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ダーレー・ジャパンSC、優駿SS、ビッグレッドファームの種牡馬展示会が行われる
取材・文・写真/村本浩平
だいたい2~3週の期間内で、同じ町内のスタリオンが、同じ日に重ならないように日程を組んできた種牡馬展示会。しかし、数年前から日高町のダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスが、「Darley Open House」として、およそ1週間、招待状を送った生産関係者を、午前から午後までの決められた時間に招き入れる形での種牡馬展示を行うようになった。
種牡馬展示会は新種牡馬から始まり、次第に産駒実績を残している種牡馬と登場していくのが一般的であるが、「Darley Open House」は、見学者の要望に応じて、繋養種牡馬の展示を行っている。勿論、その全ての要望に応えてしまうと、種牡馬も人も疲れ果ててしまうので、ある程度人数が集まった時に、種牡馬の展示を行うようにしている。
今年は2月11日から始まった「Darley Open House」において、最も生産関係者から要望が大きかったのは、やはり今シーズンから導入された2頭の新種牡馬だった。
まずはタリスマニック。アメリカのトップサイアーMedaglia d'Oroの産駒でありながら、イギリスで誕生し、現役時はフランス、アメリカ、香港、ドバイと世界各国で高い能力を証明していく。2017年のG1BCターフを優勝するなど、芝の中長距離で重賞3勝をあげており、産駒もまた、クラシックディスタンスでの活躍が見込めそうかと思いきや、しっかりとした骨格や、豊富な筋肉量はダートといった力のいる条件でも、トップホースを送り出せそうな可能性を感じさせる。
↑タリスマニック
昨年の春秋スプリントG1(高松宮記念、スプリンターズS)を制したファインニードルは、同スタリオンで繋養されるアドマイヤムーンの後継種牡馬。引退して間もないこともあって、種牡馬としての風格を増していく父と比べるとまだまだという印象を持たざるを得ないが、その分、軽やかな動きや、前向きな行動に、スプリンターとしての資質の高さを感じさせていた。父と同様のスプリンターを作りたいという配合馬も集まりそうであり、いずれは親仔3代G1馬が、父と同じスプリントG1馬となる可能性も高そうだ。
↑ファインニードル
昨年は24頭の繋養種牡馬で、1470頭もの繁殖牝馬を集めた優駿スタリオンステーション。この数字は日高管内のスタリオンでは最多となる。
今年の展示会も22頭が展示されたが、そのうち6頭が新種牡馬。またラインナップがバラエティを増した感もあり、今年も多くの繁殖牝馬がこの場所に集まることを予感させている。
展示はまず新種牡馬から。現役時に42戦12勝、JBCスプリントを制したニシケンモノノフの展示では、現役時に管理していた庄野靖志調教師が挨拶に立った。
「古馬となってからもコンスタントに競馬を使うことができたように、丈夫な馬でした。またホッカイドウ競馬でデビューし、中央に移籍してからも、地方競馬に遠征するなど、どんな競馬場でも安定した成績を残せた適性能力もまた、産駒には遺伝されると思います」
と語っていた。ベストウォーリアの展示では馬場幸夫オーナーが現役時の思い出を語り、その後にマイクを渡された石坂正調教師は、
「久しぶりにベストウォーリアの姿を見て、相変わらずの素晴らしい馬体、そして元気そうな姿を見て嬉しく思いました。2歳から7年間、故障することなく真面目に走って厩舎を支えてくれました。現役時の勝ち鞍にも幅がありますし、スピード、持久力、丈夫さが産駒には遺伝されると思います」
とセールスポイントを語った。ゴールドアクターの展示では中川公成調教師が登場し、芝、ダート問わずに優れた産駒成績を残す、スクリーンヒーローの特徴も遺伝されていることをアピールした。
「うるさい馬ではありますが、コースに入ると騎手の思いのままにコントロールできる頭の良さがありました。芝で活躍をした馬ですが、この馬に跨がってきたジョッキーは、『ダートなら更に活躍出来たのでは』とも話していましたし、ダートでも強い馬が出てくると思います」
↑ゴールドアクター
ゲストが数多く招かれた優駿スタリオンステーションの種牡馬展示会。レインボーラインの展示では、浅見秀一調教師にマイクが渡された。
「阪神大賞典、天皇賞・春と勝利して、いよいよこれからという時に大きな故障を発症して引退を余儀なくされましたが、その勇姿は必ずや子々孫々まで受け継がれると思っています。父ステイゴールドの気性の難しさなどは見せなかったですし、馬体共々まだ若い馬なので、その辺も期待出来るのではないかと思います」
↑レインボーライン
新種牡馬はミッキーロケットとサウンドスカイもいる。ミッキーロケットはその競走成績だけでなく、サンデーサイレンスの血を持たないキングカメハメハ産駒という、今の生産界に求められている血統背景。そしてセレクトセールでの高い評価額(税込9936万円)に繋がった好馬体と、生産者にアピール出来る要素がいくらでも揃っている。同じサンデーサイレンスの血を持たないロードカナロア、ルーラーシップと比較しても安価な種付け料(受胎条件50万円、出産条件70万円)も相まって、多くの繁殖牝馬を集めることだろう。
↑ミッキーロケット
サウンドスカイも初勝利から破竹の4連勝で全日本2歳優駿を制した仕上がりの早さは、2歳戦にも注目が集まってきた地方競馬にうってつけの種牡馬となりそう。祖父であるアグネスタキオン、そして父ディープスカイにも受け継がれてきた父系を伸ばしていく重要な役割も担っている。数年後には同じ年に、同じ場所でスタッド入りしたニシケンモノノフ、ベストウォーリアと共に、ダート競馬を沸かせる源となりそうだ。
優駿スタリオンステーションの前に種牡馬展示会を行っていたビッグレッドファーム。新入厩馬は地方に在籍したままで、コスモス賞を勝利し、札幌2歳Sでも2着となったナイママや、北海道2歳優駿で2位に入線(誤審で1着)したウィンターフェルの父であるダノンバラードがいる。
実は展示会の前には、この2歳世代が初年度産駒となるゴールドシップ産駒の展示、そして展示会の後には公開調教が行われた。全長1100mの屋根付き坂路コースにおいて、昨年、2歳馬としては規格外のタイムと言える4ハロン52秒台で走っていたのが、そのナイママだ。しかしながらこの日、公開調教に臨んだ4頭のゴールドシップ産駒たちは、52秒台どころか、51秒台の時計を計時した馬もいた。
その4頭だが、マイネルコロンブス(牡、母トウホクビジン)、スペースシップ(牡、母ジャズプリンセス)の牡馬2頭と、コスモジェミラ(牝、母シーギリヤガール)、イクスキューズの2017(牝)の牝馬2頭。過去の公開調教馬の中からは、マイネイサベル(新潟2歳S、中山牝馬S、府中牝馬S)など、これまでに5頭の重賞馬が誕生しており、ナイママの活躍からしても、この4頭の名前、そして血統は覚えておいた方がよさそうだ。