道悪の長距離戦での勝利で充実期のスイッチが入るか
文/編集部

土曜は芝・ダートとも、晴れの良馬場で行なわれた
阪神競馬場だが、日曜は生憎ながら天気が崩れ、
阪神大賞典が行なわれる頃には、芝状態は
重馬場。同レースが重~不良馬場で施行されるのは、
スペシャルウィークが勝った99年(重)以来となった。
崩れた天気、さらに
テイエムプリキュアが一時、後続を15馬身以上ほど離す大逃げに出ていた道中の様子から、すでに一筋縄にはいかなさそうな雰囲気を漂わせていたが、結果的に
1番人気の
オウケンブルースリが、掲示板にも載れずに
7着に敗退した。
阪神大賞典で1番人気馬が馬券圏外に負けたのは、
スルーオダイナが
2位入線→失格となった89年以来、実に
20年ぶりのこととなるのだから、
2→6→4番人気の決着で3連単が
2万9520円という配当以上に、同レースとしてはエポック・メイキングな
「波乱」の結果と言ってもいいだろう。
そんな中、早め、早めの仕掛けから、最後はG1馬の底力を見せつけるかのように、
ヒカルカザブエの渋太い追撃を凌ぎ切ったのが、
2番人気の
アサクサキングスだった。
実績的には、勝ってなんら不思議ない1頭だったが、これまで
11着、
15着、
5着と不振だった
稍重~不良馬場でしっかり勝ち切ったのだから、同馬にとっても今回は、
「波乱」というか、
エポック・メイキングな1勝という感じだった。
過去の歴史を振り返ると、
アサクサキングスの今回の勝利は次走予定の
天皇賞・春に向け、
「視界良好」という言い方では物足りず、
「かなり有望な優勝候補」と言ってもいいぐらい、非常に価値の高い勝利だったように思える。
90年以降、
阪神大賞典が
稍重~不良の道悪で行なわれた年は、計5年。そして、その勝ち馬の次走成績を見てみると……実は5頭とも、
天皇賞・春で
1着となっている。
92年
メジロマックイーン、97年
マヤノトップガン、99年
スペシャルウィーク、00年
テイエムオペラオー、06年
ディープインパクト。
歴史を彩った、そうそうたる顔触れが並ぶが、
アサクサキングスも、
メジロマックイーン、
マヤノトップガン、
ディープインパクトなどと同じ
菊花賞馬なのだから、これらの馬たちと比べ、決して格下という馬でもないだろう。
先述のデータを、さらに範囲を広げて、
阪神大賞典も含めて90年以降、
「稍重~不良馬場で行なわれた芝3000m以上の重賞を勝った馬の次走成績」という括りで調べてみると、驚くべき好結果が弾き出される。
[12.1.1.1]。勝率80.0%、連対率86.7%、複勝率93.3%。ほとんどの馬が次走で勝っていて、馬券圏外に負けてしまったのは、
95年の宝塚記念で
競走中止となった
ライスシャワーだけ。要するに、
次走で完走した馬についてはすべて3着以内に来ていることになる。
おそらく、
道悪の長距離重賞をしっかり勝ち切るということは、実力の高さの証明になる面が大きいのだろう。もしかしたら、長距離馬にとってはその勝利で、一段も二段もギアが入るというか、
「充実期のスイッチ」のようなものが入る面も、あるのかもしれない。
前走の
京都記念で、
3歳秋の菊花賞以来の勝利を挙げ、さらに
重賞連勝となった
アサクサキングスも
「充実期のスイッチ」が入ったような感じがするし、
天皇賞・春はもともと実績が高い
京都。今度はどんな走りを見せてくれるか、今から楽しみでならない。
ちなみに、
アサクサキングスの勝ち時計の
3分13秒2は、
いかにも道悪競馬の時計といった感じだが、92年(稍重)には
メジロマックイーンが
3分13秒5、99年(重)には
スペシャルウィークが
3分13秒4で
阪神大賞典を勝ち、次走で
天皇賞・春を制している。
そして、その
92年と99年の天皇賞・春で2着だったのは、
時計が遅かった阪神大賞典で2着だった馬。その意味で、今年の2着馬
ヒカルカザブエも、もし
「阪神大賞典は、道悪で時計の遅い決着での好走だったし……」といったような理由でそれほど人気にならないようなら、馬券的には面白い存在となってくるかもしれない。