ヤマカツエースは新・金鯱賞で再び真価が問われるかも!?
文/浅田知広、写真/川井博
有馬記念のステップレースとして、
金鯱賞がこの時期に移動してきたのは4年前のこと。その1回目、12年はオーシャンブルーがここで重賞初制覇を果たし、続く
有馬記念では10番人気で②着に好走して
波乱の立役者になった。そして翌13年は、前年の
宝塚記念以来の長期休養明け・ウインバリアシオンが③着とまずまずの滑り出しを見せると、ひと叩きされた
有馬記念ではオルフェーヴルの②着。その後、ここ2年は好走馬が出なかったものの、
有馬記念好走馬の前走といえば、ほとんどが
ジャパンCをはじめとするG1という中で
「4年で②着2回」なら悪くない。
ただ、あくまで「G1以外では」。来年は
大阪杯がG1に昇格し、
金鯱賞はそのステップレースとして春に移動。そちらのほうが、きっちり有力馬が出走して重要視されることになりそうだ。やはりこの時期は、
G3・中日新聞杯(来年は6年ぶりに復帰)くらいが適当なのかもしれない。
というわけで、12月開催としては最後の今年。
トーホウジャッカルや
デニムアンドルビー、
サトノノブレス、そして
リアファルとG1好走実績馬が出走してきたあたりは、やはり「G2」というべきか。しかし、これら各馬の臨戦過程や近走成績に問題はあるにせよ、そんな実績馬を差し置いて、
アルゼンチン共和国杯③着の
ヴォルシェーブが1番人気というあたり、ちょっとG2らしいG2とは違うかな、という面もあった。
そんなレースでハナを切ったのは、「G3の常連っぽい印象だけどG2(
オールカマー)を勝っている」
マイネルラクリマ。スタンド前で押して先手を奪って、2ハロン目は11秒0。一気に後続を突き放し、縦長の展開を作り出した。
しかし、3ハロン目からのラップは12秒7-12秒7-12秒5-12秒6で、1000m61秒5、1200m74秒1という数字は、どう見てもスローだ。ただ、そのスタンド前での勢いに後続は惑わされたのか、向正面に入っても馬群はかなり縦長のまま。時計ではなくレースだけ見ていれば、どう見てもハイペースだ。しかし道悪でもなんでもなく、中京は芝ダートとも朝から良馬場、それも開幕週。見た目と時計、もちろん正しいのは時計である。
この流れで後方になってしまったのは、1番人気の
ヴォルシェーブや、G1実績馬の
トーホウジャッカル、
デニムアンドルビーといったあたり。これが「実績十分の1番人気」だったり、「近走好調のG1実績馬」なら力だけでもなんとかするが、残念ながら3頭ともそうではなかった。
こうなるとすでにG2を勝っている
マイネルラクリマ、と、思ったのは4コーナー手前までだった。これにかわって直線で、まったく楽な手応えで先頭に躍り出たのは、なんと前走1600万④着の
パドルウィール。いや、このコースの
レコードホルダーに「なんと」は失礼か。残り200mで一気に抜け出し、金星一歩手前という態勢を作り出した。
しかし、後続からその
パドルウィールに襲いかかった馬が1頭、同じくG2勝ち馬(
ニュージーランドT)の
ヤマカツエースだ。思い返せば昨年のこの時期、
福島記念、
中山金杯と重賞を連覇した馬で、
パドルウィールからすれば
「重賞3勝馬」でも相手が悪い。残り50mあたりで
パドルウィールを捕らえた
ヤマカツエースが、
中山金杯以来となる
重賞4勝目。昨秋以降は2000m戦ばかりで計3勝となった。
その2000m戦、
ヤマカツエースの
前走・天皇賞(秋)は15頭立ての⑮着。そこから立て直したにしても、馬体重プラス20キロは戻しすぎじゃないのか、とレース前には思ったが、終わってみればこれで良かったのだろう。また、その前の
宝塚記念(⑬着)は1ハロン長い上、馬場も悪かっただけに、まだG1で通用しないと決めつけるのは早計だ。
いずれにしても、
大阪杯へ向けてこの勝利でひとつ足がかりを作った
ヤマカツエース。いや、まだ今年の
金鯱賞は
有馬記念のステップレースだが、
ヤマカツエースの適性からすれば
有馬記念よりも
大阪杯。そういう意味では来春、「
大阪杯の前哨戦」となった
新・金鯱賞で、再び真価が問われることになりそうだ。
……と、気持ちは
「G1・大阪杯」へと向かっているのだが。
有馬記念を目指す馬にとっては、ここはステップレース、叩き台。3週間後には、
「やっぱり金鯱賞はこの時期に残しといた方が良かったんじゃ?」という結果が待っている可能性もある。
たとえば、直線勝負で内から伸びた
デニムアンドルビー(⑧着)は最後に前が詰まり、流してゴールしながらも上がり3ハロンは32秒8。同じく前年の
宝塚記念以来だったウインバリアシオンの例もあるだけに、叩き2戦目の
有馬記念で一発があっても不思議はない。