モーリス以下の追撃を寄せ付けずに押し切った。

一方、モーリスは中団外目で折り合っていたように見えたが、勝負所でモレイラ騎手の手が動き始め、前のネオリアリズムを捕まえられず、後ろから来たレインボーラインの追撃を何とか振り切る形での②着。結果だけ見れば完敗だった

レース後のルメール騎手は、いつもは引っ掛かるタイプのネオリアリズム「逃げたことでリラックスして走ってくれた」という趣旨のコメントを残した。ルメール騎手自身はネオリアリズムと1年ぶりのコンビとなったが、それ以降のレース内容を見た上で、今回逃げることは作戦のひとつだったのだろう

人間でも抑えつけられると反発するタイプがいるが(笑)、馬の場合でも同じはず。折り合いに課題がある馬の場合、素人目だと「腕力で抑えつけなければ」と思いがちだが、実際はそうとも限らないのだろう。

サラブレ本誌の田辺騎手の連載でも「馬を気分良く走らせることを考えて」というフレーズがよく出てくるが、そのための引き出しを多く持っている騎手が、“上手い”ということなのかもしれない。

そして、ネオリアリズムにとっても今後の展望が開ける勝利といえそう。97年以降の札幌記念で、5歳の勝ち馬はエアグルーヴ(98年)、ファインモーション(04年)、ヘヴンリーロマンス(05年)、アーネストリー(10年)、トーセンジョーダン(11年)の5頭。いずれもすでにG1勝ちがあったか、その後G1を制した馬だ。

競走馬のピークは4歳秋といわれるが、これらの馬たちは成長力も備えていたことで共通する。そして、ネオリアリズムの半兄アイルラヴァゲインも初めて重賞を制したのが5歳時のオーシャンSで、8歳になってもOPを制した。また、半兄リアルインパクトは3歳で安田記念を制したが、7歳になった昨年オーストラリアに遠征し、ふたつ目のG1タイトルを得た。息の長い血統なだけに、ネオリアリズムもさらなる成長が期待できるはず。

一方、敗れたモーリスは実績のない芝2000mで、外枠で終始外を回りながらこの内容なら悲観することはないだろう。ドゥラメンテがターフを去り、古馬中長距離路線は王者不在という状況だが、ここで新星誕生を印象づけたネオリアリズム、巻き返しを期するモーリス、それぞれの今後に注目しておきたい。