独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン


バランスと乗る位置をもっと意識しながら乗るように努めたいと思います
2009.10.01

先週、マッハロッドが勝ち、我が厩舎の7勝目を挙げることができました。

マッハロッドは状態が良くなっていたので、良い競馬をしてくれるんじゃないかと思いましたが、まさか9馬身差という競馬になるとは、正直なところ、思っていなかったですよ。

個人的には、ゲート試験を受ける時などに跨っていたのですが、他の助手の方々も含め乗った人間の多くは、ダートの短距離に適性を感じさせるという印象を持っていたのですよね。

それにしても、強い競馬をしてくれて本当に良かった。これで、7勝目ということで、ここまで順調に来ることができているのかなぁと思います。

そういう喜ばしいことの一方で、今週は寂しいご報告をしなければなりません。西塚厩舎時代からの付き合いだったエフテーララーヤが、病気のために研究馬として抹消されることとなりました。

何の病気かと言いますと、犬を飼っている方などは聞いたことがあるでしょう。虫の影響によるフィラリアという病気があるのですが、それと思われる半身麻痺となってしまったのです。

個人的にもエフテーララーヤには思い出が多く、ここでもたくさんの応援メールをいただきました。そんなララーヤも気が付けば6歳を迎えていたのです。これからは妹のグンダイとともに頑張っていきたいと思います。

それでは今週も、鍋掛牧場の沖崎場長との対談をお送りします。

[沖崎誠一郎場長(以下、沖)]調馬索をかけながら、根本的に治療をしていくというのはとても時間がかかる。効率ということで言えば、注射や針などの処方をしながら、というのは正解だし、時間がない競走馬なら、なおさらでしょう。たっぷり時間があるなら、動かしながら待ち、動かしながら待ちということもできるけど、いまの競走馬にはそのような余裕はないからね。

[西塚信人調教助手(以下、西)]時間がないのは間違いありません。ただ、ジェイキングの時は普通に乗るのと合わせて、調馬索を行いながら治療をしていったら、不思議と治療が減っていったんですよね。調馬索を掛けることで歩様が徐々に改善されて、そのまま良くなっていきました。その結果として、追い切りの後に必要としていた治療が必要なくなりましたからね。

[沖]分かっているとは思うけど、調馬索をかけることについては、危険な面もあります。スクミなのかコズミなのか、判断が付いていない段階では、危険性が高いので調馬索は避けるべき。筋肉に関する痛みなら解すことで改善されることはあるけど、骨に関する痛みは、何かをすることでむしろ悪くする可能性が高い。

[西]トモにバラつきの多い馬の方が屈腱炎になる可能性が高いのではないかと思うのですが、それについてはどうでしょうか? どちらかのトモに力がない馬がいますが、そういう馬はバランスを崩しやすくて、着地の衝撃をどちらか一方で強く受け続けることになってしまいます。そのうちに屈腱炎に繋がっていくのではないかと思ったんですよね。根拠はまったくないんですが(苦笑)。ただ、実際に屈腱炎の馬に調馬索をかけることで、キャンターに無駄がなくなると、症状も悪化せずに済んだのですよね。

[沖]因果関係についてはハッキリとは分からないなぁ。ただ、トモでしっかりと踏ん張れるようになれば、それだけ前に掛かる負担は軽減されるとは言える。逆に言えば、トモで踏ん張れない馬というのは、どうしても前に頼らざるを得ないわけで、屈腱炎に限らず、様々な故障につながる要因という見方はできるだろうね。もちろん、下との関係もあるよ。

[西]そうですね。例えばダートとポリトラでは、グリップ力が違いますからね。

[沖]筋ということで言えば、ダートならルーズに動くために衝撃を逃がしてくれる。でも、ニューポリトラックのようにグリップ力に優れていると、よりストレートに衝撃を受けてしまうことにはなるよね。まあ、因果関係はいろいろあるよ。

[西]僕が屈腱炎になりそうな馬をたくさんやっていたということもあるとは思いますが(苦笑)、そういう面でも調馬索の効果を感じました。

[沖]腱に負担をかけたくない状況では、上に乗らない方が負担は少なくなるよね。でも、レースに向けてということになると、やはり負荷をかけていかなければならないわけだから、より乗っている時に近い運動を求めるわけで、その中で、プールやトレッドミルなどと同じように調馬索も有効な手段のひとつだということだよ。ただし、蹄の捻転を避けたい時にはやめるべきだし、分かっているだろうけど、どんな馬にも100%の効果があるということではないよ。


[西]分かります。今回、場長にもうひとつお聞きしたいと思っていたことがあります。現在、多くの育成牧場において、馴致の段階でダブルレーンによる調馬索が施されていますが、それにも関わらず、多くの馬が口向きが悪くなったり、体のバランスを崩してしまっていると言われています。その要因として、乗り手のレベル低下、技術の未熟さが指摘されることが多いのですが、個人的には決してそうではなく、調教のハードさに馬が付いていけないなどの要素があると思うのです。半分、自己弁護でもあるんですけどね(苦笑)。

[沖]乗り手によって、馬を壊す・壊さないという話をすれば、下手な乗り手が乗れば馬を壊すよ。もっと言えば、難しいことをやらなくても、常歩(なみあし)でさえ壊してしまう。分かりやすく言えば、馬の動きを邪魔してしまうからだよね。

[西]まあ、確かに。

[沖]その常歩が実は技術がよく分かるのですよ。上手な乗り手が乗っていると、歩幅を大きく歩くことができるのに対して、下手な人間が乗ると歩幅が小さくなってしまう。上手い乗り手は、馬の正しい動きを邪魔しない位置に乗ることができているのに対して、下手な人はそうじゃないのです。もっと言えば、下手な人というのは、馬に暴れられるのが怖かったり、馬が速く歩く時に制御手綱を引っ張るしか方法がなかったりする。そういう人に乗られることで、馬は苦しい状態で抑えようとされるから、そこから逃げようとするわけで、ハミを拒絶するようにもなれば、脚をぶつけてしまう、さらにはそれが原因で屈腱炎になってしまうこともあり得るわけだよね。

[西]本当に気を付けます。

[沖]間違いなく言えることは、良い常歩ができる乗り手は上手いということだよ。

[西]フォームじゃないということですよね。

[沖]そう。フォームじゃなくて重心の位置ですよ。

[西]ただ実際は、アブミを短く、綺麗なフォームで乗るのが、上手い、下手の基準とされている傾向が強いんですよね。

[沖]そうじゃないよ。では、西塚信人が馬乗りが下手と言われてしまう理由は何だと思いますか?

[西]いちばんは太っているからだと思います(笑)。

[沖]そうなのかな。個人的な意見を言わせてもらえれば、太っているから下手だとは思わなかった。

[西]じゃあ、何なんですか。ズバリお願いします。


[沖]腰が引けているからだよ。あるべきところに重心がない。だから、馬を自分の体で抑えることができないのですよ。乗っているのに、しかも人より重い体重がかかっているにも関わらず、馬がバタついてしまう。それを今度は手綱で引っ張るから、収まるところがなく、馬が落ち着いて歩くことができないわけだよ。前に見ていた時、調教を終えた馬が、スタンド前で騎手から信人に乗り替わって厩舎まで常歩で帰ろうとした時がそうだった。

[西]なるほど。

[沖]それまでしっかりと十分に調教で走ってきているのだから、本当だったら走る気にならないはずでしょう。

[西]確かに、そうです。

[沖]不自然なところに乗られるからだよ。

[西]さっそく、バランスと乗る位置を意識しながら乗るように努めます。そういうことで言えば、ここ数年、馬術経験の豊富な調教師の先生たちが優秀な成績を収められていますよね。ブッチャけ、競馬と馬術との間には、それぞれ「違う」というような意識が強かったと思うのですが、場長は馬術をやってこられて、そして競走馬を預かってこられて、何がいちばん違うと感じられますか。

[沖]ひとことで言えば、扶助だね。乱暴な言い方をすれば、速く走りなさいという指示を送る時に、競馬の人たちはステッキを叩くことに重きを置くのに対して、「人の扶助から」という意識があることでしょう。

[西]ハッキングをはじめとして、収縮運動を重要視することについても言われますよね。

[沖]馬場馬術において、最高に求められるひとつが収縮運動なのです。そして、馬にとってはパワーを必要とするのですよ。収縮運動を常にしていれば間違いなくパワーアップするということではありませんが、地面を押す力が強くなりますし、効果は期待できるでしょうね。

[西]調馬索も含め、馬にとって効率の良いフォームで走ることを求めるということなのでしょうし、効果があるのでしょうね。

[沖]日本の陸上が世界と互角に戦えるようになってきて、トレーニング方法を変えたことがその要因と言われていますよね。体力アップではなく、いかに効率良く走ることができるかが重要だと考えられるようになってきているのです。「ナンバ走り」と言われているようですが、同じように地面を押すという意識で走る走法が良いとされているわけですよ。

[西]そういうことで言えば、馬術と競馬で共通する部分はありますよね。

[沖]もっと言えば、昔は風の抵抗をより少なくするということから、前傾姿勢を保ったままで走り抜けるのが良いとされていた。それが、骨盤を動かすために、状態を起こすどころか、体を反って走るのです。それをやったのが、金色のシューズで有名なマイケル・ジョンソン選手ですよね。

[西]進歩しているということですよ。でも、水泳にしても、新しいトレーニングをしていると言われていますからね。

[沖]そして、そういう競技は世界レベルになっているというところが、また面白い。

[西]発想の転換と言えるかもしれませんね。

[沖]創意工夫ということで言えば、飼い葉をはじめ他にもいろいろな面でできることはあると思いますよ。その中で、体ということで言えば、効率良く動かすことができるかどうかはとても重要でしょう。頭を下げ、ハミ受けを軽く、そしてトモをしっかり動かすことができることがそれなのですが、ではなぜできない馬が多いのかと言えば、難しいからですよ。

[西]それをより簡単にできるようになるのが調馬索ということですよね。

[沖]そういうことです。他にも方法はあると思いますよ。ただ、調馬索が良いと思うし、効果があると実感するからやっているのですが、信人がこれから騎乗技術を磨いて、人よりも優れた乗り手になるのは、厳しい言い方をすれば、ほぼ不可能に近い。でも、調馬索ならばできると思ったし、より短時間でできるようになるから。だから勧めたんですよ。

[西]いや、本当に良かったと思っています。

[沖]もし乗って「トモの動きが…」ということを分かろうとしたら、10年以上必要としていただろうね。でも、信人は短時間で気が付くことができた。ハッキリ言えば、20歳を過ぎて馬乗りを始めた人が、人並み以上に騎乗技術を身につけようというのは極めて難しいことです。

[西]そうですよね(笑)。おこがましいことであり、上手い、下手だという話をすることも実は抵抗があるのですが、かたや23歳から馬に乗り始めたのと、中学生の頃から毎日乗っている人の間に差がないわけがないですからね。でも、本当に調馬索をやることで、少なくとも歩様については格段に分かるようになりました。

[沖]馬の変化に気が付けるということはとても大切だよ。

今週は、ここまでとさせていただきます。

以前にもお話をしましたが、追い切りをする際、もっとも差を感じるのがジョッキーとの時です。その一方で、ゲート試験を受ける時は、普段から乗っていて癖を把握している我々助手が良かったりすると思います。

ただ、それでも、いざ「出す」ということで言えば差がありますし、ブッチャければ、とてもかないません。

あと、先週にお伝えしたライヴについてですが、何人かの方々から「11月1日はビッグレッドファームさんのパーティーでは?」とご指摘を受けた通り、上の方(松岡騎手)の都合が付かず、延期ということになってしまいました。

「行きますよ」というメールをくださった方々をはじめ、みなさん、本当にすみません。新たな日程については、また報告をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。

競馬・サラブレ モバイル