今回の敗戦で、そのキャリアが色褪せることはない
文/編集部

大相撲初場所は、休場明けの
横綱・朝青龍が初日から
14連勝。千秋楽では
横綱・白鵬に敗れ、横綱同士による優勝決定戦にもつれ込んだが、
優勝決定戦で勝利し、見事に復活を果たした。優勝回数は
23回となり、
貴乃花の
22回を抜き、
単独4位に躍り出た。
場所前の稽古総見では、
白鵬に
1勝6敗と負け越し、進退問題も取り沙汰された中、初場所に臨んだ
横綱・朝青龍だったが、序盤こそ危ない取り組みが見られたものの、終わってみれば
14勝1敗。相撲ファンもその奮闘ぶりを認めざるを得ない優勝だろう。
後半はほぼ
2横綱のマッチレースという状況だったが、
平安Sも最後は
ワンダースピード、
エスポワールシチーによるマッチレースという展開となった。差しグループは見せ場を作れないまま後塵を拝し、2番手から粘りこんだ
マコトスパルビエロ(③着)も上位2頭から3馬身離された。
逃げる
エスポワールシチー、追いかける
ワンダースピード。直線半ばから激しい攻防を繰り広げた。逃げ切るのか、差し切るのか。見ていて、息が詰まるような展開だったが、最後は
ワンダースピードがグイッと出て、ダート重賞3勝目を挙げた。
単勝人気は
エスポワールシチーが
1.9倍で1番人気、
ワンダースピードが
8.3倍で3番人気だった。実績を鑑みれば、ダート重賞で2勝を挙げていた
ワンダースピードが人気で上回って然るべき。
エスポワールシチーはダートに替わって4連勝中だったが、
重賞は今回が初挑戦だった。
それでも、
エスポワールシチーは
1.9倍に推された。2走前の
錦秋S(東京ダ1600m)では、
翌週の武蔵野Sの勝ち時計を0秒7上回る1分35秒3で逃げ切ったのだから、数字という形で実力を示している。ダートではまだ底を見せていない。期待感が実績を凌駕したオッズだろう。
結果として、
ワンダースピードの怒涛の寄りに屈したものの、
エスポワールシチーはその評価に恥じない競馬をしたと思う。確かに、
稍重で先行馬に有利な馬場状態を味方にできた面は大きいが、力がなければあそこまでは残れない。②着以下には3馬身つけている。
初場所の主役は誰がなんと言おうとも、
横綱・朝青龍だった。不祥事が続き、ファンの足が遠のきがちだった相撲で、千秋楽は満員御礼だった。土俵を大いに沸かせた。そして、
平安Sの主役もまた、ファンの支持を集め、接戦を演じた
エスポワールシチーだったと思う。
競馬において、
4連勝はそう簡単にできるものではない。
朝青龍も
白鵬も
14勝1敗。どんなに強い横綱だって、場所中に1敗くらいはするもの。
ワンダースピードはダートのキャリアが
33戦の
7歳馬。
エスポワールシチーはまだ
5戦の
4歳馬である。今回は強い古馬に胸を借りたと思えばいいし、そのキャリアが色褪せることはない。
「朝青龍は憎たらしいけど強い」という人がいる。ファンタのCMにあるように、
“本当はいいヤツ”なのかもしれませんけど(笑)、単に憎たらしいだけの存在だったら、CMのオファーだって来ないだろうし、大勢の相撲ファンを国技館に向かわせることはできないだろう。
というわけで、エスポワールシチーは、今後、カネヒキリ、ヴァーミリアンなど、ダート界の猛者たちと相対する日が訪れるだろう。同世代には、同じゴールドアリュール産駒のスマートファルコンや、サクセスブロッケン、カジノドライヴ、キクノサリーレ、ユビキタスなど、強敵も揃っている。
だが、
エスポワールシチーにはぜひ、
ダート界のダイワスカーレットと呼ばれる存在にまで成長してほしいと思う。
“まだまだこんなものじゃない”、
“本当はすごいヤツ”といまは思わせておいてほしい。それが、
1.9倍の人気を集めたモノの宿命だろう。
じゃあ、
アレキサンドライトSで
1.2倍の1番人気に推された
カジノドライヴは、今後、どれだけ頑張らなくてはいけないんだという話もありますが(笑)、
エスポワールシチーを含め、現4歳世代のダート強者には、
ダート界を盛り上げる存在として、大いに期待しているということで。