今年は血統のイメージとは逆の名馬がたくさん生まれる世代!?
文/安福良直

木曜日の枠順発表。
「1番ロジユニヴァース」というのを見て、実は少しだけだが波乱の予感はしていたのだ。
皐月賞は1コーナーまでゴチャゴチャするシーンが多くて内枠は不利を受けやすいし、中でも1番枠は10年ほど前
「呪われているのでは」というくらい運の悪い枠順だった。
10年前の
ワンダーファングは
競走除外、9年前の
ラガーレグルスは
ゲートから出られず競走中止、8年前の
ジャングルポケットは
スタートで躓いて3着止まり。1番枠からの勝ち馬は、15年前の
ナリタブライアンまで遡らないといけない。果たして
ロジユニヴァースは、この
「1番枠の呪縛」をふりほどいて勝つことができるのか?
ということで、けっこうハラハラしながらレースを見ていたのだが、注目のスタート、問題なし。1コーナーまでにゴチャつくシーン、なし。2コーナーを回ってみれば、先行集団の後ろでまさに絶好の位置。内に包まれることもなく、ゴーサインを出せばいつでも前を交わしに行ける。この時点で、
「1番枠の呪縛」からは完全に逃れることができた、と思ったのだが……。
なんと勝負どころの3コーナーから、
ロジユニヴァースはまったく動けず、先行勢に並びかけることすらできずに馬群に飲み込まれて
14着惨敗。うーん……。これは
「1番枠の呪縛」とかいう問題ではない負け方だ。
これまで経験した中ではいちばん速くて厳しい流れだったが、それに飲み込まれたわけでもないし……。目に見えないところで何かあったのか、としか言いようのない負け方だ。惜敗だったら
ダービーで巻き返そう、とも言えるのだが、
14着ではなんとも言いようがない。
レース前は3強の一角に挙げられていた
リーチザクラウンもまた、まったくいいところがなかった。馬が行きたがって折り合いがつかず、結局はずっと外を回らされて先頭に立てないまま
13着。同型の先行馬が多いし、こちらも
ダービーでは苦しくなった。
レース前に
「3強」と呼ばれた時は、3頭とも力を発揮して名勝負になることが多いもので、このように
2強が惨敗するケースというのはかなり珍しい。
そんな中、圧倒的な力の差を見せたのが、残る3強の一角、
アンライバルドだった。ハイペースで中団よりやや後ろにいたこの馬に展開が向いたのも確かだが、それにしても馬群を抜け出す時の迫力はすごかった。もうそこで勝負アリだったもんね。思えば前走の
スプリングSで、スローペースの中を懸命に折り合って最後は完勝したが、その経験が今日花開いた。
アンライバルドと言えば、
父も兄もダービー馬、という良血ぶりが話題になるが、レースぶりを見ると、
「良血のお坊ちゃん」というよりむしろ野性的。兄の
フサイチコンコルドや
ボーンキングは、
豊富なスタミナにモノを言わせ、叩き合いに持ち込んで渋太く勝つタイプの馬だったが、
アンライバルドは
豪快になぎ倒して勝つタイプ。
兄とは違うイメージの名馬が誕生した、と言っていいだろう。
過去の名馬では、同じように4コーナーで一気に勝負を決める
ナリタブライアンに似たタイプかも。
ナリタブライアンは暴君的(?)な強さで三冠をもぎ取っていったが、果たして
アンライバルドも同じように勝っていくのだろうか?
2着以下も、後方待機策を取った馬たちが上位に食い込んだ。2着の
トライアンフマーチは、スタートするやいなや手綱を引いて最後方待機。イチかバチかの戦法だが、今回はうまくハマった。でも、母は桜花賞馬の
キョウエイマーチという良血だし、年明けデビューでまだ5戦目とキャリアも浅い。これからどんどん力をつけていく馬だろう。
ところで、母は
逃げまくって桜花賞を勝った馬だったが、今日の息子は追い込んで好走。
アンライバルド同様、
トライアンフマーチも血統のイメージとは逆のタイプ。今年はそういう名馬がたくさん生まれる世代なのかもしれない。
3、4着の
セイウンワンダー、
シェーンヴァルトも後方待機策が功を奏したが、2頭とも重賞勝ち馬で力はある。
皐月賞では
重賞実績があるのに人気を落としている馬が好走するので、筆者はこの2頭から3強に流す馬券で勝負していたのだが、惜しかったなあ。