ハイレベル世代のダービー②着馬が強さを見せて重賞2勝目!
文/出川塁、写真/稲葉訓也
セントライト記念に続いて、
ディープインパクトである。いや、今年の
神戸新聞杯を制したのはまぎれもなく
サトノダイヤモンドなのだが、
ディープインパクトが勝ったような感覚に襲われるのは
私だけではないだろう。
神戸新聞杯における
ディープ産駒の成績は、昨年まで
[0.2.3.11]。そもそも
ディープ産駒は阪神芝2400m自体の成績がイマイチで、コース適性に由来する
不振と考えられないこともなかった。しかし、今にして思えば、これまでは勝って当然の
ディープ産駒が、たまたま
神戸新聞杯には出走しなかっただけなのかもしれない。
昨年まで
ダービーで①~③着に入った
ディープ産駒は、12年のディープブリランテとトーセンホマレボシ、13年のキズナ、昨年のサトノラーゼンと4頭いた。この4頭はすべて関西馬だから、秋初戦には
神戸新聞杯を選ぶのが普通だ。なのに、海外遠征したり、
セントライト記念に回ったり、故障してしまったりで、1頭も
神戸新聞杯に出走することはなかった。
マカヒキが
凱旋門賞へ遠征したため、今年も
ディープ産駒の
ダービー馬は不在。しかし、今年の3歳牡馬は
史上屈指のハイレベル世代。
ダービー馬を欠いてもなお、遜色のない力を持った馬がまだまだ存在する。そのうちの1頭、マカヒキとハナ差の激闘を演じた
ダービー②着馬にして
ディープ産駒の
サトノダイヤモンドが、最後の一冠を懸けてここから始動した。単勝オッズは最終的に1.2倍。つまり、勝って当然の
ディープ産駒がついに、
神戸新聞杯に登場したのである。
スタート直前、
サトノダイヤモンドにしては珍しくゲートの中でうるさい素振りを見せたものの、それでもタイミングは合って互角以上のスタートを切る。14番枠から先行争いには加わらず、馬なりで陣取ったのは中団の外。1コーナーではわずかにハミを噛んで行きたがるようなところもあったが、隊列が定まった頃には折り合いがついていた。
勝負どころの3~4コーナーでは、ずらりと広がった1列目を眺める位置。そして、最後の直線を向いて追い出されると、反応良く脚を伸ばして先頭に立つ。このまま危なげなく勝利かと思われたところで、背後にいた
ミッキーロケットが内から急追。この上がり馬の脚色が勝るように見えた瞬間もあったが、最後まで先頭を譲ることはなく、①着でゴール。追われるほどに頭が沈み込んでいく
サトノダイヤモンドらしい走りで、きっちりと秋初戦をものにした。
里見治オーナー初のG1勝利が懸かる
菊花賞、あるいは古馬と戦うその先の大舞台までを見据えて、おそらくは余裕を残した状態だったことだろう。それでも
ミッキーロケットとの叩き合いを制すと、ゴール板ではもう一度突き放しにかかるような脚を見せていたのだから、やはり
この馬は強い。同時に、これほどの馬がようやく重賞2勝目という
3歳世代の層の厚さには改めて驚かされる。
その
強い3歳世代で上位陣の一角を担ってきた
エアスピネルは新戦法をとった影響もあったか、この馬らしい軽快な走りには程遠く、⑤着に敗れた。3000mを見据えての後方待機策だったと思われるが、視界が開けたとはいいづらい。また、躍進を期待された
ナムラシングンは積極的なレースを展開したものの、⑥着になだれ込むのが精一杯。2400mは微妙に距離が長く、2000mベストの印象を強める結果となった。
不本意な着順に終わった2、3番人気馬とは対象的に、②~④着に入った3頭は
菊花賞に向けて前進したとみていいだろう。
サトノダイヤモンドとクビ差、予想以上の成長を披露して上がり馬筆頭の座についた②着
ミッキーロケット。叩いた上積みと、母方が欧州血統で距離延長がプラスになりそうな③着
レッドエルディスト。遅刻気味ではあったものの、最後に際立った伸び脚を見せた④着
カフジプリンス。この3頭は本番でも
ダークホース勢力を形成することになりそうだ。
それにしても、
ディープ産駒が勝てなかった
菊花賞の両トライアルを、ディーマジェスティ、
サトノダイヤモンドであっさり連勝するのだから、感心するやら呆れるやら。
ディープ産駒は本番も
未勝利だが、ここもあっさりと覆すのか。それとも、重賞に限らず
未勝利という3000m以上の壁が今年も立ちはだかるのか。これが
菊花賞の大きな焦点となるだろう。