西田さんが『ケツを上げずに最後まで追ってくる』、その理由を話してくれました
2009.10.22
先週は、エフテーストライクが出走したのですが、10着という結果となってしまいました。
前回もお話をしたように、なかなかの状態を維持してきていまして、今回も内心では良いところがあるんじゃないかと思っていたのですが、やはり1600万円下ですね。
ただ、自分の競馬はできていますし、展開ひとつで上位進出、そして勝つというシーンも生まれてくれると思っています。
あと、月曜日に盛岡の交流競走にアルファヨンジュンが出走したのですが、こちらは3着ということで、頑張ってくれています。
なんとか今年の8勝目、そしてふた桁勝利と勝ち星を積み重ねていけるよう頑張っていきますので、尾関厩舎への応援をよろしくお願いいたします。
それでは、今週も、西田さんとの対談をお送りします。どうぞ。
[西塚信人調教助手(以下、信)](クレメントベアードの時は)普通だったら、怒りますよ(笑)。「いい加減にしてくれよ」と、僕は怒られるのを覚悟していましたから。だから、とにかく謝ろうと思っていたのに、西田さんは「オーナーさんの思いもあるから仕方がないよ」って言われたんですよ。
[西田雄一郎騎手(以下、雄)]でも、事実、そうだからね。
[信]そうなんですけど、ブッチャけさせていただくと、騎手の方にそういう言い方をされたのは初めてでしたし、心の底から出ている言葉ということがヒシヒシと伝わってきて、正直、面喰らいました。
[雄]それぞれの立場というのがあるわけで、ノブがどうすることもできない部分が現実にあるわけだから、怒っても仕方がないじゃない。
[信]そう言っていただければそうなのですが、僕自身はそういう対応をされたのが初めてでした。結局、クレメントベアードの新馬戦には乗っていただけたから良かったんですけれど、あの時は、正直、参りました。甘いと言われるかもしれませんが、あのゲート試験を見ていたら、『西田さん、すみません。東京はやめて福島ですので、今回は勘弁してください』とは、なかなか言えないですよ。
[雄]本当に、あのゲート試験でのファイトを超えるファイトはないからなあ(笑)。
[信]やはり、そうですよね。
[雄]こちらも、『転ろぼうが、何しようが、どうでもいい!』と破れかぶれじゃないと無理だったね。
[信]あれを超えるケースはなかなかないですよ。
[雄]歩様ということで言えば、いないことはないけど、間違いなく三本の指に入るヤバさだったし、あれを超えるファイトをしたゲート試験はないね。
[信]僕も歩様の悪い馬には少なからず乗ってきましたが、あの馬だけは乗るのが嫌だと思いました。
[雄]ただ、あの馬は手前を替えることができたから、まだ大丈夫かなと思ったんだよ。
[信]手前を替えられるかどうかというのは、西田さんにとってひとつの基準みたいなものですか?
[雄]全部が全部というわけではないけどね。手前を替えて大丈夫なら、まだ大丈夫かなという思いはある。
[信]手前を替えられずにひっくり返ってしまうわけですからね。そう言えば、その後も加藤社長の馬に乗っていらっしゃいますか?
[雄]お陰様で、あのクレメントベアードがきっかけとなって、加藤社長にはいろいろとお世話になっています。
[信]少しは役に立ったということですかね(笑)。
[雄]ありがとうございます(笑)。
[信]いや、命がけの仕事をしていただいて、こちらこそありがとうございました。あっ、そう言えば、加藤社長の加藤ステーブルに通っていらっしゃるって聞きましたよ。
[雄]そうだね。
[信]何か学びたいという思いからですか?
[雄]そうだね。先ほども言ったように、根本的に馬乗りのセンスがないと思っているんだよね。もちろん、騎手として競馬では負けないという思いはあるよ。ただ、育成牧場では馬術の技術が求められるからね。特に、加藤社長のところは上手い人がいるから、その中で一緒に乗ることで勉強になる部分はあるよ。そして、何より『もっと頑張らなきゃいけない』という気持ちになるんだよね。
[信]なるほど。
[雄]お世辞じゃなくて、刺激を受けさせてもらえるからね。加藤社長も、競馬に対してシビアな眼と感覚を持っているから、はっきり言うと、誤魔かしが利かない。加藤社長の馬に乗った時に、『あそこは勝ち急いでしまったな』という指摘を受けることもあるし、それ以外にも『あそこはこうだったな』とか、『あそこはこうするべきだったんじゃないのか』というように、競馬の話をするのが楽しかったりする。いや、本当に刺激を受けるんだよね。
[信]西田さんは、一度辞められた時に、ノーザンファームさんで働いていらっしゃったんですか、それとも山元トレセンだったんですか?
[雄]山元トレセンで働いていて、夏に早来に行ったり、空港牧場へ行ったりしていた。
[信]生産にも携わったんですか?
[雄]立ち会ったりはしなかったけど、お産の時期になると、獣医さんをはじめ、担当のスタッフたちがそれこそ昼夜問わず働いていて、大変だということは分かっているつもり。だから、能力がないとか、脚が曲がってしまっていると言っても、トレセンに入厩して競走馬になることができた以上は、何とか競馬を走らせてあげるべきだと思うし、そこで多少歩様が悪くても、誰かが乗らなければならないのなら、自分が乗るという気持ちになるよね。競走馬になれない馬がいっぱいいるという現実があるんだしね。
[信]分かります、分かりますよ。ただ、その一方で、そういう歩様の悪い馬などを出走させるのはいかがなものか、という考え方もあるわけですよね。
[雄]もちろん。いまの時代は特にそうだよね。
[信]ブッチャけ、ひどいケースもありますからね。個人的には、どちらの言い分も分かるのですよ。調教師としては、歩様が悪い馬を何とかして競馬に出走させることで次のビジネスチャンスにつなげたいと思っているでしょうし、それに対して、歩様の悪さが何かの疾病によるもので、レース中に故障を発症してしまい、さらには転倒などによって大事故を発生してしまったら、騎手の生命に関わる大きな問題につながりかねないわけですよね。
[雄]競馬はひとりでやっているわけではないからね。1頭で競馬をしていて、故障するだろうと分かっていて、故障して競走を中止するなら問題ないかもしれないけど、それが二次、三次被害を引き起こしてしまい、他の人を傷つけてしまうことは絶対に避けなければならない。ただ、その一方では、先ほども言ったような現実がある。簡単な話じゃないよね。
[信]最近、ゲート裏で出走をやめたことってありますか?
[雄]ない。ゲートは出る。
[信]とにかくゲートは出るということですね。
[雄]そこではシステムを考えてしまう。ゲート前でやめてしまえば、馬主さんにとっては出走しなかったことになるし、騎手も乗らなかったことなる。
[信]そうですよね。馬主さんには出走手当は支払われませんし、騎手の方々にも騎乗手当が支払われることはありませんからね。
[雄]もちろん、そこには、馬券を購入してくれているファンに対してはどうなんだという部分も存在するよね。
[信]ブッチャけ、そこは、現実の話をすれば、相反する部分というか、矛盾が存在してしまっているのは間違いないでしょうね。もちろん、出走するからには勝ちたいとは思っているんですけどね。でも、失礼な言い方かもしれませんが、一度辞められて牧場で働いた経験というのは、西田さんにとっては貴重な経験だったんでしょうね。
[雄]それは間違いない。1頭の馬には多くの人が携わっているとはよく言われるけれど、それを実体験として持つことができたわけだからね。貴重だよ。
[信]そうですよね。
[雄]言い方は適当ではないかもしれないけど、牧場の方がトレセンよりも仕事の量は明らかに多い。それでいながら、進上金は入らないわけだよね。
[信]実は、西田さんの前に鍋掛牧場の沖崎場長と対談をして、その中でもそういう話が出たんですよね。そういう部分も含めて、話が戻ってしまいますが、ブッチャけ、ちょっとヤバイかもしれないって馬を西田さんが乗るということを非難する人もいるでしょう。でも、生きていくために、やらざるを得ないということだと思うんですよね。もしかしたら、僕も生きていくために、微妙な馬を出走させなければならない状況に巡り合うかもしれませんから。
[雄]そこは本当に難しい。先ほども言ったように、競馬はひとりでやっているわけじゃないから。絶対に他人に迷惑をかけてはいけない。これまではそういう経験はないけれど、この先、万が一にも迷惑をかけてしまったら、どう考えが変わるかは分からないよ。やめとけば良かったと後悔するだけじゃ済まないかもしれないよね。とにかく難しい問題だと思う。
[信]ネットなどでは、西田さんは豪快な追いっぷりも含めて、『ファイター』として認知されているみたいですね。
[雄]そうだね。
[信]えっ、掲示板とか見るんですか。
[雄]たまに(笑)。
[信]そうですか。西田さんと言えば、ケツを上げないという印象がとても強いです。キッチリ、ゴールまでは、ですよね。
[雄]ケツは上げない。年に1、2回あるかどうかだと思う。
[信]以前に、手応えがなくなった馬を追うというのは電信柱をタオルで押すみたいな感覚だ、ということを読んだことがあるのですが、西田さんはゴールまで押し続けるということですからね。
[雄]それが良いかどうかは、また別だよ。あと、自分の場合はオーバーアクションになってしまう部分がある。追うという動作であったり、ステッキを他の人よりも強く叩くように使っているんだけれど、それはズブかったりする馬や、馬によっては効果があって、結果が出ることもあるわけですよ。でも、(横山)ノリさんはよく見ていてくれて、『それだけじゃダメだよ』と言ってくれる。自分自身でもそうだと理解しているんだけど、ノリさんとか、(武)豊さんとか、あるいは四位さんのような追い方ができるかというと、なかなか難しい。じゃあ、そのなかで『西田』という商品を買ってもらうためにはと考えると、歩様の悪い馬でも率先して乗ることもそうだし、見ていて『アイツ、ケツでも最後まで追っているよ』と分かってもらうこともセールスポイントとなる、と思っているんだよね。
[信]あの追いっぷりは、確かに目を引きますよ。
[雄]どこにもチャンスがない馬で、しかも、もうチャンスがないところで、モガいてるんじゃねぇよって言われたこともあるけど、それが『西田のウリ』なんですよ。
[信]セールスポイントということですね。
[雄]もっと言えば、それで商売しているから。他の騎手たちがやらないからこそ、西田のそこを買ってくれる馬主さんや調教師さんがいるわけですよ。
[信]そういうことですよね。
今週は、ここまでとさせていただきます。
西田さんは自分の特色、そして生き残る道について、ブッチャけて話をしてくださっていますが、僕自身にとってその言葉は重く、考えさせられる部分が大いにありました。
来週以降も、西田さんの素直な気持ちがブッチャけられていきますので、ぜひお楽しみに。
話は変わりますが、読者の方から、ノビーズの次回ライヴについて「ライヴはスタンディング?」というメールをいただきました。
いえ、ちゃんと席が用意されていますので、ご安心ください。また、新曲も披露させていただく予定ですし、最後にはプレゼント大会も行うことにしていますので、みなさんにぜひ参加していただければと思っております。よろしくお願いします。
あと、先週もお伝えしましたが、ノビーズのオリジナルTシャツを、『サラブレ』の発行元であるエンターブレイン内のサイトで販売していただくことになりました。
Tシャツのデザインについては、上の方(松岡騎手)に聞いていただければと思います(苦笑)。みなさん、こちらの方もよろしくお願いいたします。
Tシャツの詳細・購入はコチラそれともうひとつ、今週の京都でバンダムローゼという馬がデビューするんですが、この馬は僕がゲート試験も乗ってきていて、素質があると思っているんですよね。レースで手綱を取る上の方(松岡騎手)も追い切りに乗って「なかなか」と言ってくれたので、楽しみじゃないかと思っているのです。ぜひ応援をよろしくお願いします。
ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。