ドバイワールドカップには、
アウォーディー、
アポロケンタッキー、
ゴールドドリーム、
ラニという史上最多4頭の日本馬が出走を予定している。今回のレースにあたって、それぞれの
利点があるが、それは後述するとして、まずは
日本馬以外の馬について言及しよう。
日本馬以外の馬は10頭で、いずれも過去に対戦実績がある。前走の
ペガサスワールドカップを圧勝したのが
アロゲートで、同レースの③着が
ネオリシック、④着が
キーンアイスだ。
ラニも出走(⑥着)した
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3からは、①着
ロングリバー、②着
スペシャルファイター、③着
フリアクルサーダ、④着
ムーヴアップも出走する。
ガンランナー、
ホッパーチュニティ、
ムブタヒージの3頭は前走が上記2レース以外だが、
ホッパーチュニティは昨秋の
BCクラシックで④着となっていて、その時の③着が
キーンアイスで、
ジョッキークラブゴールドカップSでは
ムブタヒージを下している。
ホッパーチュニティが④着に敗れた2走前の
クラークHで優勝したのが
ガンランナーで(ただ、この時は
ガンランナーの斤量が
ホッパーチュニティに比べて約2.5kg軽かった)、
ガンランナーは
ラニも出走(⑨着)した昨年の
ケンタッキーダービーで③着となっている。
ムブタヒージは一昨年の
UAEダービー勝ち馬で、一昨年の
ケンタッキーダービーでは⑧着(その時の⑦着が
キーンアイス)、
ベルモントSでは④着(その時の③着が
キーンアイス)に敗れているが、昨年の
ドバイワールドカップでは②着に入っている。ちなみに、昨年の
ドバイワールドカップの③着が
ホッパーチュニティで、④着が
スペシャルファイターだ(⑧着が
キーンアイス)。
入り組み過ぎててよく分からないかもしれないが、前走の
ペガサスワールドカップや2走前の
BCクラシックで
キーンアイスや
ホッパーチュニティに大きな差を付けて勝利している
アロゲートの
地力が抜けているのは誰が見ても明らかで、それ以外の馬たちは
勝ったり負けたりを繰り返しているということだ。
レーティングにもそれは表れていて、トップの
アロゲートは134と抜けているが、2位以下は
混戦模様になっている(下記参照)。
【2017年ドバイワールドカップ・レーティング】
レーティング |
馬名 |
134 |
アロゲート |
118 |
アウォーディー ガンランナー |
117 |
アポロケンタッキー ホッパーチュニティ ムブタヒージ |
116 |
ゴールドドリーム |
115 |
キーンアイス スペシャルファイター ムーヴアップ ロングリバー |
114 |
ネオリシック |
112 |
ラニ |
108 |
フリアクルサーダ |
今回は、
アロゲートを相手にして、
他馬がどのようなレースをするかによって着順は変わってくるのではないか。
昨年は
カリフォルニアクロームが優勝したが、同馬は年明け3戦目で、
2月25日のレースを勝利しての参戦だった。2年前の勝ち馬
プリンスビショップは、
3月7日に行われた
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3で②着に入ってからの臨戦だった。
ダート2000m戦に戻ったのは近2年で、それ以前のダート戦はナドアルシバ競馬場で行われていた頃の2009年に戻るが、その時の勝ち馬
ウェルアームドも前走は
2月8日で、②着に好走している。
ダートで行われた時の
ドバイワールドカップ勝ち馬は、ほとんどが
前走で②着以内に好走していて、例外馬は99年の
アルムタワケルだけ。00年以降の勝ち馬(12頭)は、いずれも
前走が同年の1月末以降で、ダート1800m(9F)以上で①~②着に好走していた。
今年これに該当するのは、
アロゲート、
スペシャルファイター、
ホッパーチュニティ、
ムブタヒージ、
ロングリバーの5頭だ。
昨年の勝ち馬
カリフォルニアクロームは父
ボールドルーラー系(
Lucky Pulpit)×母父
ミスプロ系(
Not for Love)という配合だが、母母父が
ダンチヒ系(
Polish Numbers)で、
ミスタープロスペクターの4×3というクロスを持っていた。
ダンチヒを持ちつつ
ミスプロのクロスを持っていたのは、2年前の勝ち馬
プリンスビショップも同じで、3年前はオールウェザーで行われたが、この時も4代血統表内に
ダンチヒを持つ馬(
アフリカンストーリー)が優勝し、②着に
ミスプロのクロスを持つ馬(
ムカドラム)が入っている。
現在3連勝中であることを考えて、4代血統表内に
ダンチヒを持つ馬を上位に取ると、今年は
アポロケンタッキー、
アロゲート、
スペシャルファイター、
ホッパーチュニティの4頭が該当する。
ちなみに、
ミスプロのクロスを持つのは、
アロゲート、
ガンランナー、
キーンアイス、
スペシャルファイター、
ラニ。
オールウェザーで行われていた頃も含めて近5年で①~②着に入った馬の
ゲート番号は、12年①着8番・②着11番、13年①着12番・②着2番、14年①着6番・②着13番、15年①着1番・②着9番、16年①着11番・②着4番。14年が16頭立て、12年が14頭立てで、それ以外が9~12頭立てであることを考えると、
外目の枠の馬がよく連対していると言えるだろう。
ダートに戻った2年前に最内枠だった
プリンスビショップが優勝しているが、同馬は最後方まで下がり、大外を回って差し切った。外枠不利という報道も見られるが、過去傾向ではそんなことはなく、むしろ
キックバックを考えると、真ん中から外枠の馬の方が走りやすい面があるのではないか。
近5年では
ゲート番号9番より外枠に入った馬が連対圏に入っていて、今年の該当馬は、
アロゲート、
キーンアイス、
ネオリシック、
ホッパーチュニティ、
スペシャルファイター、
ムブタヒージだ。
以上の3点を
ドバイワールドカップの好走共通項として扱い、該当馬を整理すると次のようになる。
[1]
前走が同年の1月末以降で、ダート1800m(9F)以上で①~②着の馬(00年以降にダートで行われた12年で優勝)
[2]
4代血統表内にダンチヒを持つ馬(近3年で優勝)
[3]
ゲート番号9番より外枠の馬(近5年で連対)
番 |
馬名 |
[1] |
[2] |
[3] |
1 |
アポロケンタッキー |
|
○ |
|
2 |
ロングリバー |
○ |
|
|
3 |
ゴールドドリーム |
|
|
|
4 |
ラニ |
|
|
|
5 |
ガンランナー |
|
|
|
6 |
ムーヴアップ |
|
|
|
7 |
アウォーディー |
|
|
|
8 |
フリアクルサーダ |
|
|
|
9 |
アロゲート |
○ |
○ |
○ |
10 |
キーンアイス |
|
|
○ |
11 |
ネオリシック |
|
|
○ |
12 |
ホッパーチュニティ |
|
○ |
○ |
13 |
スペシャルファイター |
○ |
○ |
○ |
14 |
ムブタヒージ |
○ |
|
○ |
アロゲートと
スペシャルファイターがフルマークとなり、
ホッパーチュニティと
ムブタヒージの2頭がふたつで該当した。
アロゲートと
スペシャルファイターは
ミスプロのクロスも持っていて、近年の優勝馬と酷似している。
アロゲートは3走前の
トラヴァーズSをレコードで勝利し、
BCクラシックで
カリフォルニアクロームとの叩き合いを制し、前走の
ペガサスワールドカップでも同馬を退けたことは、みなさんご存知の通り。前走は最内枠だったが、
BCクラシックは外枠で外を回って
カリフォルニアクロームをねじ伏せている。
アロゲートについて、あえて重箱の隅を突くようなことを言えば、近年の
ドバイワールドカップで
4歳馬があまり勝っていないことだろうか。昨年優勝した
カリフォルニアクロームも、4歳時の一昨年は②着に敗れている。優勝すれば11年の
ヴィクトワールピサ以来で、ダートでは08年の
カーリン以来になる。
スペシャルファイターは前走の
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3で②着に敗れたが、昨年の
ドバイワールドカップ(④着)以来の
休み明けだったので、その点は考慮すべきだろう。昨年の
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3を逃げて圧勝した馬で、長期休養明けをひと叩きでどこまで変われるかだが、その先行力は侮らない方が良いだろう。
昨年の
ドバイワールドカップで、先行して粘る
スペシャルファイターを外から交わしたのが
ホッパーチュニティで、この馬は上表の[1]で非該当となったが、前走が1700mだったため。2走前の
クラークHで
ガンランナーの④着に敗れているものの、前述した通り、これは
斤量差があった。脚を溜めて末脚に賭けてくるはずで、
アロゲートが先行馬を蹴散らせば今年も差し込んでくるかもしれない。
ムブタヒージは昨年の
ドバイワールドカップの②着馬で、
カリフォルニアクロームには3馬身以上の差を付けられたが、
好位のインで脚を溜めてソツのない競馬を見せていた。
3歳時の
UAEダービー①着後は勝ち鞍がなく、前走でも②着に敗れているものの、前走は斤量60kgを背負っていたし、昨年も前走の
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3で④着に敗れながら巻き返している。
メイダン競馬場での実績は十分で、大一番に照準を合わせてきた感もある。
4戦連続連対中で連勝中の
ガンランナーは、上表では「○」が付かなかった。前走は
2月20日だったが1700m戦で、近2走はともにハンデ戦で
斤量が53.5~55.5kg。
ケンタッキーダービー(③着)では好位のインから抜けていて、ゲート番号5番というのは悪くないのだろうが、先行タイプで、
斤量増と
アロゲートのプレッシャーをどこまで克服できるかだろう。
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3を逃げ切ったのが
ロングリバーで、同③着が
フリアクルサーダ、同④着が
ムーヴアップになる(
ラニは⑥着)。前走でこのレースを使われた馬は、過去5年の
ドバイワールドカップのうち2013年以外の4年で連対していて、前哨戦としては
最重要レースと言える。ただ、本番で連対圏に入った馬は
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3で
敗れていたタイプが多く、あくまで前哨戦としての認識が必要だ。
ロングリバーは一昨年の
ドバイワールドカップに挑戦し、その時はゲート番号7番から先行したものの勝負所から遅れ、⑦着に敗れている。今回は内枠(ゲート番号2番)に入ったので、先手を取りにくるかもしれない。7歳のここでどこまで粘れるか。
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3で③着となった
フリアクルサーダは、今回唯一の
牝馬で、2走前の
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド2で
ロングリバーらを下して優勝している。レーティングが今回のメンバー中で最下位の馬で、今回も脚を溜めてどこまで差し込めるか。
ムーヴアップは
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3で④着に敗れたが、昨秋以来
5ヶ月の休養明けだったし、
初ダートだったことを考えれば悪い内容ではなかった。
ムーヴアップは
ドバウィ産駒で、同産駒は
ムブタヒージが昨年に②着となり、一昨年には
プリンスビショップが優勝している(オールウェザーで行われた5年前・2012年の勝ち馬
モンテロッソも
ドバウィ産駒)。今年、
S.ビン・スルール厩舎からの出走馬はこの馬だけだが、同厩舎の馬は2014年
アフリカンストーリー、2015年
プリンスビショップなど
ドバイワールドカップを7勝しており、不気味な印象がある。
前走の
ペガサスワールドカップで敗れた
キーンアイスと
ネオリシックは、
アロゲートとは勝負付けは済んでしまっている印象だが、
キーンアイスは昨年の
BCクラシックで離れた③着に食い込んでいて(④着が
ホッパーチュニティ)、一昨年夏の
トラヴァーズSでは
アメリカンファラオを差し切っている。その時のような
消耗戦になるのが理想だろう。
ネオリシックはまだ実績はあまりないが、前走の
ペガサスワールドカップでは
アロゲートより先に先頭に立ち、早めに交わされながらも粘って
キーンアイスには2馬身以上の差を付けて③着となった。
キーンアイスを物差しにすれば、アロゲート以外とはそれほどの力差があるとも思えないが?
日本馬については、
メイダン競馬場での実績なら
ラニ、
出走間隔と前走着順を考えれば
ゴールドドリーム、
血統や年齢を考えれば
アポロケンタッキー、
安定感なら
アウォーディーという感じだろう。
日本馬の中で最上位人気となるのは
アウォーディーだろう。
ソラを遣う面があって惜敗が続いているが、逆に、その面は強力なメンバー相手になれば活きてくるかもしれない。左回りも問題なく、ゲート番号7番というのはレースをしやすそうだ。
2年前に勝った
プリンスビショップが8歳、3年前の勝ち馬
アフリカンストーリーが7歳で、近5年のうち3年では
7~8歳の馬が連対圏に入っているが、その3頭はいずれも
セン馬だった。近年の
ドバイワールドカップで連対した
セン馬以外の馬は4~5歳ばかりで、6歳以上の牡馬で連対したのは2010年①着の
グロリアデカンペオン(牡6)まで遡る。
アウォーディーは7歳という年齢がどうか。
アポロケンタッキーは2走前の
チャンピオンズCが追い込んでの⑤着で、OPでの4勝は
4角4番手以内の時なので、先行する形が理想だろう。ゲート番号1番ということを考えても前に行くかもしれないが、前述してきた通り、今回は
アロゲートがいて
先行馬には厳しい展開も予想される。約3ヵ月ぶりでどこまで粘れるか。
ゴールドドリームはOPでの3勝が東京ダート1600mで、やはり
距離が延びる点がポイントだろう。前走の
フェブラリーSはペースが速くなって道中で馬群の外に持ち出されて追い込みを決めたので、ゲート番号3番の今回も早めに外に出る形が理想ではないか。
ラニは昨年の米国三冠が⑨着→⑤着→③着で、使われて良化した印象があるので、3ヵ月ぶりだった
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3(⑥着)をひと叩きされて上積みはあるだろう。ただ、近5年のこのレースで前走⑤着以下から巻き返して③着以内に入ったのは2頭だけで、走り慣れたコースでどこまで巻き返せるか。
印は、「◎」が
アロゲートで、「○」をメイダン競馬場での実績を重視して
ムブタヒージ、「▲」を差し脚質の
ホッパーチュニティとした。
穴ぐさ💨的存在の「★」としては、休み明けで
アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3を使われて今回が叩き2戦目になる
スペシャルファイターと
ムーヴアップ、そして
ペガサスワールドカップで先行して粘り込んだ
ネオリシックを推す。
◎アロゲート
◯ムブタヒージ
▲ホッパーチュニティ
△ガンランナー
△アウォーディー
★スペシャルファイター
★ムーヴアップ
★ネオリシック
※ドバイ国際競走は『馬番』と『ゲート番』は同じとなります。