関東圏での勝利は大きな収穫と言えそう
文/編集部(M)、写真/森鷹史
印を打つ人であれば誰でもそうだと思うが、同じ
「◎」であっても、馬によって
力の入り具合が異なることが多々ある。①着にいちばん近い存在と信じて「◎」を打つケースもあれば、他に推したい馬が少なく、押し出される形で「◎」を付けるケースもある。申し訳ないが、今回の
ミスパンテールは後者の
「◎」だった。
安定感ということなら「○」を打った
フロンテアクイーンで、末脚に魅力を感じたのは「▲」にした
ラビットランだったが、前者は近3走が準OPで③②②着で勝ち味に遅い面があり、後者は芝での2勝が直線距離の長いコースで、初の
中山では推しづらい印象があった。
血統的にも、
フロンテアクイーンは
メイショウサムソン産駒、
ラビットランは
タピット産駒で、過去の優勝馬とは系統が異なった。
ターコイズSは06年からマイル戦になり、その後の勝ち馬は、8頭が父
サンデー系、3頭が父
ミスプロ系で、この2系統以外の馬は勝てていなかった。
血統的には、2番人気だった
ステイゴールド産駒の
ワンブレスアウェイや4番人気だった
エンパイアメーカー産駒の
エテルナミノルが悪くなかったのかもしれないが、中山芝の重賞における
ステイゴールド産駒は、牡駒だと[17.9.11.84](勝率14.0%)と好成績を残しているものの、牝駒は[0.2.1.26]と未勝利。これでは
ワンブレスアウェイも推すわけにいかなかった。
エテルナミノルは、出馬表のコメントにも記した通り、右回りはひと桁馬番だと[4.3.0.2]だが、ふた桁馬番だと[0.0.0.7]で、6枠11番という枠順が気になった。
これだけ他の上位人気馬に不安な点があるなら、自信を持って
ミスパンテールが
「◎」でいいじゃないか、という意見もあるかと思うが、一にも二にもその
気性面が気掛かりだった。
ミスパンテールは、復帰戦だったローズS(⑩着)で
イレ込みが見られ、前走の清水Sも勝ったとはいえ
テンションの高さが窺えた。それでも前走は上がり33秒3で伸びて差し切るのだから、力があることは間違いない。ただ、今回は関東への遠征があり、初の
中山競馬場が舞台だった。
半年前のオークスが休み明け3戦目(中5週)で、この時は
イレ込んで前に行き、直線で失速した(⑩着)。今回は中8週と間隔が空けられていたとはいえ、やはり休み明け3戦目で、落ち着いて臨めるかどうかの
確証が持てなかった。馬によっては、イレ込みが激しくてレース前に終わっていた、ということもあるのが競馬で、もしそうなったらレースを見るのも辛いなあ……と思っていた。
レース後の鞍上・
横山典騎手によると、
「パドックからテンションが高くて心配だったんですけれど、返し馬に行ったら落ち着いてくれました」とのこと。見ている側としてはそこまでは分からなかったが、馬自身は経験を積んで
成長してきているようだ。関東圏でも勝ち鞍を挙げたことは、今後の
ミスパンテールにとっても大きなものになるのではないか。
それにしても、
血統は不思議なものだなあとつくづく実感する。直線に入って伸びきたのは
ラビットランであり、
デンコウアンジュであり、
フロンテアクイーンであったが、最後に突き抜けたのは
ダイワメジャー産駒の
ミスパンテールだった。今年もやはり勝利したのは父サンデー系であった。
そればかりではなく、
ミスパンテールは父
ダイワメジャー×母父
シンボリクリスエス×母母父
マルゼンスキーという配合だった。母父
シンボリクリスエスというのは一昨年の勝ち馬
シングウィズジョイと同じで、昨年も母父
ロベルト系(
ブライアンズタイム)の
マジックタイムが優勝している。
2012年、13年は母父
カーリアン(その父
ニジンスキー)の
サウンドオブハート、
レイカーラが勝利を挙げていて、母父が
ニジンスキーの馬では06年と07年に
コスモマーベラスが連覇している。母系に
スタミナ色の強い血を持つ馬がよく好走するのも
ターコイズSの特徴で、
マジックタイムは祖母の父が
サドラーズウェルズで、
シングウィズジョイの3代母の父は
リアルシャダイでもある。
ターコイズSのことを
「牝馬限定の天皇賞・春」と言ったら、「はあ?」と言われるだろうが、血統的にはちょっとそんな側面も持っていたりする。
中山競馬場は馬場が改修され、以前よりも差しが利きやすくなっているとはいえ、
血統の大きな側面では変わらない部分もある。そのことは忘れずに、今後の予想に活かしていくようにしましょう。