昨年、
ラニが挑戦して③着となった
ベルモントSに、今年は
エピカリスが出走する。出走馬は12頭で、
エピカリスは馬番11番(ゲート番号11番)となった。
米国三冠レースは、
ケンタッキーダービー、
プリークネスS、そしてこの
ベルモントSだが、今年は
ケンタッキーダービーを制した
オールウェイズドリーミングと
プリークネスSを勝った
クラウドコンピューティングは出走せず、昨年の2歳王者で
プリークネスSで接戦(②着)を演じた
クラシックエンパイアも直前で回避した。確たる中心馬が不在と言える。
出走馬のレーティングは、
ケンタッキーダービー②着で
プリークネスSで④着の
ルッキンアットリーが
117で最上位となっていて、
ケンタッキーダービーで2番人気(⑩着)だった
アイリッシュウォークライが
115。以下、113で
エピカリスと
ゴームリー、112で
シニアインベストメント、111で
マルチプライヤーと
タップリットが続いている。
ルッキンアットリーは最後の一冠を獲りたいところだろうが、
ケンタッキーダービーと
プリークネスSが
中1週、
プリークネスSと
ベルモントSが
中2週と間隔が詰まっている米国三冠を皆勤で勝つのは容易なことではない。近10年の
ベルモントSでは、
ケンタッキーダービーと
プリークネスSを走って優勝した馬が三冠馬の
アメリカンファラオ(2015年)だけで、それ以前は05年の
アフリートアレックス(ケンタッキーダービー③着、プリークネスS①着)まで遡る。
ただ、その一方で、近2走がどちらも
④着以下という馬も近年は勝てておらず、そのようなタイプの優勝馬は04年の
バードストーン(前走がケンタッキーダービー⑧着、2走前がレーンズエンドS⑤着)まで戻る。
近年の
ベルモントSは、近2走が
ケンタッキーダービー&
プリークネスSではなく、どちらかに
③着以内がある馬がよく勝っているわけで、今年もまずはそのような馬をピックアップしたい。該当馬は、
アイリッシュウォークライ、
エピカリス、
ゴームリー、
シニアインベストメント、
ツイステッドトム、
パッチ、
ハリウッドハンサム、
マルチプライヤー、
ミーンタイムだ。
昨年は
ラニが③着まで追い込んだが、勝った
クリエイターと
ラニは同じ
Tapit産駒で、同産駒は3年前にも
トーナリストが勝ち、
アメリカンファラオが制した2年前には
フロステッドが②着となっている。近3年は
Tapit産駒が連対圏に入っているわけだ。
Tapitは父が
Pulpitで、3代父が
シアトルスルーになる。祖母の父は
ニジンスキーで、近年の
ベルモントSでは、この
シアトルスルー&
ニジンスキーという組み合わせを持つ馬の好走が目立っている。
Tapit産駒はもちろん該当するわけだが、5年前の勝ち馬
Union Ragsも父系に
シアトルスルーを持ち、母系に
ニジンスキーを持っていたし、4年前の③着馬
Orbの父
Malibu Moonは父系に
シアトルスルー、母系に
ニジンスキーを持つ馬だ。
ベルモントSはダート2400mという長距離戦で、米国三冠馬である
シアトルスルーとスタミナ豊富な
ニジンスキーの血を持っていることはアドバンテージとなりうるのだろう。
今年の出走馬で
Tapit産駒は
タップリットがいて、
Tapitの仔である
Tapizarの産駒では
ハリウッドハンサムがいる。また、前述した
Malibu Moonの産駒で
ゴームリーがいて、5年前の勝ち馬
Union Ragsの産駒で
パッチがいる。
ちなみに、
タップリットは
シアトルスルーの4×4、
パッチは
シアトルスルーの5×3、
ハリウッドハンサムは
シアトルスルーの5×5というクロスを持っている。
エピカリスは
シアトルスルーの血脈はないものの、
ニジンスキーの5×4というクロスがある。
近5年の
ベルモントSは8~14頭立てだが、そのうち3回ではゲート番号が
ふた桁だった馬が優勝している。2年前は8頭立てだったので、10頭立て以上だった4年のうち3年でゲート番号
ふた桁の馬が制覇しているわけだ。
ベルモントSは内枠から優勝馬があまり出ておらず、ゲート番号が
1~2番で制したのは03年の
エンパイアメーカー(ゲート番号1番)まで遡る。それ以前は97年の
タッチゴールド(ゲート番号1番)で、03年は6頭立て、97年は7頭立てという少頭数だった。12頭立ての今回は、内枠は好材料とは言えないだろう。
以上の3点を
ベルモントSのポイントとして扱い、該当馬を整理すると次のようになる。
[1]
近2走がケンタッキーダービー&プリークネスSではなく、どちらかに③着以内がある馬(近10年のうちアメリカンファラオ以外の優勝馬に該当)
[2]
5代血統表内にシアトルスルーとニジンスキーを持つ馬(近5年すべてで③着以内に入り、4年で連対し、3勝)
[3]
ゲート番号が1~2番ではない馬(近10年すべてで優勝)
番 |
馬名 |
[1] |
[2] |
[3] |
1 |
ツイステッドトム |
○ |
|
× |
2 |
タップリット |
|
○ |
× |
3 |
ゴームリー |
○ |
○ |
|
4 |
ジェイボーイズエコー |
|
|
|
5 |
ハリウッドハンサム |
○ |
○ |
|
6 |
ルッキンアットリー |
|
|
|
7 |
アイリッシュウォークライ |
○ |
|
|
8 |
シニアインベストメント |
○ |
|
|
9 |
ミーンタイム |
○ |
|
|
10 |
マルチプライヤー |
○ |
|
|
11 |
エピカリス |
○ |
|
|
11 |
パッチ |
○ |
○ |
|
※表中「番」は馬番。ゲート番と馬番は同じとなります。
[3]については申し訳ないが、ゲート番号1~2番の2頭に「×」を付けさせてもらった。複数で該当したのは
ゴームリー、
ハリウッドハンサム、
パッチの3頭だ。
ゴームリーは前走の
ケンタッキーダービーで⑨着に敗れたが、
ケンタッキーダービーで④着以下に敗れて
プリークネスSをスキップした馬は近5年の
ベルモントSで必ず③着以内に入っていて、3勝を挙げている。その優勝馬3頭のうち2頭は5代血統表内に
シアトルスルーと
ニジンスキーを持っていて、今年それに該当するのは、
ゴームリー、
パッチ、
タップリットの3頭になる。
ゴームリーはデビュー2連勝でG1(
フロントランナーS)を制したが、その後は
⑦着(
BCジュベナイル)→
①着(
シャムS)→
④着(
サンフェリペS)→
①着(
サンタアニタダービー)→
⑨着(
ケンタッキーダービー)と、勝ち負けを繰り返している。先行馬の直後に付けるスピードもあるが、ややズブい面を見せる時もあり、今回も頭(①着)かナシ(④着以下)かという感じだろうか。
パッチは
ケンタッキーダービーで⑭着に大敗したが、20頭立てでの大外枠ながら馬群の中に入り、揉まれ込む形だったことも影響したのではないか。今回も大外枠だが、12頭立てと手頃な頭数になるのは良いはずで、前述した通り、父(
Union Rags)は5年前の勝ち馬だし、母父の
A.P.Indyとその父
シアトルスルーもこのレースを勝っていて、血統的には申し分ない。鞍上が
J.ヴェラスケス騎手に替わるが、同騎手は5年前に制した父の鞍上でもある。
ハリウッドハンサムは前走の一般戦で勝利して上表の[1]で「○」が付いたが、今年の重賞は
ルジアナダービーが④着で、
イリノイダービーが⑤着。前走が重賞ではなくこのレースを制した馬もいるものの、今回の出走馬の中では
ミーンタイムと並ぶ最低のレーティング(104)で、どこまで動けるだろうか。
ルッキンアットリーは上表の[1]と[2]で「○」が付かなかったが、
ケンタッキーダービー(②着)→
プリークネスS(④着)と走っているためで、地力的にはもちろん注目すべきだろう。
追い込み脚質のため、三冠皆勤と言っても疲労度がそれほど大きくない可能性もあるが、②着となった
ケンタッキーダービーは最内枠で後方のインを追走して内を回って差し込んだもの。
他力本願の面があるので、ペースが上がるかどうかもポイントになってきそうだ。
ペースのカギを握るのは、
アイリッシュウォークライと
エピカリスだろう。
アイリッシュウォークライは
ケンタッキーダービーで2番人気(⑩着)に推された馬で、外から先行して4コーナー手前ではジョッキーが後方を確認する場面もあった。そこから伸びきれずに失速したもので、
水の浮いた馬場も合わなかったのかもしれない。
シアトルスルーも
ニジンスキーも持っていないために上表の[2]で非該当となったが、
Curlin産駒では4年前に
Palace Maliceが優勝していて、一昨年は
Keen Iceが③着に入っているから、マイナスではないだろう。
アイリッシュウォークライは母父が
ダンチヒ系(
Polish Numbers)で、一変の魅力も秘めていそうだ。
エピカリスは1900mを超える距離が初めてになるが、前述した通り、
ニジンスキーの5×4というクロスを持ち、母父(
カーネギー)が
サドラーズウェルズ系でもあるから、スタミナ面はここに入ってもトップクラスと言えるのではないか。
UAEダービー(②着)のレースぶりを見れば、ここでも先行するスピードがありそうだ。
気になるのは、出走馬12頭の中で
いちばん間隔が空いていること(今回は2ヶ月半ぶり)と、現地に着いた後、右前脚に違和感を感じられ、消炎剤を投与されたことだろう。後者はレースに出走するための万全の措置ではあるのだろうが、
順調さの面では他馬に劣る面があるかもしれない。
タップリットは今回の出走馬の中で唯一の
Tapit産駒で、その点は注目だろう。
ケンタッキーダービーは⑥着に敗れたものの、スタート直後に他馬に寄られて位置取りを悪くし、道中も苦しい位置取りの中から最後まで伸びていて、いかにも
スタミナがありそうなレースぶりだった。長距離戦のここで台頭があって不思議ないが、
ゲート番号2番という内枠に入った点がどうか。差し脚質の馬で、今回もスムーズに動けるかが焦点になりそうだ。
3連勝中で追加登録料を払っての出走となる
ツイステッドトムも、最内枠がどうか。近3走は5~7頭立てで、跳びの大きなタイプだけに最内枠は決して良い条件には思えないが……。
二冠目の
プリークネスSで③着となったのが
シニアインベストメントで、⑥着となったのが
マルチプライヤーだ。この2頭も後方に控えて末脚を伸ばすタイプになる。
プリークネスSでは
ルッキンアットリーが④着となったが、
マルチプライヤーは内目を捌こうとして詰まり気味になり、最後にもう一度脚を伸ばしたもので、決してスムーズとは言えない内容だった。
シニアインベストメントはズブい面を見せながら外を回って、結果的に③着まで上がったもので、昨年時の
ラニのような
スタミナ豊富な走りだった。展開に左右される面はあるかもしれないが、長距離戦では侮れない一頭だろう。
ミーンタイムは前走の
ピーターパンS(②着)が初の重賞挑戦だったが、同レースからの臨戦馬は2014年のこのレースで①着&②着(
トーナリスト、
コミッショナー)となっている。
ミーンタイムはG1・3勝の
スウィートリーズンの半弟という良血でもある。②着に敗れた前走は、逃げを打ちながら4コーナーで外に膨れ、空いた内をすくわれたもの。まだレースぶりに
若さが見られるだけに、タイトなレースになった時に対応できるかだろう。
印は、先行力と血統面を考えて
アイリッシュウォークライを「◎」、血統面を評価して
パッチを「○」、
ゴームリーを「▲」とした。
穴ぐさ💨的存在の「★」としては、「○」を付けた
パッチを最上位に考えたいが、次点として
プリークネスSでスムーズさを欠きながら差を詰めた
シニアインベストメントと
マルチプライヤーを挙げたい。
◎アイリッシュウォークライ
○パッチ
▲ゴームリー
△エピカリス
△タップリット
△ルッキンアットリー
★シニアインベストメント
★マルチプライヤー