重賞初制覇を飾った人馬の今後に期待したい
文/編集部

レースの最初のハイライトは
スタート直後。2番枠から発走した
飯田祐史騎手騎乗の
シンゼンオオジが、芝とダートの境目で急に斜行してしまった。スタート直後ということで、外に横一線になっていた馬が軒並み不利を受けてしまった。
パトロールビデオを見ると、斜行する前に馬の頭が外を向いているわけではないので、故意に外に出そうとしたわけではないだろう。
おそらく芝とダートの境目に驚いたのだろうと思われるが……。
しかしその結果、4番
メトロノース、5番
フォルミダービレ、7番
アズマタイショウ(この3頭は
シンゼンオオジに先着)、8番
ドクターラオウの進路を妨害し(11番
エジソンは進路影響)、
15着に降着となった。
飯田祐史騎手は
4日間の騎乗停止となったが、これについては
結果は重大だったものの、悪質(故意)なものではなかったことの証明だろう。悪質であれば、数頭が落馬寸前となった事実を考えると、
危険騎乗と見なされて6日以上の騎乗停止でもおかしくなかった。
また、これだけ多数の馬に被害を与えていながら、
4日で済んだことについては、すべてひとつの事象(この場合は斜行)による結果だったため。
一度の斜行で2頭に被害を与えるのと、二度の斜行で1頭ずつ、計2頭に被害を与えるのでは、騎乗停止日数が違ってくるということ(裁決に詳しい方々には蛇足でしょうが)。
ともあれレースは進み、好スタートから道中は後方に下げた1番人気(12番)
シルクメビウスがそのまま外を進み、4コーナーでは先行集団のすぐ後ろの外を回る。直線では粘る(9番)
グロリアスノアを残り150mで振り切って勝利した。
3着には最内から発走した
カネトシコウショウが入り、荒れたレースだったにもかかわらず、
1、2、3番人気での決着だった。枠順を見れば分かるように、
人気馬がほとんど不利を受ける位置にいなかったことも、その結果とは無関係ではなさそうだが……強い馬は運もあるなと思わずにはいられない。
鞍上の
田中博康騎手は、3走前から
シルクメビウスに騎乗し、これで負けなしの3連勝、同時に嬉しい
重賞初制覇となった。1年目は
4勝、2年目に
44勝を挙げて順調にステップアップしていた
田中博康騎手だったが、3年目には若干伸び悩んで
22勝に終わっていた。
減量が外れた今年はさらに厳しいかと思われたが、すでに
14勝で昨年を上回るペースに加え、初めての重賞制覇も果たした。
田中博康騎手には一度お会いしたことがあるが、
「物静かで、内に秘めるタイプ」と感じた。実際に昨年などは
「自分の中だけで悩んでしまっているようだ」という声も聞かれていた。しかし、これでひとつの壁を突破できたことだろう。元々技術には定評がある。今後はますます順調に伸びていってもらいたい。
ところで、勝った
シルクメビウスの父は
ステイゴールドで、意外(?)にもこれが
JRAダート重賞初勝利。
芝向きの軽快なスピードがセールスポイントなだけに、
脚抜きのいい馬場(この日は不良馬場)でさらに斬れが増したとも言えそうだ。
事実、これまでの産駒のダート成績では
良馬場だと
勝率4.2%なのに対し、
道悪(稍重~不良)だと
5.7%と、若干、成績が良くなる傾向もある。
不良馬場、
他馬が不利を受けたことなどいろいろあったが、
強い馬が強い競馬をしたレースだったことは変わらない。毎年、ダートの新星が生まれるレースではあるが、今年も今後に大いに期待が持てる逸材が誕生した。