キタサンブラックはジャパンCも勝ち切れるか注目
文/浅田知広、写真/森鷹史
一昨年から、優勝馬には
天皇賞・秋への優先出走権が与えられるようになった
京都大賞典。しかし近年は、その
天皇賞をはじめとするG1へ向けたステップレースではあっても、
「直結する」とは言えなくなっていた。いわゆる
「秋の古馬三冠」のうち、ひとつでも制した
京都大賞典出走馬は、04年のゼンノロブロイが最後。そのゼンノロブロイも
京都大賞典は②着で、優勝馬にかぎると03年タップダンスシチーまでさかのぼった。
ところが昨年、
宝塚記念でG1初制覇を飾った
ラブリーデイがここでも勝利を収めると、続く
秋の天皇賞を制し、
ジャパンCでも③着好走。さらに、②着の
サウンズオブアースは
有馬記念でも②着と、いきなり
「秋の古馬三冠」すべてで好走馬を輩出したのだ。
「流れが変わってきたんじゃないか」。そんな思いを持ちつつ、月曜に今年の登録馬を見てみると、その
ラブリーデイ、
サウンズオブアースの名前が今年も見られたのに加え、さらに
春の天皇賞馬キタサンブラック、そして昨年の
ジャパンC②着馬かつ一昨年の優勝馬
ラストインパクトも参戦。ゴールドアクター(
有馬記念)やマリアライト(
宝塚記念)こそ
オールカマーを選択したものの、
中~長距離の実力馬がしっかりと顔を揃えた。
そんな強力メンバーで
「実は3年前の優勝馬もいますよ」と
ヒットザターゲットが突っ込んだらまた波乱だよなあ、なんてスケベ心を抱きつつ、いざレース。
最内を引いた
キタサンブラックがハナに行く可能性もあったが、春以降「芝+逃げ」で好走を重ねた
ヤマカツライデンの方が少しだけ出脚が良く、
キタサンブラックには無理して行く理由もなしということで2番手追走。
ラブリーデイは昨年よりもやや早い3番手で
アドマイヤデウスと併走し、
ラストインパクトはその直後。逆に、
サウンズオブアースは昨年より後ろの8番手となった。
前半の1000m通過は62秒0。その
サウンズオブアースでも先頭から6馬身ほどと、時計を見なくても見た目からして遅そうな展開だ。ここから
ヤマカツライデンは200m12秒2とペースを上げて突き放しにかかったものの、
キタサンブラックがついてきたので、再び12秒7-13秒0。後続各馬が動くならここ、というタイミングだったが、もともと序盤からあまり差のない展開だっただけに、最後方から
ファタモルガーナが少し動いた程度にとどまった。
こうなると最後は完全な上がり勝負で、残り800mから11秒9-11秒1-11秒1-11秒5。ペースを作った
ヤマカツライデン自身がこの上がりに対応できず残り300mで脱落。また、結果的にペースが上がったところで少し動いてしまった
ラストインパクトも、
ラブリーデイの外から少し前へ出たところまでで失速してしまった。
結局、残り200mを切って争覇圏内に残ったのは、道中2~3番手にいた3頭。そこには昨年の覇者
ラブリーデイ、昨年同コースで
日経新春杯を勝った
アドマイヤデウスもいたが、この2頭よりはさすが
京都のG1・2勝馬ということなのか。一瞬は
ラブリーデイの手応えのほうが良く見えたものの、その前にいた
キタサンブラックが一気に2頭を突き放していったのだった。
ただ、ここは斤量差もある前哨戦のG2。最後は56キロの
アドマイヤデウスが58キロの
ラブリーデイを振り切り、やはり58キロの
キタサンブラックにもう一度迫ったものの、この追撃をクビ差で振り切って
キタサンブラックが優勝。そして3/4馬身遅れて
ラブリーデイ。さらに、不向きな展開の中、大外から
サウンズオブアースもその直後まで追い上げていた。
アドマイヤデウスからすれば勝ちたかっただろうが、おのおの悪くはない前哨戦だったと言えるだろう。また、今回は⑦着に敗れた
ラストインパクトも、直線まで我慢して届く展開なら違うはず。昨年同様、今年の
京都大賞典も、後々に期待が持てる結果となった。
中でも優勝した
キタサンブラックは、これで
天皇賞・秋への優先出走権を獲得した……が、秋はこのあと、
ジャパンCと
有馬記念を予定しているとのことだ。どうもこの馬、もともとあった小回り中距離向きっぽい印象を完全に払拭し、むしろ最初は苦手かと思われた広い京都の中~長距離で勝つ傾向にある。
次の
ジャパンCは、過去12戦で唯一馬券圏外に敗退した
ダービー(⑭着)と同じ東京芝2400m戦。東京コース自体はデビュー2連勝を飾っているだけに、
ジャパンCも勝ち切れるか注目だ。